僕の中のあいつ 第一部 第十章
 今日は空が高い。ついこの間ギプスが取れて、晴れて退院の許可がおりた僕は今、家に向かう車の中にいる。

 キキッ!

「明君、着いたよ。久しぶりだろ?」

「そうですねぇ、久しぶりですよ。本当に色々とどうも有難うございます。相模さん」

 退院の日、手続きをしに来てくれた相模さんが、ついでだからと僕の事を車で家迄送ってくれたのだ。

「いやぁ、お礼を言わないきゃならないのはこっちの方だよ。お陰で失業しないで済んだからね」

「そんな……、本当に活躍したのは美里達ですよ。僕は何も出来なかったから」

「いやいや、明君が頑張ってくれたから、彼等も頑張れたんだよ。やっぱり君のお陰さ。それにあいつ等は迂闊に褒めると図に乗るからね」

「じゃ、そう言う事にさせておいて貰います。どうですか?お茶でも一杯飲んで行きません?」

「そうしたいんだけどね……、これから行かないきゃならない所があるんだ。だから、せっかくだけど今度にするよ」

「そうですか、じゃ、お気をつけて」

「うん、また今度お邪魔させて貰うよ。じゃ、明君またな」

 そう言って、車を発進させる。僕は暫くの間、去って行く車を見送り、自分の部屋に戻った。本当に久しぶりに帰ってきたなぁ。きっと埃だらけになってるだろうなぁ。冷蔵庫の中の物も腐ってるのが有るだろうな。最初に全部掃除だな。

 僕は、少し憂鬱になりながら玄関の鍵を開ける。

 ……あれ?なんか、全然汚れてないぞ?半年も開けてなきゃ、部屋だって黴臭くなってる筈なのに……

 僕は冷蔵庫の中も開けてみた。あれだけあった腐りものは綺麗さっぱり無くなっている。

 ……優が片付けたんだろうな……やっぱり……優に感謝だね。

 掃除をする手間が省けたので、僕は風呂を沸かす。何せギプスのせいで、右手足が垢で真っ黒になっている。退院前に風呂に入らせて貰ったのだが、ゆっくり入る訳にいかなかったので、軽く汚れを落とすに留まっていたのだ。


 ……ふう、僕は湯舟に入って溜息を吐く。こんなにゆっくり風呂に入れるのも自分の部屋ならではだ。きっちりと今迄の垢を落とそう。

 僕は全身に渡って残ってしまった無数の傷を見ながら身体を洗う。脇腹の銃創や、骨折をした時に接合金具を入れた手術痕、海に入ったせいで化膿してしまってひきつれてしまった傷跡。身体だけ見たら、まるでその筋の人みたいだ。

 垢擦りで身体を擦ると、ボロボロと垢が落ちる。特に右手足は凄く、汚い話だが佃煮にしてもいいんじゃ無いかって位の量が出た。

 風呂からあがると二時間近く経っていた。本当に久しぶりの長風呂だ、暫く僕は裸で涼

む。

 ぐううううう……

 うう、腹へった……。冷蔵庫にも何にも無いしなぁ。晩御飯のおかずも買いに行かないとならないし、どうしようかな……。

 そうだ、退院報告がてらに蘭夢音に行ってマスターに何か食わして貰おう。今ならまだランチタイムに間に合うもんな。そうだそうだ、そうしよう。考えがまとまったので服を着て、半年振りにバイト先に足を運ぶ。


「いらっしゃーい。……あら、明君!いつ退院したの?」

 みせは案外と空いていた。カウンターの外に出ているのは美紀ちゃんだけである、と言う事はマスターはキッチンの方か。

「いや〜、さっき退院してきたんだ」

「そう、良かったね。ところで今日は?」

「はは、まぁそれの報告とね、あと腹減っちゃってさ、ランチタイムはまだ大丈夫だろ?なんか食わしてよ、家になんにも無いんだ」

「うふふ、いいわよ。今日はタラコスパよ、適当な所に座って待ってて」

「うん、たのむね」

「はーい、マスター!明君が来たわよー!それでランチ一つオーダーねー!」

 彼女は、店の奥に向かって叫ぶと、そのまま僕が座った席の向いに座る。

「おいおい、美紀ちゃん。店の方はいいのかよ」

「いいのいいの。あと二人しか居ないし、もうすぐ一旦お店閉めるからね」

「え?お店閉めるって?」

「あのね、明君が入院した後、バイト募集したのね、でも地獄のランチタイムで皆すぐ辞めちゃうのよ。仁君は学校でしょ?だから、いっその事明君が戻る迄営業時間変えちゃおうってんで、2時から4時迄休憩の為に一旦閉店する事にしたの」

 うあ……。何か迷惑かけまくってたんだなぁ。

「よ!やっと戻ってきたか。大変だったんだぞ」

 マスターが、ランチを持って、僕の席にやってきた。そのまま美紀ちゃんの隣に座る。

「聞いたわよぉ。あの子誘拐されてて、それを助けた時にぼこぼこにされたんですって?」

「何だ知ってたの?」

「そりゃ、何があったのか雇用主として知りたいからね、清水さんが言ってたよ。明君の事クビにしないでくれってね」

「そうなの?マスター」

「そうだよ。あ、一寸待ってて」

 マスターは、二人のお客の精算をして、入り口の『営業中』を裏返し『準備中』にして戻ってくる。

「ちょっと早いけどまぁいいだろ。……で、どうしてそんな事に巻き込まれたんだい?」

 僕は今迄の経緯をかいつまんで話した。勿論やばい事は一切話さないでだ。

「ええー!あの子IZUMICの社長の子なのぉ!大金持ちのボンボンじゃない!」

 美紀ちゃんが素頓狂な声をあげる。清水さんはそんなに詳しくは話さなかったらしい。

「そうか、それであんなに豪華な病室だったんだ。なんでこんなにいい部屋にいるんだろうって美紀ちゃんと話してたんだよ」

 カラコロン……

「ありゃ、間に合わなかったかな……。マスターいいかい?」

「おや、清水さん。いいですよ。丁度ここに明君もいるんですよ」

 え?清水さん?……あ、本当だ……。

「まだ間に合うと思って来たんだけどな。……おう!明、無事退院したか!」

「ええ、お陰さまで。相模さんに家迄送ってもらっちゃって、お礼を言っておいて下さい」

「ここ座って下さい、ランチでいいですよね」

「悪いね、マスター。美紀ちゃんも相変わらず綺麗だなぁ」

 清水さんはマスターが座っていた席に座り美紀ちゃんをからかう。

「やっだぁ!清水さんてば、毎日同じ事ばっか言っちゃって」

「毎日?」

「何かここの飯が気に入っちゃってな。安いし旨いんで、つい入っちまうんだよ」

 マスターが奥の方から声をかけてきた。

「清水さん。後少し残ってるけど、全部食べるかい?」

「いいのかよ。じゃ、貰うぜ」

「はいよ」

 暫くして、マスターがスパゲティーを山盛りにして持って来た。量にして3人前はあるだろう。

「はいよ、お待たせ」

「おほっ、こいつは得したな」

「何言ってんです。ちゃんとお代は貰うよ」

「なんだよ!サービスじゃねぇのか!」

「はは、冗談冗談。いつも皆さんに儲けさせて貰ってるからね。今日は明君も退院した事だしロハでいいよ」

「ヘェ!こりゃ明さまさまだな!ありがとよ」

 そう言って彼は、山盛りのそれをがつがつと食べ始める。

「そうそう、明君。君が退院したら快気祝いを皆でやろうって美紀ちゃんと話してたんだけど、明後日の土曜日大丈夫かな?」

「え?そんな事してくれるの?マスター」

「そりゃいいな。マスター、うちの連中も呼んでいいか?」

「人数は多い方が面白いか……、何人位来ます?」

「そうだな。俺に相模……あのガキ共に……若いのが、ちょんちょんちょんのちょん……。こっちは八人位か」

「じゃ、こっちの三人と、明君で、十人超えるな。よしよし……じゃ、清水さん、明後日の七時にここで、会費は五千円でいいかな?」

「おう、いいぜ。……で、マスター勿論あるんだろ?」

 そう言って、彼は右手の親指と人指し指でクイッとお猪口を傾ける仕種をする。

「けけっ、私と、清水さんがいるのに出さないでどうすんの」

 そう言えば、マスターも酒が好きだったんだよな。

「何か、荒れそうねぇ。あたしパスしたくなっちゃった」

「なんで?」

 僕は、美紀ちゃんが溜息を吐いているので聞いてみた。

「だってさぁ、この間マスターが奢ってくれるって言うから、飲みに行ったのよ。私と仁君とマスターと清水さんで……」

「へぇ……」

「凄かったんだから、スナックで、二人共マイク離さないし、仁君は二人のペースについて行けなくてゲーゲー吐いちゃうし、挙げ句の果てにあたしとデュエットしよーなんて寄って来た男の子達の事店の外に連れ出してさぁ。公園のボート池に叩き込んで来たって言うんだもん。よくママに警察呼ばれなかったわよ。もうあの店行けないわ」

 僕は二人の事をジト目で睨む。

「何、そんな事やったの?」

 二人共僕から目をそらし、ぴーぴぴぴなんて口笛を吹いている。

「……いや……ありゃあな、俺等のアイドルの美紀ちゃんがあぶねぇって思ったからよ……な?マスター」

「そそ、そうなんだよ明君。美紀ちゃんにコナかけようなんて百年早いって……。ねぇ、清水さん」

 二人はお互いの顔を見ながら弁解し、ウンウンと頷く。

「お、もうこんな時間か。マスター旨かったぜ、じゃ、明後日の七時に皆連れて来るからよ、じゃあなっ」

 そう言って彼は、そそくさと店を出ていってしまった。……逃げたなありゃ……。

「あ、本当だ。もうこんな時間かぁ、仕込みしないと……美紀ちゃんはまだ休んでていいから……さーて忙しい忙しい……」

 マスターもキッチンの方に引っ込んでいってしまった。……逃げるなよ……もう……。

 僕が呆れていると美紀ちゃんが笑っている。

「どうしたのさ?」

「えー、だってあの二人からかってると面白くって」

 彼女にかかると二人ともかたなしらしい。

「ところでさ、あの優君て言ったっけ?明後日来るのかな?」

「なんで?」

「もち!今から仲良くなっておいて、いつかは腰の玉!……じゃない、玉の輿に乗るに決まってるじゃない。おねーさんが色々教えてあげるわってね。あの子可愛いし」

 ……腰の玉って……なんか下品な響きだなぁ。

「美紀ちゃん、よだれ、よだれ……そんな力まんでも……わかったよ一応言っておいてあげる……」

「あ、ごめん。サンクス!明!」

 美紀ちゃんがこんな性格してたとは……知らなんだ。

「僕もそろそろ帰るよ。晩飯の支度もしないきゃならないし。明後日また来るよ。じゃあね」

「そぉ?まだ居ればいいのに…….ま、気をつけてね、帰る途中にまた変な事に巻き込まれないでね」

「あらら、気をつけておくよ。マスター!僕帰るんで!」

「気をつけて帰れよー」

 店の奥から、マスターの返事が聞こえる。

 僕は、店を出て、晩飯のおかずやらを買い込み、家に帰る。


「おかえりー」

 ……あれ?

「お帰りって……家に帰ってるんじゃないの?優」

「うん、今日病院に行ったら、もう退院してたからこっちに来たの、そしたらお兄ちゃんどっかに出かけちゃってるから、合い鍵で入ったんだ」

「いや、そうじゃなくって、家には言ってあるの?」

「うん、お祖父様に言ってあるよ、どうせ父様も母様も居ないし」

「いないの?」

「うん、父様はねぇアメリカに行ってるの、母様は、フランスに行ってる」

「そっか、じゃぁ、暫くはここにいるのかな?」

「うんっ!」

 優は、元気良く返事をした。べそかいてる優も可愛いけど、やっぱり優は元気なのが一番可愛いな。

「よし、久しぶりに二人っきりで御飯食べよっか」

「お兄ちゃんの料理おいしいから好きだな。今日は何を作るの?」

「何が食べたい?優」

「お兄ちゃんが作るのなら何でもいい!」

「うーん、じゃあ……茄子とミートのスパゲティはどうだい?」

 僕は、バイト先の関係でパスタ料理が一番得意なのだ。勿論、和洋中何でも作ろうと思えば作れる。

「やたっ!あれ好きなんだ!」

「ははは、優、悪いけど手伝ってくれるかい?」

「もちろんだよ!」

 優は腕まくりをして台所に立ってくれた。

「いっただっきまーす!」

「はいどうぞ」

 優は久しぶりに僕が作った料理を、おいしいおいしいと言いながら食べている。久しぶりに作った割には、自分でも上出来だと思える。

「そう言えばさぁ、この部屋掃除してくれてただろ」

「うん、一週間にいっぺん位だけどね。最初は大変だったんだよ。冷蔵庫の中の物全部腐っててさぁ。スゴイ臭いだったの」

 あぁ、想像したくない……あの臭いは一種異様な物があるからなぁ。

「だから、その時だけ、美里達に手伝ってもらってお掃除したんだ。その後は、ボク一人でやったの」

「ありがとな、優」

「いいよ、だってボクとお兄ちゃんの部屋なんだからさ」

 いつの間にか二人の部屋になっている。


 その夜……

「お兄ちゃんと一緒に寝るのも久しぶりだね。一人で寝てるの寂しかったんだよ」

 僕の横で優が話している。僕は優の髪の毛を撫でながら静かに聞いている。そろそろ寒くなってきたので、優が隣にいると温かくて気持ちがいい。

「ねぇ、お兄ちゃん、久しぶりついでにせっくすしてくれる?」

 優が凄く切なげな、そして甘い声で語りかけてきた。

「何だ、して欲しいのかい?」

「うん……」

 優は、僕の胸に抱きついて来る。

「わかったよ、今日は一杯してあげる」

 そう言って、僕は優の唇を塞ぐ。

「ん……うれしいな……」

 ここの処、ずっと流れに巻き込まれるパターンが続いてしまっていたから、今日はゆっくりと愛してあげよう。

 僕は、優のパジャマを脱がし久しぶりの裸体を拝んだ。出会ってからもう8ヶ月を過ぎている。あの時の優は、まだ子供体型をしていたが、今は背も伸び、どんどんと身体も引き締まってきている。

「ひゃうんっ」

 乳首を舐めてやると優は可愛い声を出す。相変わらず敏感な身体だ。優の胸には、あの時の忌まわしい傷跡がくっきりと残ってしまっている。僕はその傷跡にくちづけしながら、徐々に下の方へと移動する。

 優のそこは、既に大きくなっていて、先っぽが濡れている。取り合えずそこを指で弄りながら、再び優と口づけを交わす。

「……ん……お兄ちゃん……好き……もう離さないでね……」

「離さないよ、もし優がどっかに消えちゃっても絶対捜し出してやるよ……」

 そう言いながら、僕は優の耳朶を軽く噛んでやる。

「ふふ……うれしいな……絶対だよ……」

「……ああ」

 優は僕の首に腕を廻しぎゅっと抱きついてくる。僕も優の事を抱き締めてやる。お互いの固くなったそこが触れあう。

「お兄ちゃんのおちんちん温かいな、すごく気持ちいいや」

「優のだって熱いよ」

 暫しの間、お互いの温もりを確かめ合う様に抱き合っていたが、優の方が自然に腰を動かしてきたので僕はそこに手を伸ばし軽く扱いてやる。

「あん……お兄ちゃん……いいよぉ……」

 優の手も僕のをめざしてきた。僕は自分の物に手を誘導してやる。優は、キュッと僕の物を握ると、ゆっくりと動かしてくる。お互いの舌を絡めながら、その行為は暫く続いた。

「お……お兄ちゃん……もぉ……出ちゃうよぉ!」

 僕の手の中に優の精液が迸る。

「優、こんなに出たよ……ほら」

 僕は優の目の前にそれを持ってくる。優はそれをぺろぺろと舐めながら更におねだりしてきた。

「お兄ちゃん……そろそろ……ね?」

「何がして欲しいの?優」

「お兄ちゃんのいぢわる……」

「こうして欲しいのかな?」

 僕は優の窄まりに中指を突き立て、ゆっくりと動かしてやる。

「あんっ……それもいいけど……お兄ちゃんのこれが欲しいよぉ……」

 優は、僕の物を一層激しく動かしてきた。

「わかったよ……じゃぁ、こいつをよーく舐めて濡らしてくれよ」

 優は、お尻をこっちに向ける様に身体を入れ替えて僕の物をくわえる。僕は優のそこに指を入れたまま優のそこを口に含む、今出したばかりの精液の味が口の中に広がる。僕は優の中に残っているそれを吸い出し嚥下する。

「んっ……むぅ……はぁ……お兄ちゃん……そんなに強く吸わないでぇ……」

 優は口を離して、喘ぎ始める。

「もう濡れたかい?優」

「うん……たっぷりぬらしたよ……だから早く入れさせてよぉ……」

 この頃、優の喘ぎ声がとても色っぽくなってきている。その声を聞いているだけで、僕の物は痛い程に突っ張っている。

 僕は、優と身体を入れ替え、組み敷く様な体位に持って行く。

「いいかい?入れるよ……」

「うん……」

 僕は優の窄まりに自分のいきりたった物をあてがうとゆっくりと挿入してやる。優のそこはもう何回も入れているのに、相変わらずきつく締め付けてくる。

「ひゃぅん……お兄ちゃん、なんかおっきくなってる……」

「痛いか?」

「ううん、大丈夫……ちょっとびっくりしただけ……」

「そか……じゃぁ動くぞ」

 僕はゆっくりと腰を動かす。優の中はとても温かく、そして全体的に締め付けてくるので滅茶苦茶気持ちがいい。

「あん……すごい……お兄ちゃんでいっぱいだよぉ」

 優がしがみついてくる、お互いの身体が密着し、優の固い物が僕のお腹で擦れている。

「優のあそこ、かちかちだな……」

「うん……おちんちんも……お尻も……気持ちいいの……変になっちゃいそうだよぉ……」

 優のそこは既に透明な液で濡れそぼっているのだろう、お腹のあたりがヌルヌルとしているし、ヒクヒクと脈打ち動いているのがよくわかる。

「お兄ちゃん……お兄ちゃん……」

 優は息を荒げ、耳元でそればかりを繰り返す。

 優の締め付けが激しくなってくる。もう僕も我慢の限界だ……。

「優……もう、いく……」

「ボクも……ボクもイっちゃうよぉ……」

 僕は優と舌を絡め強く吸いながら、ぎゅっと抱き締めてやり、優の中にたっぷりと注ぎ込む。

「むぅ……ふっ……んんんんっ!」

 優が息を吐いたかと思うとあそこがヒクッと大きく動き、僕のお腹に熱い物が放出される。

「優、イったんだね……、気持ち良かった?」

 優ははにかみながら、コクンと頷いた。

「久しぶりにお兄ちゃんとせっくすしたけど、やっぱりお兄ちゃんが最高だよ」

 僕はその言葉にキュンときてしまった。優の中に出して、萎え始めていたそれが再び大きくなりはじめる。

「お兄ちゃん、中で大きくなってきてるのがわかるよ。うれしいな、今日はいっぱいしてくれるんだよね」

「ああ……優がもういいっていう迄付き合ってあげる」

「いいの?だからお兄ちゃんって大好き!」

 そういって優は僕にキスの雨を振らせる。そうして、優との甘い夜は過ぎて行った。


 土曜の夜、僕は優と二人で蘭夢音に向かった。時間的には充分余裕を持って出たのだが、現地に着くと既に全員が集まっていた。

「やっと来たか!おせーんだ、明!」

 一瞬僕の時計が遅れたか何かして、遅刻したのかと思った。しかし店の時計も僕の時計と同じ時刻を指している。

「えっ?だって、まだ15分前じゃないですか……」

「ばっかやろ、お前。俺はさっきからこいつが呑みたくてしょうがねーんだ。とっとと始めろよ」

 あう……清水さんの狙いはやっぱり酒か……そのまま放っておいたら、抱えてる酒を一気に飲み干しそうな感じだな……

 すると、マスターが奥から出てきて、料理を並べながら、「そろそろ始めるか」と言ってくれた。清水さんは待ってましたとばかりに舌舐めずりをする。ここ迄酒が好きだとは思わなかったなぁ。

「よし、じゃあ、明君、形だけでも挨拶してよ。じゃないと始まんないからさ」

「マスター……形だけって、僕はどうでもいいって事かな?」

「うん……あ、いやいや、ちゃんとした挨拶をだね、してくれないと……主賓は君なんだからね」

 本音を漏らすな……あんたマスターだろうが……

「えーと、時間前に来て叱られるとは思いませんでした。今日はとにかく僕の快気祝いらしいのでお礼だけは言っておきます。有難うございます」

 僕はぺこりと頭を下げて、優の隣に座る。

「じゃ、乾杯は清水さん。よろしく」

 マスターが苦笑いをしている。

「うーし、明ぁ、お前そりゃ厭味か……まあいいけどよ。明がようやく全快した。ここに俺等がいる事が出来るのはひとえに、明のお陰だと思え!」

 そう言って一旦言葉を区切り、ISSの人たちを見回す。皆神妙に彼の言葉を聞いている。

「よーし、皆。乾杯だ!」

 店に乾杯の声が響く。

 ガヤガヤ……

 皆、自分のスタイルで飲んでいる。僕の処には、事件の詳細を知りたがって結構ISSの若い人たち……と言っても僕より年上が殆どだが……が群がる。

 ペシッ……

 僕が、話をしている隙をみて、テーブルの上にある酒に手を出そうとしている優。僕はその手を叩く。

「痛いなぁ、お兄ちゃん」

「当たり前だ」

 僕はウィスキーのグラスを傾けながら答える。そこに、新たな料理を持って仁がキッチンから出てきた。

「おい、仁も落ち着いて飲めばいいのに……」

「いや、そうしたいんすけどね。マスターはあの調子だし、美紀ちゃんは囲まれちゃってるし、俺しか動けないっすよ」

 仁が溜息を吐く。本当だ……マスターの方を見ると清水さんと酒を抱え込んで二人で飲んでいるし、美紀ちゃんはISSの人たちを相手に飲んでいる、まるでホステスさんみたいだ……っていったら怒るんだよなぁ……あの娘……

「手伝おうか?」

「とんでもない!主役にそんな事させられないっすよ、それに俺この間の件で懲りてるから、こうやって動いていた方がいいっす……」

「この間って、四人で飲みに行ったってあれかい?」

「そうそう、あれは散々だったっす」

 仁には悪いが、僕は大笑いしてしまった。

「笑ってる場合じゃないっすよ、あっちで生贄になってきて下さいね」

 清水さんが、僕においでおいでをしている。げげげ、やだなぁ……

「明ぁ、今仁と何話してたんだぁ?俺等の悪口だろー、おぢさん怒らないから」

「そうそう、どーせあいつらのんべだって言ってたんじゃないの?」

「あはは、まあなんですか、御想像にお任せします……じゃ」

 僕は、その場をそそくさと逃げ出そうとした。……がやっぱり捕まってしまった……とほほ……

「まぁ飲め!これ飲んだら返してやる」

 そう言って、グラス一杯の日本酒を注いで、渡してくれる。僕は、一口飲んでみた。

「あ、おいしいですね」

「そうだろ?マスターのお勧めだってよ」

 僕はくぴくぴとそれを飲んでしまった。でも結構きついなぁこの酒……僕はふらふらしながら自分の席へ戻る、そこにはちゃっかりと美紀ちゃんが座っていた。

「あ、お帰り〜。ねぇねぇ、優ちゃんってほんと可愛い!おねーさん持って帰りたいわぁ。優ちゃん、一緒におねーさんと帰ろうよ、ね?」

 そう言いつつ、美紀ちゃんが優に注いでいるのって……おい!

「おい、美紀ちゃん!それ酒だろ!」

「え、ああ、そうねー、まあいいんじゃない?優ちゃんおいしそうに飲んでるし……」

 あははーと気楽に笑っている彼女……知らんぞ、もう……。

「あの……お姉さん」

「なーに、優ちゃん」

 顔が崩れてるって、美紀ちゃん……彼女もその気があったのか?

「ボク……お兄ちゃんが彼氏だからお兄ちゃんと一緒がいいの……ゴメンなさい」

 彼女はぽかんと口を開けている。

「あの……彼氏って?」

「だから、ボクと、お兄ちゃんは恋人どうしなの……」

 やっと事情を飲み込んだ彼女が大声をあげる。

「ええー!だって……だって……男同士だよ!何?明君そう言う趣味だったの!」

「いや……そういう趣味って言うか……たまたま好きになったのが優だったってだけで……」

「そうなんすか?明さん。だって、そんなそぶり高校時代見せなかったじゃないですか!」

 仁も吃驚している様だ。

「だって、あの頃は……」

「ヘー、じゃぁオイラ達は遊びなんだぁ……」

 赤ら顔の美幸がまたまた爆弾発言をする。

「え?あ、あの……それは……おい、なんて事言うんだよ!」

「何だ、明君やっぱりホモなんじゃん」

 あう……そんなストレートに……

「明ぁ!お前、坊だけじゃなくこいつらにも手ぇつけたのか!」

 ひいいい、清水さん恐い!

「あ……あ……あの……すいませんっ!」

「謝る必要無いよ、明兄ぃ。オイラ達だって明兄ぃが好きなんだから……」

 そう言って、美幸は僕の腕に手をまわす。

「そうですよ、私だって優様が居なかったら……なんでもないですっ!」

 美里も、ぼそっと発言しかけて、慌てて取り消す。

「その様子を見ていた優が突然僕の横に来て美幸と反対側の腕を取る。

「美幸も、美里もダメェ!お兄ちゃんは僕の彼氏なのぉ!」

「モテモテねぇ、明君……私あなたがそんな人だと思わなかったわ……」

 呆れた口調で彼女が言う。

「いいの!お兄ちゃんは優しいんだよ!」

「はいはい、私が悪かったわ、優ちゃん」

「あーあ、明君も優ちゃんも、売約済みかぁ、仕方ないから仁でもいいかなぁ」

「ちょっと、美紀さん……仕方ないって言い方無いんじゃないっすかぁ?」

「あはは、ごめんごめん」

 店の中に笑いが広がる。

 ISSの人があまり騒がないのは訓練したからなのか、それとも既に知っていたのかは解らない。しかし、これで僕と優の中は周知の事実となってしまった。もうコソコソする必要はないのかな、なんて思う。

 暫く店で騒いだ後、宴会はお開きとなった。僕は酔っぱらって、寝込んでしまった優をおぶって夜道を歩いていたが、少し疲れてきたのと酔い覚ましの為にあの公園のベンチで休憩をしていた。つぶれている、優と美幸はベンチに寝かせている。

「明さん、ジュース買ってきました」

「ああ、ありがと。美里も座りなよ」

「はい」

 美里は僕の横に来て腰掛ける。

「何か、大変な宴会だったなぁ」

「そうですね。まさか、あそこで優様があんな発言すると思いませんでしたよ」

「お前もな……」

 僕は美里の顔を覗き込む。美里は真っ赤になってしまう。

「あの、さっき言った事は忘れて下さいよ、恥ずかしいですし、優様に悪い……」

「別にいいんじゃないか?今迄の通りで……僕はいいと思うし、優だってそう思ってるさ」

 そう言って、美里の唇に軽いキスをしてやる。

「……有難うございます……」

「さぁ、早く帰ろうよ。このままじゃあいつら風邪ひいちゃうよ」

 僕達は、月明かりの中、ゆっくりと家に向かって歩き始めた。




 END



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