僕の中のあいつ 第一部 第四章
ちち……ちちち……

 僕は、小鳥のさえずりと肌寒さ、それに腕の痺れで目を覚ました。ふと隣を見ると一緒になって掛けていた布団が優に剥ぎ取られている。優は僕の二の腕に頭を乗せてこっちを向いてスピスピと寝息をたてている。

 僕は優の事を起こさない様に、細心の注意を払って腕を抜き、起き上がる。その際優が寝返りを打つが起きる気配は無い様だ。その無垢な寝顔を暫く見つめてから、僕は朝食の用意を始める。

僕は朝は御飯と味噌汁と決めている。御飯は昨日外食しちゃったからまぁ間に合うでしょ、味噌汁と目玉焼きで良いかぁと、独り言を言いつつ手早く調理して食卓に並べる。そして、優の事を起こしに行った。

「優、朝だよ、起きな」

 優は寝惚けた声を出して「後五分寝かせてよぉ」なんて言っている。

「だーめ、もう御飯出来ているから、寝るんなら御飯食べてからにしてくれよな」

 僕がそう言うと、優は目を擦りながら起きて来る。勿論全裸だ。

「お兄ちゃん、先にシャワー借りていい?」

 そっか、やった後そのまま寝ちゃったもんな、身体中べとべとだわな。

「いいよ、じゃぁ、早く入ってきな。お尻の周りはきちんと洗うんだよ」

 僕は、笑いながらそう言うと、優は顔を真っ赤にして風呂場の方へ行く。暫くの後さっぱりして来た優は、そのままの格好で食卓の前に来る、そして座る際に少し顔をしかめる。

「ん?どした、優?」

「うん、一寸、お尻が痛い」

「あぁ、そうだよな……。御飯食べ終わったら、薬塗ってあげるから、一寸我慢してくれな」

 僕は、優に座布団を渡してやり、それに座らせる。多少はましになったか、優は少し微笑み、朝食を食べ始める。

「美味しいね、お兄ちゃん」

「そう?そりゃ良かった」

「お兄ちゃん、おかわりしていい?」

「良いよぉ、どんどん食べなさい」

 優は、さすがに育ち盛りだ、あっという間に御飯が、空になってしまった。

「ふぅ、ご馳走様ー。とっても美味しかったでーす」

「どういたしまして」

 優は二人の食器を流しに置きに行く、その間に僕は薬箱から軟膏を取りだし寝室の方に移動して優の事を呼んだ。さすがに窓が有る居間で薬を塗るのは躊躇ってしまう。

「優、ここに四つん這いになってお尻を見せてごらん」

 僕がそう言うと、優は素直にその体勢になる。あぁ、一寸赤くなってるなぁ。やっぱり無理するんじゃ無かったかなぁ。そう思ったがもう後の祭りだ。僕は人指し指に少し多めに軟膏を取り出すと優の窄まりの廻りに塗り付ける。

「ひゃぁっ、冷たいっ」

「しょうが無いでしょ、少し我慢する。中のほうにも塗っておくからな」

 そう言って、僕は人指し指を優の中に入れて動かす。決してスケベ心でやってるんじゃ無いぞ、単に薬を満遍なく塗る為にやってるんだぞ。

 しかし、僕の小さな恋人はそうとらなかったらしい。

「お兄ちゃん、変な指の動かし方しないでよ。そんな風に動かしたら……、また気持ち良くなって来ちゃったじゃないかぁ」

 優がそんな抗議の声をあげる。見ると、優の可愛い部分がみるみる内に大きくなってきている。もう……、優ってばいつの間にそんなにHになっちゃったのかねぇ……って、僕が原因か……。

 僕は、空いている手を、優のそこに滑り込ませ、やんわりと扱いてやる。しかし、メインは今まさに優に入っているほうの指だ、僕はそれを徐々にピストン運動にしてゆく。

 にゅぷっ、にゅぷっ、にゅぷっ……

 優は既に耳迄真っ赤になっている。息遣いもかなり荒くなっている。しかしどっちで感じているのか判らんなぁ。僕は、扱いている方の手を休める。すると優はこちらを振向き、えっ?もう止めちゃうの?と言う様な顔をする。

かわりに僕は耳もとで後ろに神経を集中する様に促す。指一本しか入れていないし、軟膏が潤滑材のかわりをしているので、苦痛は無い筈だ。僕は更に指を出し入れしてやる。

 すると、優の窄まりがさっきよりも頻繁に収縮をくり返して来る。人指し指が締め付けられて痛い位になって来ている。

 少しは、お尻でも感じている様だ。でもさすがにお尻だけで絶頂を迎えるのはまだ無理らしい。……ま、そりゃそうか……。

「優、どうだい?」

「う……ん、ちょっと、気持ち良い。でも……おちんちん触ってくれないの?もう我慢出来ないよ」

「しょうがないなぁ。優、それなら自分でやってごらん。僕はそのまま、お尻を弄ってるから」

 優は頷くとその体勢のまま右手を自分の強張りへ持ってゆく。そしてゆっくりと動かし始める。そして僕は、空いた方の手で、優の乳首を攻め立てる。

「……ん……あぅ……ふゃぅ」

 意味にならない声をあげている優。暫くすると、優の指遣いが激しくなって来た。絶頂が近いとみた僕は、指の出し入れを少し激しくしてやる。すると優は上体を上に反らした後ひゃうっと声を漏らした後、絶頂を迎えた。

 僕はその後も、少しの間、指を出し入れしていたが、ゆっくりと窄まりから、指を引き抜く。優は力が抜けてしまったのか、上体は崩れて布団に肩がついてしまっている。優は暫くの間ハッハッと肩で息をしていたが。不意に起き上がり僕の方を見る。

「お兄ちゃん、お布団汚しちゃった。御免なさい」

 見ると、シーツの上にほんの少しだが優の精液が飛び散っている。しかしほんとに少しだ。当然だろう、昨夜二回も出しているのだ。

「ああ、いいよいいよ。どうせ今日は洗濯するつもりだったんだから」

 僕はそう言いつつ優の手をとり、掌に付いている精液を舐め取り、更に萎えてしまっている優のそこを口に含み、残っている精液を吸い出した。

「お兄ちゃん、いいってばぁ」

「いいの、優が出したやつだからね」

 僕はそれを飲み込むと優を立たせて、シーツを剥ぎ洗濯機の前に持ってゆく。そして優に僕の服を貸してやる。……が、やっぱりダボダボだ。僕はパンツだけは我慢してもらい、ジーンズの裾をたくし上げ、吊りバンドでずり落ちない様にしてやりTシャツ……もダブダブだが……を着せた。

「さぁ、優。今日から暫く一緒なんだからね。汚れ物を出してくれ。洗濯してしまうから」

「うん、じゃぁ、ボクも手伝うよ」

 ごぉん、ごぉん……二槽式の安い洗濯機が喧しい。

 洗濯が終わり、ベランダの物干に洗濯物がハタハタと泳いでいる。この天気ならすぐに乾くだろう。

 僕達が昼食をとり、昼のバラエティー番組を見ながら笑っていると優が僕の服を引っ張って来た。

「ねえ、お兄ちゃん。明日さぁ、どっか連れてってよ。デートしよ、デート!」

 優は眼をキラキラさせておねだりして来た。

 うっ、その眼でお願いされると……断われ無い……実は、そろそろバイトに行かないとまずいし、お金も心許なくなって来ていた。親の仕送りは、まだ先の話だ。

「うーん、良いんだけど。その代わり明後日から暫くバイトに行かなくちゃならないなぁ。優、暫くの間、昼間は1人になるけど我慢出来る?」

「我慢する!それに、夜は帰って来るんでしょ。その間、ボクがお掃除したり、御飯の支度するよ!」

「おいおい、御飯作れるのかい?」

 優ってばお坊っちゃんだからそんな事した事無いと思っていた。

「学校の家庭科の授業でやってるもん。大丈夫だよ!」

 僕のそんな考えを読んだのか、優はむきになって言ってきた。

「じゃぁ、頼むよ。優の手料理期待してるよ。それなら、明日はデートだな、優、何処行きたい?」

「やたっ!あのね、あのね!ネズミーランドに行きたいっ!」

 優はズイッと身を乗り出し僕の顔にくっつきかねない程の位置によって来る。僕は少しタジタジになりながらその案を承諾する。

「ははは、わかったよ。じゃぁ明日は一日ネズミーランドだな」

 優は二ッ笑うと、僕に軽いキスをしてきた。それは優にとって既に普段のコミニュケーションになりつつある様だ。


 ぴぃぽぉん

 その時、玄関のチャイムが鳴る。僕達は少し慌ててお互いを離れ、僕は玄関の覗き窓から表を覗いた。

 ???黒い?

 そう、覗き窓からは何も見えなかった。

「どちらさん?」

 僕がそう聞くと、泉寺の者ですが……。と言う返答が返ってきた。あぁそう言えば来るっつってたっけ。僕は、どうぞと玄関の扉を開けた。すると目の前には……

 ……壁があった。

 実際、僕の前には、この陽気だと言うのに全身を真っ黒なスーツで身を固めた、2m近い大きな男が立っていた。僕が少しパニックを起こしかけていると、その男は身を縮めて家の中に入って来る。

「すまんですな、坊の荷物を持ってきたんですわ。おい」

 そう言って、外に向かい声を掛ける。すると、その男程では無いが、やはり体格の良い男がスーツケースを持って来る。

「ちょっと、話があるんで家にあがらせて貰ってもええですか?」

 僕は、ただ、ブンブンと首を縦にする事しか出来なかった。

 僕は、ヤクザに睨まれた様な気分で小さくなりながら、二人の男を部屋に案内する。すると、部屋でテレビを見ていた優が、きょとんとして僕を見てその後に続いて入って来た男達を見るなり、あぁ合点がいったと言うよな顔をする。

「駄目だよ、清水。お兄ちゃんを脅かしちゃぁ」

「坊、俺は、脅かしちゃいませんや」

 清水と言われた男はガハハと笑う。

「でも初対面の人はびびるって」

 優もクスクス笑っている。

「あぁ、お兄ちゃん。紹介するね。このヤクザ見たいな人がISS特務班のチームリーダーの清水、その後ろに居るのがサブリーダーの相模」

 相模と呼ばれた男は寡黙なのか軽く会釈をしただけだ。清水さんは頭をボリボリと掻きながら優と僕に向かって笑う。

「でも、ひでぇなぁ。ヤクザは無いだろうに、せめてかっこいいおじさんとか言えないのかねぇ」

「ヤクザで十分だよぉ、清水は。ねぇ、相模?」

 急に話を振られた相模さんは顔を逸らした。しかし顔は笑っている。

「てめぇっ、相模っ!後で覚えてやがれっボーナス減らすぞっ」

 笑いながら清水さんが言う。

「でもさぁ、なんで清水達が来たの?成田が来るのかと思ってたんだけど……」

 僕もそう思っていた……

「そりゃ、坊が悪い。家出なんてするもんだから成田の爺さん、そっこらじゅう駆けずり回って、ぶっ倒れちまったよ。俺等も名古屋迄駆り出されたしな。やっと見つけたと思ったら紙袋に入った服一丁、くたびれちまったよ。いつの間に坊はそんなに悪知恵がついたんだ?」

 成田さん、責任感強そうだったもんなぁ。

「あの……、御免なさい。成田にもボクが謝ってたって言っといてくれない?」

「まぁ、坊が無事なら良いやね、爺さんにも言っておくよ」

「……で?何で家出なんかしたんだ?俺と相模しか居ねぇからちょっと話し手くんねぇか。まぁ嫌ならいいけどな」

 優は、簡単に事情を話した。勿論、僕と優蛾出来てるなんて話はしない。

「なるほどなぁ。会長も坊も言い出したら聞かねぇからなぁ」

 清水さんは、頻りに頷いている。

「ところでな、坊とそこのあんちゃん宛にな若から手紙を預かってるんだ」

 若って?と僕が優に聞くと優の父親だと言う事だった。

 僕は手紙を受け取り、封を開くとポロッと何かのカードが出て来た。そのカードを見るとクレジットカードだ……。それも、僕の名義になっている。何だろうと思いつつ、手紙を読んでみると、とんでもない事が書いてあった。

 かいつまんで話すとそのクレジットカードは優が僕の家に来た事による生活費と今迄にかけて来た迷惑料替わりだと言うのだ。勿論支払いは泉寺が持つと言う。僕はもう一度そのカードを良く見て、更に眼を疑った。

 だって、そのカードって、プラチナカードなんだよ。支払額無制限の……。僕みたいな一介の学生が持てる様な……いいや、普通の人は持てないんだ。何を考えているんだ?優の家の人は。僕はそのカードを清水さんの前に置き、持って返ってくれと話した。そりゃ一気にお金持ちになった様なもんだ。嬉しいと言えば嘘になるが、それじゃ僕が優の事を狙って近づいた様に見えるじゃないか。

「いや、そりゃそうだけどな、だからって、俺が大人しく持って帰ったら俺が若に怒られちまうよ」

 そうか……。僕が途方に暮れていると清水さんが助け舟を出してくれた。

「なぁに、どっかにしまって置いてよ、どうしても使わないきゃ何ねぇって時に使う様にすりゃ良いんだよ」

 と、僕に言ってくれる。そうか、そうすりゃみんなの面子が保てるか…….

 すると、今迄、手紙を読み沈黙を守っていた優が清水さんに問い掛ける。

「あのさ、清水……。この、ボクが帰る迄特務が身辺警護に当たるって言うのは本当なの?」

「あぁ、その件ですか……。まだメンバーは決まってませんがね。若にきっちり言われてますよ。もう向いに部屋も借りてるしね」

 す……すばやいなぁ

「あっそう……」

「坊、人間諦めが肝心だぜ。家出なんかした罰だと思うんだね。言っておくけど、若も大層心配してたんだぜ、この俺に若直々に頭下げて頼んで来たんだからよ。まぁ、二……三日は俺と相模が当番だ。その後は判らんな。俺は大統領の警護の仕事が入ってるんでね」

 彼は、懐から取りだしたタバコを吸いながら言う。タバコの灰を落とそうとして、テーブルの上に灰皿が無いのに気付き少し慌てる。

「あんちゃんタバコ吸わないのか……。悪いんだけど、空缶か何か無いか?」

「あぁ、待ってて下さい」

 僕は、ビールの空缶を持って来て、彼の前に置いてやる。すまんね、と言って彼はタバコの灰を缶の中に落とし込む。

「……あんちゃん、酒はいける方かい?」

 彼は、ビールの空缶を見ながら僕に問い掛けて来た。

「ええ、まぁ、大学の方で鍛えられましたから、ボトル半分位は……」

「ほぉ、それじゃぁよ、今度呑みに行くべ。

なーに、おじさんが奢ってやっから、遠慮すんなって、な?」

 はぁ、と僕がモゴモゴしていると、横から相模さんが口を出して来た。

「よした方が良いよ、明君。リーダーは酔っぱらうと手がつけられなくなるからね。この間もね……」

「馬鹿野郎!相模。変な事言ってんじゃねぇ。第一俺が何したんだ、この間のはあっちから仕掛けて来たんだろうが!」

「チンピラ5人位、半殺しにしちゃったんですよ」

 げげっ、でもこの人なら、プロレスラーが束になってもかなわないんじゃないかって気もするなぁ。

「これ以上変な事吹き込まれちゃ、たまんねぇな。今日はこの辺で帰らせてもらうよ。坊、あんちゃんの言う事良く聞くんだぞ、いいな?」

 そう言って、よいしょと立ち上がるとのそのそと玄関の方へ向かう。僕は玄関へ見送りに行く。

「じゃ、坊の事よろしく頼みますぜ。叱るべき時は叱ってやって下さいよ。じゃないと、坊はつけあがるからな」

 そう言って、彼等は僕の部屋から出ていく。


 僕が今に戻って緊張の解放から安堵の溜息をはくと優が笑う。

「清水は一見おっかないけど、凄く優しい人だよ」

 まぁそうだろう。恐いだけの人間じゃ、人の上に立つ事は出来ないからね。

 優は、彼等が置いていったスーツケースから荷物を取り出すと、その中身を調べ始め、空になったスーツケースをベランダに放り出す。と、その上に色々と物をのせ始める。僕はその奇妙な行動に興味を覚え優に質問する。

「何してんの?」

「あの二人が来て、何もして行かないのはおかしいからね、多分この中に盗聴器か何かあると思ってさ…….」

「……盗聴器ねぇ……」

 あんまり実感沸かないなぁ。

「そうだよ、それに多分、お兄ちゃんの事細大漏らさず調べあげられていると思うよ。じゃないと、父様があんなクレジットカード発行許可する筈無いもん」

 まぢ?僕が、そう聞くと優は「おおまぢだよ」と切り返す。ま、信用してくれたんだから良いか、いや、それとも盗聴器を仕掛けたって言うのは信用されていないのかな?まぁどっちでも良いや、今ここに優が居るだけで満足だ。


 日は既に傾き始めている。すっかり乾いた洗濯物をしまい込み、僕は夕飯の支度を始める。その間優は辺りの掃除をしている。それとも他に変な物が仕掛けられていないか調べているのか。

 やがて、日が暮れて、僕らにまた一緒の夜が訪れる。相変わらず優は僕の布団に潜り込んで来る。しかし今日はしないでおこうと優に言うと今回は素直に聞き入れてくれた。優も明日のデートが楽しみなのだろう。電気を消して寝に入るのだが、なかなか寝られないらしい。僕は、優と取り留めの無い話をしていた。すると、不意に優の返事が無くなった。見るとスースーと寝息をたてている。僕は優のほっぺたにお休みのキスをして眼を瞑った。


 翌日は、優に起こされた。優はもう既に着替えて出かける準備を済ませている。ボクは優にウッスと声をかけ、顔を洗って着替え始める。

「お兄ちゃん、今日も良い天気だよ。早く出かけよっ」

 優に促され、支度もそこそこに僕達は目当てのネズミーランドに出かける。僕は空を見上げた、確かに良い陽気だな。ラッシュの電車に揺られながらも優がそばにいるので苦痛にはならない。僕は優が押し潰されそうになるのを避けて車両の連結部分になんとか移動する。

「凄いよねー、何でこんなに混むんだろ?」

 それは僕にも判らない。

 そんな、殺人的な電車を乗り継ぎ、やって来ました。ネズミーランド!僕は、二人分のパスポートチケットを買い、一枚を優に手渡してやる。

「早く開かないかなー。ねぇ、入ったら一番最初に何処行く?」

「ん、優の好きな所いきなよ、僕はどこでも良いよ」

「じゃさ、スペースエクスプレス行こーよ。あそこ混むから一番に行かないとならんじゃうよ」

「オッケー、じゃそうしようか」

 実は僕も遊園地は好きなものだから内心子供に還りかけている。そろそろ開園の時刻だ。入場門の廻りには家族連れや、カップルで溢れかえっている。僕達も出来るだけ門の近くに移動する。そして、お互いはぐれない様にぎゅっと手を握った。

 開園だ。ドドッと人が入場門に殺到する、順番なんて関係無しにみんな割り込んで来ている。僕らも負けじと入場門を通過した。

 門のそばでは、マスコットキャラクターの三等身のクマネズミやらアヒルやらの縫いぐるみが愛想を振りまいている。優が縫いぐるみに向かって手を振ると、きちんと手を振り返して来た。その後すぐに家族連れに捕まって、記念撮影の嵐に巻き込まれていたが。

「大変だよねぇ、あの中に入ってる人たちも……」

「そうだね、まぁ子供達に夢を与える仕事なんだからしょうが無いよね」

 僕と優は手を繋ぎながらスペースエクスプレスの乗り口にやって来た。

「ふぇぇぇぇ。もうこんなにならんでるのぉ……」

 既にその乗り口には30分待ちの札があった。でもまだましな方だ、後10分もしないうちにここは二時間待ちの札が出るだろう。

 建物の中からは、キャーだのワーだのと歓声が聞こえて来る。

「早く乗りたいね、お兄ちゃん」

「そうだね、優」

 そうこうしているうちに順番がやって来た。暗闇の中を疾走するコースターに優も僕も歓声をあげる。午前中に2……3の空いているアトラクションをまわり、僕達は早めの昼食を食べに園内にあるレストランに入った。何せ二人とも、朝食を食べていないので、腹ぺこだ。

 優は、僕の向いに座りビーフカレーを頬張りながら僕に聞いて来る。

「お兄ちゃん、僕達って傍から見たらどんな風に見えるんだろうね?」

「そりゃ、仲が良い兄弟か、親戚の子供を連れて来たにいちゃん位にしか見えないだろうな」

「そっかぁ、やっぱり恋人同士には見られないかぁ」

 優が、寂し気にぼそっと呟く。そりゃそうだ。もし、僕達がカップルに見られたかったら、キスでもしながら歩かなきゃならない。しかも、この間柄は世間一般には許されてない事だ。

「いいじゃないか、この僕が優の事が好きってだけじゃ、駄目か?」

 辺りに客が居ないのが幸いした。混んでる時間帯じゃ、こんな会話でさえ致命的だ。

「ううん、それでいい……」

「じゃ、この話はこれで終わりだ。いいよね?」

 うんと頷き、またカレーを食べ始める優。

 昼食が終わり、お腹が落ち着く迄、少し絶叫系の乗り物は止めようと言う事で暫くの間ゲームコーナーで遊ぶ。僕達はおもわず、クレーンゲームや景品のもらえるゲームに熱中してしまった。ふと、時計を見るとパレードの時間が近づいている。

「優、どうする?パレード見るかい?」

「昼間のパレードはいいや、何回か見てるから。それよりスターアドベンチャーに乗りたいな」

「よし、じゃぁ行こうか、今なら皆パレードの陣取り合戦で空いているからね」

 スターアドベンチャーのスペースは、がらがらだった。大人数が収容出来る上にパレードが絡んでいる為に、いるのはここを遊び倒して、すれた客(通とも言う)のみだ。

 僕達は、パレードの合間に人気のあるアトラクションを廻った。我ながらすれた客だと思う。そろそろ、日も傾きかけた頃、優がアトラクションのリクエストをして来た。

「お兄ちゃん、もう一回ゴーストハウスに行こうよ」

 そう言って、僕の事をグイグイ引っ張って行く。そこもかなり人気のあるアトラクションだ。列は一時間半待ちになっていた。


 やっとの事で、順番がまわって来た。僕らは乗り物に滑り込む。すると、耳もとのスピーカーから案内人とやらの声が聞こえて来て乗り物が動きだし、中に向かって動き出す。

 ここの売りはホログラフを使った幽霊達の演出だ。僕が何回見ても凄いよな、と感心していると優が顔を寄せて来て囁く。

「ねぇ、お兄ちゃん、キスしてよ。まわりからは見えないから大丈夫だよ」

 おいおい、なんか大胆な事言ってるなぁ。

 確かにここはある意味有名だ。結構カップル達がキスをしているらしい。

「しょうがないなぁ優は……」

 僕はそう言って、優の唇を塞いでやる。すると優の方から舌を差し込んで来た。僕は、そいつを思いっきり吸ってやる。優はもぞもぞ手を動かし僕の股間に手を這わせて来る。

「おい。さすがにそれはまずいよ」

「大丈夫だよ、さっき乗った時にここは見えないの確認してるから」

 僕がさすがに慌てて囁くと、優が囁き返して来た。なんて奴だ、そんな事思って乗ってたのか。そのまま、優は僕のジッパーをおろして、僕のものを引っぱり出す。そして扱き始めてしまう。僕の物は刺激を受けて、みるみるうちに大きくなっていた。理性が弾けとび僕は再び優の口を塞ぎ、舌を絡める。その時前の乗り物が回転する気配がした。やばいっ!僕は咄嗟に優を引き離す。

 グルンッ

 その途端、僕らの乗ってる乗り物も回転し、後ろを向く。やばいやばい、もう少しで見つかる所だったよ。しかし優はとろんとした表情で僕の物を扱いている。そのままにしていたら吸い付きそうな状態だ。なんて思っていたら本当にしゃぶって来た!

 優は僕との体格差による安全バーの緩みを巧みに利用して、上体を捻り僕の物に口を付け、吸いたてて来る。

「優!やばいって。いくら何でもそりゃやり過ぎだよ!」

 僕は、優に小声で注意する。しかし優は聞こえているのか、いないのか一向に止めようとしない。更に激しく、頭を上下させ、チュパチュパと攻め立てて来る。優のそれは、段々上達して来ていて僕にこのうえない快感を与えてくれる。しかし僕はその快感を味わう所の話じゃない。もうすぐアトラクションの終点なのだ。鏡張りの通路に乗り物が横を向き、案内人の『ほら、貴方の横にも幽霊がいるかも知れませんよ』と言う声と同時にほろグラフの幽霊が写し出されるのだ。その時前後の乗り物の様子も判ってしまう。なんとしてもそれは避けないといけない。

 相変わらずの状態の優を僕は無理矢理引き剥がし僕はジーンズのジッパーを閉じ……。

 いだいっ!!!!

 僕は声にならない苦鳴をあげた。その様子に、優はどうしたの?と聞いてくる。僕は擦れ声でなんとか答える。

「ジ……パー……で、は……さんだ……」

 この痛みは、玉を打った時と同様にやった者にしか判らない激痛だ。優はおろおろして「大丈夫?ねぇ大丈夫?」と聞いてくる。

「……大丈夫……。でも、なんとか間に合ったみたいだな」

 僕は股間の激痛を我慢しながら、乗り物から降り立つ。平然として歩きたいのだが、突っ張りと痛みでどうしても腰がひけてしまう。優に一寸、トイレに行ってくると言い、僕は個室に入りどうなっているかを確かめた。……あちゃー。血が滲んで来てるよ……。

 一旦個室を出て、ティッシュを水で濡らし、再び個室に入って、滲み出た血を拭い去る。その後、新しいティッシュを怪我した部分にあてがい、これ以上下着に血が付くのを避ける。とりあえずの、応急処置を済ませトイレから出ると、心配そうな優の顔があった。

「ごめんね」

「いいさ、ちょっと喉が乾いたな。ジュースでも飲もうか」

 僕はポップコーンとコーラを買って来て、しょんぼりしてベンチに座っている優に渡してやる。

「全く、何であんな事したんだい?」

「ごめんね。さっき乗った時に前に乗ってる人たちがキスしてたの……。そしたら何かボクもして貰いたくなっちゃって……」

 うーん、気持ちは判らなくもないが……。

「でも、あれはやり過ぎだな…….罰として、僕のこの怪我が治る迄H禁止だよ。キスもお預けだ……。いいね?優」

 僕がそう宣告すると、優は黙って頷いた。可哀想ではあるが、少し我慢を覚えさせないとね。


 既に日は暮れて、建物が綺麗にライトアップされている。僕達はプラプラと歩きながら、園内を散策していた。そろそろ、夜のパレードの時間が近づいている。僕は優と一緒に道路脇に座り込み、パレードの開始を待つ。

 ドーン、ドーンと花火か上がり、シンボルタワーがレーザー光線で鮮やかに彩られた。と、同時に実に賑やかな音楽がスピーカーから流れ、パレードが始まる。ここの目玉のイベントだけに盛大だ。電飾で目一杯飾り立てた山車や、これまた電飾に光り輝く踊り子達。

 まわりの子供達はその美しさに眼を奪われている様だ。さっき迄喧しかった、躾の悪そうな子供達もパレードをジッと見ている。

 そんな中、優が頭を僕の方に預けて来た。見ると、優はスースーと寝息をたてている。良くこの大音量の中寝ていられるなぁ。疲れたんだろうな、そう思い僕はそっとしておいた。やがてパレードも通り過ぎ、観客が三々五々に散って行く、しかし優は起きる気配が無い。

 これじゃ、仕方ないな……。閉園には間があるが帰ろう。僕は優に起きる様に促すが寝言で返事をするばかりだ。僕は意を決して、優の事をおぶり、遊園地を後にした。優ってば意外に重いなぁ……。これは重労働だ。

 その時、クラクションの音と「おーい、あんちゃん」と言う聞き覚えのある声が聞こえた。その方向に振向くと、ISSのロゴが描かれた。マイクロバスがこっちに向かって走ってくる。そして助手席から身を乗り出して手を振っているのは、あの巨漢の清水さんだった。

「よう、あんちゃん、どえらい大荷物背負い込んでるな。どうだい?おじさんの車に乗って行かねぇか?」

「え、でも迷惑じゃ無いですか?」

「気にすんなって、こいつの中にゃ、相模以外には機械しかねぇさ、後の連中は俺がほっぽり出しちまったよ」

 何ともまぁ、豪快な人だ…….

「じゃぁ、すいません。お願いします」

 僕はぺこんとお辞儀をして好意に甘える事にした。マイクロバスの中の半分は、様々な電子機器で埋まっている。優を後部座席に寝かせ、備え付けてあった毛布をかけ、膝枕をしてやる。優は、相変わらずスピスピとよく寝ている。

「今日は、疲れただろ。どうせ坊がどっかに連れてけって駄々こねたんじゃ無いのか?」

「いやぁ、別に良いんですよ。僕も弟が出来たみたいで楽しいですし……。ところで、これはやっぱり優君の為の設備なんですか?」

 僕は後ろの電子機器をさして聞く。

「別に、坊の為って訳じゃねぇよ。重要人物には発信機を身に付けてもらってね、もしもの時の為に備えるのさ。大体こいつで半径50キロから50メートル位迄のレンジで探索してな、後は携帯用の受信機で、うちの人間が虱潰しだ」

「じゃぁ、やっぱり今日も?」

「そうだな、今日は俺はこの車の中で待機して、他のメンバーが引っ付いていたよ。俺があん中に入ったんじゃ、一発でバレバレだからな」

 そう言って、ガハハと笑う。そりゃそうだ、こんなに大きい人は目立ち過ぎる。尾行には一番不的確だろう。車は、いつしか、高速道路にのり、疾走して行く。窓の外を流れ去る街灯の光を見ながら、いつしか僕も寝入ってしまった。


 明達二人が完全に眠っているのを確認した清水は、相模に問い掛ける。

「相模よぉ、この子達の事どう思うよ?」

「そうですね、何か、単なる兄弟愛って言う以上の物を感じるんですけどね。多分気のせいでしょう。坊ちゃんも明君も一人っ子ですから、急に兄弟の様な人が出来て舞い上がってるんでしょう」

「そうだと良いんだけどねぇ。もし、気のせいじゃ無かったら俺ぁ若になんて言って報告すりゃ良いんだ?」

 清水はタバコをふかし流れる景色を見ながらひとり呟くのだった。

 そして、二人が聞いたら卒倒しそうな会話を聞く事も無く、彼等は幸せそうな顔をして眠っていた。




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