僕の中のあいつ 第一部 第九章
 目が覚めた時、僕の体には色々な機械が取り付けられていた。

「気が付かれましたね」

 優しそうな女の人の声が聞こえた。

「ここは?」

「ここは泉寺総合病院の集中治療室ですよ」

 そうか、ここは日本なのか……

「優は?」

 僕は一番気にかかる事を聞いた。

「優君?優君は今眠ってるわよ。あなたが意識不明の重態だって聞いたら半狂乱になっちゃって……だから今はお薬で眠っているわ」

「そう……正気に戻ったんだ……」

「まだ後遺症はあるけれどね。でも大丈夫よそんなにきつい薬は使われて無いみたいだから、すぐに元の優君になるわ」

「良かった……」

「そうね、だからあなたも早く良くなって、優君を安心させてあげて。まだあなたは喋るだけでも重労働なんだから、今はゆっくり眠りなさい」

「はい」

 僕は再び目を瞑る。


 三日後、僕は例のVIP室に移された。もう命に別状が無いと判断された為だ。

「明兄ぃよかったね!」

「心配したんですよ。あの時は……」

 病室には美里達が僕の身の回りの世話をしてくれていた。僕は、あの後の事が聞きたかった。

「あの後どうなったんだい?島に泳ぎ着いた位迄は薄らと覚えているんだけど……」

「そうだったんですか……あの後すぐにヘリが爆発して、僕達は近くにあった島に泳ぎ着いたんですよ」

「そしたら、明兄ぃの様子がおかしくってさぁ、凄い熱出してたんだよね。優ちゃんもボケっとしたままだし……」

「何とか体を温めないとって言うんでとにかく火をおこして二人で裸になって、明さんの事を温めて居たんです」

「そしたら、ISSのヘリが助けに来てくれてさぁ。ずっと衛星で追跡してたんだって」

「明さんは1週間昏睡状態だったんですよ。その間に優様の薬が切れちゃって」

「もう、大変だったんだよ!お兄ちゃんが死んだらボクも死ぬ!って言っちゃってさぁ。あまりにひどいんで鎮静剤打って貰って」

「もう大分落ち着いたんですけど、本人と会うにはまだ刺激が強すぎるんじゃないかってお医者様が……」

 美里達は交互に喋りまくる。

「そうか……なるべく早く優に逢いたいな」

「そうですね、早くその日が来るといいですよね。私達もあの楽しい部屋に戻りたいですよ」

「そうそう、そんでもって明兄ぃと優ちゃん

にエッチして貰いたいってさ。兄ちゃんは」

「美幸っ!」

 美里が耳迄真っ赤にして美幸の事を追いかける。美幸はへらへら笑いながらドタバタと逃げ回る。その時、ドアが開いて看護婦さんが二人を怒った。

「こらっ!うるさいよ!日野さんは怪我人なんだから、ドタバタしないの!わかった?」

「ごめんなさーい」

「全く……返事だけは良いんだよね美幸君は……」

「えー、そんな事無いよ。顔だって頭だって良いんだよ、オイラは」

「勝手に言ってなよ。美幸ってば、もう……」

 美里は呆れ返っている。病室に本当に久しぶりに笑い声が響く。

「ははは、頼むよ。美幸……傷に響いちゃって痛いから笑わせないでくれ……ククク……痛い……」

「酷いや、明兄ぃ迄そんなに笑う事無いじゃん……」

 美幸は少しいじけている。

「あー、ごめんごめん。そんなにいじけるなよ」

 その仕種がおかしくて僕は再び笑う。

「ふ−、痛かった。……あれ?もうこんな時間か……もういいよ帰っても。明日も学校があるんだろ?」

 その言葉を聞いて二人はきょとんとしている.

「……何言ってんの?明兄ぃ」

 美幸の一言で僕の目も点になる。

「へ?」

「オイラ達、今ここから学校に通ってるんだよ」

「なんで?」

 我ながら間抜けな質問だ。

「何でって言われても……ねぇ」

「チーフに言われたんですよ。明さんがこんな目にあったのも私達に責任の一端がありますから。それに命令違反ですね、ヘリに無許可で忍び込んだ事の……。だから明さんが退院する迄の間、明さんの身の回りの事を全てする様にって」

「……大変だね……」

「いいのいいの!それに優ちゃんも明兄ぃも居ない部屋の向いにいたってさ、面白くも何とも無いじゃん。だったらここに居た方が何倍もましだよ!」

「そう言う事なんですよ」

「そうかぁ、じゃ、暫くの間お世話になるよ、二人共」

「どうぞ、何でも言って下さいね」

「そうそう、兄ちゃんの事こき使ってやってね」

「美幸っ!」

 そこへ夕飯が運ばれて来た。美里達の分もある。

「明兄ぃそれじゃ、食べ辛いでしょ。オイラが食べさせてやるよ」

 美幸が何かたくらんでいる様だ。僕は彼の一挙一動が面白くて堪らない。彼は重湯をスプーンで掬い取り僕の口のところへ持ってくる。そして

「お父っつぁん、お粥が出来たわよ.」

 うーむ、そうきたか……思わず力が抜けてしまった。しかしこれは、のってやらんと面白くも何ともないなぁ。

「げほげほ……すまないねぇ、おミユ……お父っつぁんがこんな身体なばっかりに……」

 美里も美幸も、ゲラゲラ笑い転げている。どうやらツボにはまってしまったらしい。

「明兄ぃ、最高!」

「もう、明さん迄笑わせないで下さいよ……御飯が食べられないじゃないですか」

 美里が抗議の声をあげるが、そんなこたぁ僕は知らん。その場のノリに付き合っただけだ。

 やがて消灯時間が訪れる。二人は専用の付き添い人用の部屋に引っ込み、電気が消される。僕は一日も早く優に逢える日を夢見ながら眠りについた。


 二日経ち、三日経ち……そして二週間が過ぎた。その間僕の病室はお見舞いの嵐だった。両親は当然の事ながら、重吉翁、優の両親、ISSの人達や蘭夢音のみんな、大学の仲間達……。色々な人が出入りしていった。でも、只一人未だに姿を見せない人間がいた。そう……優だ。

「日野君?今ね、優君から君に渡してくれってこれ預かったわよ。何か凄い悲しそうだったけど……何かあったの?」

 僕の担当看護婦がやって来てそれを渡してくれた。ほんとに何があったんだろう……?

「何にも無いと思うんですけど……とにかく有難うございます」

 僕がお礼の言葉を述べると、どういたしましてと言って、看護婦は去っていく。

 それは僕宛の一通の手紙だった。僕は美里に封を切って貰い、それを読む……。

「美幸、優を捕まえてここに連れて来てくれ……逃げると思うから、首に縄くくってでも……絶対に逃がさないで。頼む」

 僕のただならぬ雰囲気に飲まれたのか美幸は無言で頷き部屋を出ていく。手紙をくしゃくしゃにしてゴミ箱に投げ付ける僕の剣幕に美里も怯えている。

「あの、明さん。一体何が書いてあったんですか?日頃そんなに怒った事無い明さんがそんなに怒るなんて……」

 手紙にはこんな事が書いてあった。


 お兄ちゃんへ、お兄ちゃん大分元気になったね、安心しました。お兄ちゃんには悪いけど先に退院します。そしてさようなら。ボクはお兄ちゃんにもう会えません。ボクは今迄の事を全部覚えています。誘拐犯のおじさんとセックスした事や、お兄ちゃんを殺そうとした事も全部。だから、さようなら。ボクの事はもう忘れて下さい。

 大好きなお兄ちゃんへ   優より


「ふざけるな……何が忘れてくれだ……」

 美里も僕が捨てた手紙を見て沈鬱な表情になっている。

「覚えていたんですか……優様は……」

「だからって、何でさよならなんだよ!」

「……でも、優様の気持ちも解ります……。痛い位に……私でも、そうしたい」

『痛い!痛いよ!放せよぉ!どこに連れてくんだよぉ!』

 遠くから優の声が聞こえてきた。美幸はきっちりと約束を果たしてくれた。優の声がどんどん近づいて来る。

『お兄ちゃんのとこに連れてったってしょうが無いよ!放せってば!』

 僕はその声を聞いて胸が締め付けられた。本当に優は僕に逢いたく無いらしい。

 ばんっ!

 勢いよくドアが開かれた。美幸が優の右腕を引っ張って入ってくる。優はそれでもその場から逃げようと必死だ。

「はぁ……はぁ……ただいま……。優ちゃんてば凄く抵抗するんだもん。疲れちゃったよ」

 美幸の顔にみみず腫れが何箇所も出来ていた。相当強く顔を引っ掻かれたのか薄らと血が滲んでいる所迄あった。

「ありがとう、美幸。優!ちょっとこっちに来い!」

 僕は出会って以来優の事で真剣に怒った事は無かった。しかし今回ばかりは違った。ここ迄真剣に怒ったのは、もしかしたら生まれて初めてかも知れない。優はビクゥッと身を縮め美里が譲った椅子に座る。

「優、お前あの手紙は何だ」

「……」

 優はギュッと歯を食いしばり俯いたまま何も喋らない。僕は更に声を荒げる。

「何だって聞いているんだっ!答えろ!優!」

「明兄ぃ。もうちょっと優しく……」

「うるさいっ!お前等には聞いて無いんだっ!黙ってろっ!」

 僕の余りの剣幕に美幸は部屋を逃げ出してしまった。

「明さんの怒りはもっともですけど、もう少し落ち着いて下さい。優様が怯えてしまって……これでは聞ける物も聞けませんよ。それに優様、明さんだってあんな手紙だけでさよならされたって納得出来ないでしょう?きちんと自分の口で説明して下さい」

「……」

 しかし優は話さない。僕の怒りは頂点に達した。

「……わかった、さよならだな。金輪際僕の前に顔を見せるなっ!とっとと出て行けっ!」

 う……うえぇぇぇぇぇぇぇん

 遂に優は大声で泣き出した。そしてわんわん泣きながらドアに向かってとぼとぼと歩き出す。

「明さん!言い過ぎです!そんな終わり方私は嫌ですよ。優様、待って!もう一回明さんと落ち着いて話し合って下さい!」

 ほんとは僕だって嫌だ。あの手紙を見る迄は僕だって優の事を優しく受け入れてやりたかった。しかし優も頑固な所がある。何も話さないのはその為だと思う、だから僕もつい意固地になってしまう。

「いいから放っとけ!……もう……もういいよ……」

「おいおい……随分と激しくやり合ってるなぁ……廊下に丸聞こえだぞ……恥ずかしいから喧嘩はもう少し静かにやったらどうだ?」

 ありゃ、清水さんだ。彼は目の前を泣きながら通り過ぎようとする優を捕まえると子猫でも扱っているかの様に抱きかかえ、僕のもとにやって来る。後ろには美幸が隠れている。ははぁ、美幸が呼んだのか。

「一体何があったんだ?かなり剣呑じゃねぇか」

「あぁ、そのまま優を持って帰って下さい。彼はもう僕と逢わないそうなんで」

「明さん!いい加減にして下さい!」

「え?え?何?どうなっちゃったの?何がどうしたの?」

 美幸は事態が解らずに僕と優の顔を交互に見る。そして、清水さんの目が細まる。

「おう、明。ちょっと事情を話せや。事と次第によっちゃ、只じゃおかねぇぞ……」

「どうもこうも無いですよ。優が別れたいって言うから僕は、別れようって言っただけだ!」

 そう言って、美里が読んだ後ベッドの上に置きっぱなしになっていた手紙を投げつけた。彼はそいつを器用に受け止めて読む。そして未だ彼の腕の中でヒックヒックと泣いている優に向かって言い放つ。

「坊、こりゃお前が悪い。明に謝れ、それに明も明だ……大人気ない。それでももうすぐ二十歳になんのかよ……ガキの喧嘩じゃねぇんだからよ、もう一寸考えろや」

「……なんで、なんでボクが悪いの……」

「明はなぁ、坊がさらわれてた時に俺に向かって言ったよ。僕は優の事を愛してる、優さえ無事なら自分は死んでもいい、ただ優の無事な姿が見たいってな……坊、あの手紙はその明の想いを踏みにじっちまうよ」

「えっ!言っちゃったの?明兄ぃ」

 美幸の方を見て僕は頷く。

「第一、明が昏睡状態だった時に坊はあれだけ明の事心配してたろうが。あの時俺は思ったんだよ、ああ、ほんとにこの二人は好き合っているんだなってな。それが今日来てみたらこのザマだ……。俺は情けなくって涙が出てくるよ」

 確かに少し大人気なかったと思う。仕方ない、今回はこっちが折れよう。

「優ゴメン、僕が悪かったよ。だからもう逢えないとか、さよならとか言わないでくれよ」

 優は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔をこちらに向け、これ又しゃっくりをしながら僕に謝る。

「ごめんなさい、お兄ちゃん。もうそんな事言いません。でも……ボクはお兄ちゃんのこと殺そうとしたんだよ。そんな大変な事許してくれないよね……」

 ……もう、まだそんな事気にしてるのか……。

「優!そったらはんか臭い事ばっか言ってんでねぇよ!今度言ったらはたくよ!」

 みんなが吃驚している。……何で?僕はみんなの顔を見渡す。

「あの……なに?」

「明兄ぃ、何かすっごく訛ってんだけど……」

 みんながウンウンと頷く。え?あ……気が付かなかった。いつの間にか故郷の言葉を使っていたらしい。

「あ……ご、ごめん。とにかく、僕がもういいって言っているんだから忘れてよ」

「……ありがとう。お兄ちゃん……。じゃぁもう今迄通りに一緒に暮らしてもいいの?」

「僕はいいんだけど……」

 そう言ってちらりと清水さんの方を見る。彼は頭をポリポリと掻きながら少し申し訳なさそうな顔をする。

「……あのな、坊。親爺がよ、とにかく一旦は家に帰れって言っていた。どっちにしろ、後3ヶ月以上こいつは退院出来ねぇからな。誰も居ない部屋に帰ったってしょうがねぇだろう。美里達だって、こいつが退院する迄はここにいるんだ。だから、今回は俺の顔に免じて家に戻っちゃくれねぇか?」

 駄々をこねると思っていたのだが、以外にすんなりと優はそれを承諾した。

「解ったよ、清水。父様、母様、お爺様だって心配してたんでしょ。今回は家に帰るよ……。でも、お兄ちゃんと逢っちゃ駄目な訳じゃないよね。もし駄目だって言うんなら帰らないよ」

 清水さんは困った様な顔をした。

「坊、そりゃ俺に言うこっちゃないぜ、親爺や若に交渉するんだな。だが、そんな事は言わんと思うがね……。あくまでも勘だけどな。一応、俺からも言っておいてやるよ。また家出されちゃあ、かなわんからな」

「もししたって、行く場所は決まっているから良いんじゃないの〜?チーフ」

「ちげぇねぇ!ここに来りゃいいんだよな」

「そんな単純じゃないよ。ボクは!」

 優は否定をしているが、その意見には僕も賛成である。絶対にここに来るだろう。


 二ヶ月が過ぎ……。優は学校から帰ると真直ぐここに来て、学校の様子を話したり、宿題の解らない所を聞いたりして、日が暮れると帰って行く生活をしていた。僕も、外傷はすっかり良くなり、後はギプスが外れるのを待つだけになっている。

 一ヶ月程前から僕はリハビリを始めている。今日からいよいよ歩行機具を使わずに松葉杖だけで歩行する事になった。それがなかなかきつい……何せ利き足の自由が聞かない上に、利き手もギプスで固定されているので上手くバランスが取れないのだ。何回も転げながら歩いていたら汗だくになってしまった。

「お兄ちゃんただいま〜!」

 ただいまって……ここは君の家か……

「あら、優君。今日も日野君に会いに来たの?まめねぇ……、どぉ?優君はその後何ともないかな?」

 リハビリに付き合っていてくれた看護婦さんが優と喋りだす。

「うん、もう平気だよ。退院してからは苦しくなった事ないよ」

「そう、良かったね。じゃぁ日野君、部屋迄歩いて帰ったら今日は終わりにしていいわよ」

「助かりますよ。もう疲れちゃって……」

「なーに言ってんのよ、こんな位で疲れてどうすんの?こうやって歩かないと一生歩けなくなっちゃうんだから」

「お兄ちゃん汗だくだね、部屋に帰ったら身体拭いてあげるね。先に行ってるから早く戻って来てよね」

 そう言って、廊下を走って行く。早く走れる様になりたいもんだ。

「こらっ!廊下を走っちゃ駄目でしょ!」

「ごめんなさーい」

 僕はそれから5分程かけて部屋に辿り着く。たった50Mがやたらと遠い。

「お帰り!疲れたでしょ。はい、タオル」

「あぁ、ありがとう」

 僕は優からタオルと受け取り顔を拭く。

「お兄ちゃんパジャマがびっしょりだよ。着替えた方が良いよ。手伝ってあげるから、脱いで脱いで!」

 そう言って、優はテキパキと、僕のパジャマを剥ぎ取り、下着迄脱がしてしまう。僕はあっという間に素っ裸になってしまった。優は僕の背中を丹念に拭いてくれる、まだ風呂に入れないのでそれが実に気持ち良い。優が前の方を拭き始めた。

「ここは汚いから良く拭かないとねー」

 そう言って、股間からお尻の方迄丁寧に拭いてくる。

 ……いや、そんなにじっくりやらんでも良いって……

「は〜やくげっんきになってよね〜」

 優は適当な節をつけてプルプルと僕の物を振っている。

「あのさ、そんなに弄んないでくれよ、優。暫く出してないからちょっとした刺激で起っちゃうんだから」

 そんな事を言っている間に僕の物は元気に上を向いてしまった。

「あはっ。元気、元気!……ねえ、お兄ちゃん。いつから出してない?」

「えーっとこの間夢精しちゃったのが……って違ーう!止めんかっ」

 僕は優からタオルを奪い取り、股間を隠す。

「ちょっと聞いてみただけなのに……」

「一寸聞くのにお前は人のちんこを弄るのかいっ!全くもう、はいはいもう二週間以上出してませんよ。これで良いだろ、早く下着を取ってくれよ」

 僕は、ベッドに腰掛けて下着を身に着ける。しかし片手が使えない上に、起ってしまった物が邪魔になってなかなかパンツを履く事が出来ない。僕が、下着と格闘しているとツツと優が寄って来た。

「お兄ちゃん、大変そうだね、ボクが手伝ってあげるから」

 そういったかと思うと、優はしゃがみ込み、パンツを履かせる振りをして、ペロンと僕の物を舐めあげる。僕は久しぶりに感じたその感触に思わず鳥肌がたつ。

「こっこら優、何をするんだ」

「だからぁ、お兄ちゃんのを小さくするお手伝い」

 やられた!最初からそれを狙ってたのか!優は、僕の物を口に含み頭を動かし始める。「んっ……んっ……」

「優、まずいって。鍵なんか無いんだから誰か入って来たら見つかっちゃうよ」

「いいよ、もう皆知ってるんだし……別にボクは構わないもん」

「……知ってるって?」

「あれだけ大声で喧嘩してたら皆聞こえちゃうよ。看護婦さん達は全員知ってるよ」

 ひえぇぇ、はっ恥ずかしいぞ!道理で、あの後僕の顔を見るとクスクス笑ってた人が多かったんだ。

「でも、僕は構うぞ」

「じゃ、こうしよう」

 優は僕の事を横にして、自分もベッドにのっかりその上から布団をパフッと被る。

「これなら、いいでしょ」

 そういって優は再びしゃぶり始める。さすがにさっきよりはましだが、不自然極まり無い事には変わりない。しかし、久しぶりの優の攻めを味わうけど、どんどん上手くなっていくなぁ。チュパチュプと布団の中で優が僕の物を舐めている音が聞こえる。

「ん……ふ……お兄ちゃん、気持ちいい?」

「あぁ、とってもいいよ。もう出ちゃいそうだ」

「いいよ、お口に出してよ。久しぶりにお兄ちゃんのが飲みたいな」

 そういって、奥深く迄くわえ込み、強く吸いたてて来た。あうっ……もうでるっ!

 びゅるっ……

 僕は優の口の中に溜まりきっていた物を放出した。優は布団の中から僕を覗き込む。

「溜ってたんだね、お兄ちゃん。凄く濃いし、一杯出たよ。それに……」

「それに?」

「お兄ちゃんの舐めてたら、ボクも出ちゃった」

 優は、布団から這い出して来て、僕の左手を自身の股間へ導く。

「ほら……ね」

 本当だ、優の履いているジーンズ生地の半ズボンのそこはジトッと湿っている。

「早く脱がないと……」

「そうだね、そろそろパンツが冷たくなってきちゃった」

 優はそう言うとパンツごと半ズボンを脱ぐ、優の股間は自身が出した物でベトベトになっていた。

「たっだいま〜!」

 あちゃ……美幸が帰って来ちゃったよ。

「あ、優ちゃん来てたんだ。……ん?」

 美幸は鼻をひくひくさせている。そして、僕と優の顔を見比べる。そしてベッドの方に近寄ると、納得した顔をする。

「優ちゃんがフルチンで、明兄ぃも下履いて無くって、この臭いがするって事は、今やったばっかり?」

「うん、今出したばっかりなの、でもせっくすはしてないよ」

「このっ、明兄ぃのスケベっ」

 美幸がにやつきながら肘をウリウリッと僕の方に突き出す。

「喧しっ。これ洗って来い、そんでもって、お前のでいいからパンツとズボン持って来いよ、優にフルチンで帰らせる訳に行かないだろ。早く行って来い」

 僕は、優のズボンとパンツを美幸に投げつけた。

 ベチャッ……

 美幸はズボンの方は器用に受け止めたのだが、後から飛んで来たパンツをもろに顔で受けてしまう。

「わっ、つめて〜!酷いや、明兄ぃ!」

 美幸はぷりぷりしながら、部屋を出て行った。

「ただいま戻りました。明さん何かあったんですか?美幸がブチブチ言って洗濯機の方に行ったんですけど……」

 美里が、部屋の外の方に視線を向けたまま入って来た。そしてこちらに視線を戻した途端に目を丸くする。

「どうしたんですか優様、そんな格好で!何か飲み物でもこぼしたんですか?」

「ううん、違うの。ボクがお兄ちゃんの舐めてたらズボン履いたまませーえき出しちゃったの、それで美幸に洗いに行ってもらったの。ほら」

 そう言って、股間についたままの精液を指で掬い美里の目の前に突き出す。

 ……お前まだ拭いて無かったのか、早く拭けよ……

「わぁ、本当だ!ちょっと待ってて下さい優様、今お絞り持って来てあげます」

 美里も吹っ飛んで部屋から出て行く。

 あ、早い。すぐに美里は帰って来た。

「もう、優様ってば世話が焼けるんだから……、ハイこっちに来て下さい、乾いちゃったらなかなか拭えないんですから……」

「なんか、美里ってばおばさんみたいな感じだな〜」

「すいませんね。どーせ、私はおばさんみたいですよ」

 美里は、文句をぶつぶつ言いながら、優の股間を拭いている。

「美里、そんなにごしごし拭かないでよ。もっと優しく拭いてよ」

「あ、すいません。痛かったですか?でもなかなか取れないんですよ。この位ならいいですか?」

「うん、気持ちいいよ……」

 優のあそこがまたもや元気を取り戻す。なんかさっきと同じ事になってるなぁ。

「優様……さっき出したばかりなのでしょう」

「でも、今日迄ずっと我慢してたんだもん……。ねぇ美里ぉ、ボクの舐めてよ、お願い」

「ええ!ここでですか?」

 美里は驚いている。当然の反応だ。ここには誰がいつ入ってくるか判らないのだから。

「ねぇ、お願い。ボクもう我慢出来ないよぉ」

「いや、だって……ここでは、誰か入って来たらすぐに見つかってしまいます」

「そっか……お兄ちゃんのベッドは使えないし……そうだ!こっちこっち」

 優は美里の腕を引っ張って、僕の横に来る。

「ここの床に直に座れば誰か入って来ても大丈夫だよ。ね?だから、早くぅ」

 そう言って、優はペタンと床に座って足を広げる。美里は困った様な顔を僕に向けるが、こうなっては僕にもどうしようもない。僕は諦めなと、肩を竦める。美里も諦めがついたのか、優の前に跪き、優の物を口に含む。

「あは……美里ぉ、気持ち良いよぉ……」

 ちゅる……ちゅぷ……ぺちゅ……

 美里が頭を動かす度に病室内に湿った音が響く。

「あう……ん……美里ぉ……もっと……いっぱい……ああ……いいのぉ、おちんちんが気持ちいいよぉ」

 美里も優の喘ぎ声を聞いているうちに興奮したのか、自分の物をズボンから引き出して扱いている。

「あぁっ、美里ぉ、も……もう……で……」

「ただいまぁ。優ちゃんズボン持って来たよぉ」

 なかなか、タイミングの良い時に帰ってくる奴だ、もしかしてからかってるのか?その声に吃驚した美里は、思わず口を離してしまう、そこに優がイってしまった物だから、美里の顔に思いっきり優の精液が飛び散る。

「あれ?明兄ぃ、優ちゃんは?」

 僕はベッドの脇を指差す。美幸はひょいっとそこを覗き込む。

「なんだよ優ちゃん。またやってるの?それに兄ちゃん迄……。ずるいや、兄ちゃんこの頃相手してくんないのに……」

「そうなんだ。じゃぁ、ボクが相手してあげるその替わり、美里がまだイってないから……ゴニョゴニョ……」

「うーん、解ったよ……兄ちゃん」

 美幸は優の耳打ちの後、美里の顔を両手で挟み、顔中に飛び散っている精液を舌で舐め取っていく。そして、興奮した二人は唇を合わせ、そして舌を絡めてお互いを呼び合う。

「兄ちゃん……兄ちゃん」

「美幸ぃ……」

 美幸の手が美里の股間をまさぐる、そして美里も美幸のズボンのファスナーを下ろし、美幸の物を引っ張り出して弄くり始める。

「あう、兄ちゃん……いい……」

「美幸……そこ……そこもっと……」

 優は、いつの間にか爪弾きにされた格好となった。

「なんか二人で盛り上がってるなぁ、いいや放っとこ。お兄ちゃん、もう一回舐めてあげるっ」

 そう言って、優は僕のベッドに飛び乗り、再び僕の物を口に含む。横では、二人がいつの間にか服を脱ぎ、お互いの物を擦り合わせ、抱き合っている。

「美幸のヌルヌルしてて気持ちいいっ」

「兄ちゃんのだって……もう先っぽびっちょりだよ……」

「あうっ、優……そんなとこ迄舐めないでもいいよっ」

「お兄ちゃん、ボクのも舐めてぇ……」

 四者四様の声が混ざりあう。今考えるとよく誰も来なかったもんだ。

 夕方、各々の欲望を出し切った四人は疲れ果てていた。

「ちょっと、換気しようよ。臭いがこもっちゃってるよ」

 美幸が窓を全開にする。もう七月になっているのでそんなに涼しくはないが、皆汗だくになっているせいで風が入るとひんやりと気持ちが良い。

「今年は海に行けないなぁ」

 僕はぼそっとそんな事を言う。

「来年皆で行けばいいんだよ。うちのプライベートビーチで皆で遊ぼう!」

「え?優ちゃん、オイラ達もいいの?」

「もっちろん!」

「やった!あそこって滅多に行けないからなぁ」

「凄く綺麗な所なんですよ、明さん。綺麗な魚も一杯いますし」

「ヘぇ、いいなぁ。どこにあるんだい?」

「あのね、フィジーにあるんだ!」

 げっ!海外にプライベートビーチ持ってるの?やっぱり凄いな、泉寺は……

「じゃ、退院したらパスポート取りに行かないとな」

「そうだね、早く退院して、また一杯遊びに行こう!」

 優が、僕に向かってニコッと笑いかける。

「……そうだね」

 僕も微笑み返す。



 夏が過ぎ、もう落ち葉も無くなろうかという晩秋、僕のギプスは取れ、晴れて自宅に戻る事が決まった、そう……退院だ。


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