僕の中のあいつ 第二部 第十二章
「師匠、この間の話なんだけどさぁ……」

 退院後、ほぼ恒例になっている週末の夕食会で、健太がハンバーグを頬張りながら話してきた。

でも、この間の話って何だ?なんか健太と話したっけかな?僕は健太と何を話したのか必死に思い出そうとした……が、やっぱりなにも思いつかない。

そこに美幸が横から口を挟んできた。

「ほら、あれでない?健太が優勝したから何かご褒美がほしいって奴」

 ん?健太なんかに優勝したのか?頭の上に『?』マークが浮かんでいるのを美里が察し、少々わざとらしく教えてくれた。

「あー!この間剣道の大会で優勝したんだもんね!凄かったらしいじゃない」

 そか、健太が大会で優勝したのか……でも、僕は健太と何も約束してないと思うんだけどなぁ……そこに更に小声で優が話してくれた。

「お兄ちゃん、健太はお兄ちゃんが記憶なくしてたの知らないよ。余計な心配かけるから言ってないんだ。多分記憶なくしてる間にお兄ちゃんがなんか約束したんじゃないの?」

 あ、なるほど……やっと流れを理解した。僕の反応が遅いことに健太は小首をかしげている。

「あー、あれか!もちろん覚えてるよ。で、健太は何がほしいんだい?」

 もちろん覚えていないんだけど、何か手掛かり的なものがほしくて、殊更大声で聞いてしまった。

だが、健太は健太で何か言おうかどうか迷っているような感じがする。その様子を見ていた美幸がまるでチェシャ猫のような悪戯っぽい顔つきで笑っている。

「なんだよ美幸、知ってるんなら教えろよ」

「いやぁー、オイラの口からは言えねっすなー。なんせ健太と男と男の約束だからー。なー健太ー」

 にやにや笑いをさらに大げさにしながら美幸は答える。その言葉で健太は余計にもじもじし始めた。

「なんだよ、健太。遠慮なんていらないから言ってごらんよ」

「いや……あのー……えーとー……そのー……」

 良し悪しはともかく、いつもはっきりと物を言う健太にしては非常に歯切れが悪い。優もそう思ったのだろう、言葉をかける。

「健太らしくないじゃん。お兄ちゃんが言ってるんだから遠慮しないで言えばいいのに」

「じゃぁ……あのー……」

 それでも歯切れの悪い言葉が続く。

『何?』

 思わず優と言葉が被ってしまう。

「先輩……俺、師匠と二人で旅行に行きたいんだけど……」

健太が優と僕とを交互に見ながら消え入りそうな声で言った。

「ん?いいんじゃない?どこいこっか?」

 優が旅行という事で目を輝かせながら言い始める。

「いや……あのー……俺師匠と二人で行きたいなーって……やっぱ、だめならいいっす……」

「ありゃ……お兄ちゃんと二人でか、つまんないの」

「いや、だからダメならいいですって」

「別にダメとは言ってないよ。どーせお兄ちゃんが安請け合いしたんでしょ。行ってくればいいんじゃない?」

 微笑みながら優は言うが、その言葉には僕に対する棘が少し含まれているような感じがする。そしてその言葉に続いて、美里がとんでもないことを言い出した。

「へー、優勝のご褒美に二人きりの旅行ですかー。いいですねー。私なんてお二方に散々迷惑かけられて、泣かされて、乗り物に酔いやすいのに相模さんと部長の乱暴な運転で、気持ち悪いの我慢しながら色々連れて行かれて……いいですねー」

 静かに焼き魚をつまみながら、人の気にしている事をぐさぐさと突きまくる。それは優も同様だったようで「はう……」とか言っている。

「あの……美里?もしかして怒ってる?」

「いえー、怒ってなんかいませんよ優様。ただ単に苦労の割に報われないなーってだけですよ。特別報酬があるわけじゃないですしね。まぁそれが私のお仕事ですから?そんなので怒ってたら神経もちませんよ」

 優に対して極めて優しい口調で言ってはいるが、怒ってるって言うか……根に持ってやがる……あー!もうどうにでもなれってんだ。

「分かった分かった!美里にもなんかご褒美やる!」

「え?いいんですか?うれしいなぁ。じゃ、私もなんか考えておきますね」

 これ以上は無いって位の笑みを浮かべる美里。絶対狙ってやってるよな……こいつがこんなにしたたかだとは思わなかったよ。というか、どんなご褒美を要求されるんだか怖いところではあるな。

「んで、健太はどこ行きたいん?」

 美里のことを考えると怖いので話を健太のほうに戻すことにした。

「え?あ、お、俺?」

 今の今まで忘れ去られていた健太は慌てる。

「そそ、どこか行きたいとこあるんじゃないのか?」

「えとね、俺富士宮遊園地行きたいんだけど、全部のアトラクション回ってみたいと思ってさ……でもあそこって結構並ぶから、そうすると一日ってきついと思ってさ。ダメ?」

「ん?いいんじゃない?」

 まぁ優がかなり羨ましがってるけど、それは今度の機会に回すとするか。

「マジ?やった!あそこのホラーメイズ入ってみたかったんだ!」

 う……なんか嫌な単語出てきたな……

 その後はまぁ落ち着いた感じで時を過ごし、夜も遅くなったこともあり皆それぞれ帰っていく。残っているのは当然のことながら優のみ。

「お兄ちゃんは何て言うか、よくよく地雷踏むよね」

 健太と美里のことを言っているのは間違いない。

「そんなこと言うなよー。僕だって気にしてるんだぞ?」

 皿を洗いながら僕は答える。

「でもいいなー、ボクもお兄ちゃんと旅行に行きたいなー」

「まぁ、言ってくると思ったよ。今度どこでも好きな所に連れて行ってあげるよ。二人きりでゆっくり……」

 そこまで言って、僕と優で二人きりって言ったら、絶対誰かがダメって言いそうだと気が付いてしまった。

「出来るのかな?」

「えー!邪魔させないもん!」

 優もそこには気がついたようだ。だけど激しくそれを否定する。まぁ、この様子ならダメだって言っても絶対に押し通すんだろうな。

「分かった分かった。じゃぁ二人でな」

僕はそう言って優の頬っぺたにキスをする。

「うん!」

 元気良く返事をした優は僕に抱きついてくる。

「おいおい、洗いものしてるんだから危ないじゃないか」

「えへへ、ごめん」

「まったく、現金なんだからな、優は」

 優は、それでもまだえへへと笑っている。ったく可愛いなぁこいつは。





 いよいよ健太との小旅行の日がやってきた。僕はレンタカーを借り健太の家まで迎えに行った。実はドライブでというのは健太には内緒にしてある。その方が健太はびっくりすると思ったからね。

 まぁ、免許を取ってから田舎でしか運転してなかったし、こっちに来てからは一度も運転してなかったのでほぼ初心者だけど。だから清水さんに暫くの間、練習に付き合ってもらった。

曰く、おまえの横に座ってると寿命が縮むだって。そりゃまぁ清水さんや相模さんに比べたら全然ダメなのは解ってるけどさ。

携帯電話で健太のことを呼び出すと、健太はびっくりして僕のところに寄ってきた。

「え!?師匠車運転できたの!?」

 失礼だなぁ……でも、今まで車運転したのなんて見せたことなかったっけ。

「まー、ほとんどペーパーだけどね。ほら、早く乗れよ。いくら朝早いからって言ったって、通行の邪魔だからさ」

「うん、わかった!」

 健太は小さな荷物を後部座席に放り込み、助手席に乗り込んだ。

「でもびっくりした、まさか車で来ると思わなかったよー」

「あはは、ちょっとびっくりさせようかなって思ってね」

「うん、びっくりした!」

小ぶりな車は僕たちを乗せて軽快に走る。

「でも、晴れてよかったな」

「うんうん!」

 健太は流れる景色を見ながら、嬉しそうにはしゃいでいる。暫く景色を見ていたが、高速に入って暫くして健太が僕の方を向く。

「師匠、あのさ、お願いがあるんだけどさ」

「ん?なに?」

 さすがに運転中に横を向く訳にいかないので前を見たまま返事をする。

「あのさ、この旅行の間だけでいいから明兄ちゃんって呼んでもいい?」

 それを聞いて僕は思わず笑ってしまう。だが、健太は少しむくれたようだ。

「あはは、ごめんごめん。別に師匠ってしか呼ぶななんて僕は言ってないよ。別にこの旅行の間だけじゃなく、いつでも健太の好きなように呼んだらいいじゃないか。」

「んー、でも、なんか皆いるところだと恥ずかしくてさぁ」

「別に気にすることないのに」

「そっかなぁ……でも、お許しも出たし。明兄ちゃん、今日はありがと!」

 好きにしろとは言ったけど、健太に兄ちゃんって言われると少しくすぐったいな……そう思いながら運転を続ける。

さすが、週末だけあって高速も少し込んできた。しかしのんびり運転をしているうちに道路の向こうに目的地が見え始めた。健太はそれを見てさらにテンションが上がっているようだ。

 僕たちは、駐車場に車を入れ券売所に向かう。

「もちろんフリーパスだよね」

「うん。あ、これも持って行って買ってきてくれるかい?」

 やはり慣れない運転で緊張したかな……僕は健太にお金と割引券を渡し、買ってきてもらうことにした。結構並んでるんだよ。僕は少し離れたところで健太が券を買ってくるのをのんびりと待った。

「明兄ちゃんお待たせ。早く行こう」

「はいよ、じゃぁ行こうか」

 健太が僕の手を引っ張って、早く早くと、ぐいぐい引っ張る。

すでに園内にはかなりの人が入っていて結構な人混みになりつつある。パンフの園内地図を確認しながら、適当に空いていそうな絶叫マシーンの列に並ぶ。

 カタカタと登っていくコースターの高さが半端じゃないような気がするんだけど……

「うひー、高ぇー」

健太は気楽にそんなことを言っている。やがて最高部から一気にコースターが疾走を始める。

この落差はすごい……健太は、あははははは!と笑いながら両手を上げているが、僕は実際にそんな余裕なかった。別に絶叫系が嫌いな訳じゃないが、今までに乗ったのよりも、凄くて余裕が出なかった。

「次あれ乗ろう!」

 コースターを降りた後、健太は元気に次の乗り物に向かって、小走りになっている。

タフだなぁ……

既にかなりの行列が出来ていて凄いことになっている。ま、のんびり並ぶとしようか。健太が学校での話をしてくれるのでそれほど退屈しないですんだ。

 今度のやつは高いんじゃなくて初速がね……カタパルト式って奴?変に頭浮かせてたら絶対鞭打ちになるな。

 たった二つの乗り物に乗っただけで、時間は既にお昼を回っていた。確かにこれは一日じゃ回りきれないよな。ふと見ると園内で優先チケットみたいなものが売られていた。結構高いな……しかし、これじゃ埒あかないし、買ってみた。運よく、僕が買ったすぐ後に売り切れたようだ。

4回分も買うとフリーパスとほぼ同じ値段って、ここも商売うまいな……チケットを買ったことで少しは時間に余裕ができたので、健太と少し遅い昼にすることにした。

「明兄ちゃん。これ食べたらさ、例のあそこ行ってみようよ。さっき買ってくれた優先券で入れるみたいだよ」

 やっぱ行くの?

実は僕はその系統が大の苦手だったりする。高校の時の肝試しもその時付き合ってた彼女よりも怖がっちゃって、それが原因で振られた苦い思い出がある。

でも、まさか健太に怖いからいくのやめようなんて言えないしなぁ……

「いいよ、じゃぁこれ食べて少し休憩したら行こうか」

 自分でも顔が引きつっているのがわかるような気がする。しかし、健太はそれに気がつかないようだった。

休憩後、例のあそこに行った訳だが、最初は余裕だった健太も、ペンライトを取り上げられてからは、ずーっと僕にしがみついたまま歩いていた。優よりは小柄だが、中学生にしがみつかれるとかなり歩きにくく、おかげで余計に驚かされる羽目になる。健太もかなりのビビりだということが判明したので、それで勘弁してほしい。

「アニキの嘘つき……全然怖くないって言ってたのに……」

 半分涙声で、あそこから出てきた後の健太は誰かに文句を言っていた。

「アニキ?」

「美幸先輩だよ。前に来たんだって、でも全然怖くないって言ってたから、どんなんだろって……滅茶怖かったっての……」

 そう言えばリニューアルがどうのとか、ネットにあったような気がするな……って言うか、美幸の奴め迷惑だっつの。

あそこのおかげでかなり時間を取られた為、既に日が傾きかけている。

 残りの優先券を使い、二つほどのアトラクションを回っただけで、あたりはほぼ真っ暗になってしまった。

「そろそろホテルに行くか」

「うん」

 車をホテルに移動させ、チェックインを済ませて部屋に行く。その部屋からは遊園地が一望できた。

「わ、すげー!」

 暗くなってきたこともあり、遊園地のアトラクションがライトアップされていた。健太はそのライトアップされた光景に見入っている。

「どうする?なんか、ここは泊ってると遊園地出入り自由みたいだけど、まだ行くか?」

「んー、いいや明日にとっとく。それより腹減ったかな」

 窓の外を見ながら健太は返事をした。

「じゃ、飯食いに行くか。なんか色々あるけど何が食いたい?」

「なんでもいいよ」

「あの、滅茶高いんだけど……」

 ホテル内のレストランにある各店の値段を見て健太は尻込みをする。

「リゾートホテルだからな、こんなもんじゃないか?ま、遠慮すんな、優勝記念だと思ってさ」

「いやいやいや!高すぎるって!」

 このままでは夕食にありつけなさそうな雰囲気だったので、僕は目の前にあったフレンチレストランに健太の手を引いて行った。

「そういう事で、健太改めて優勝おめでと」

「あ、ありがと……」

 目の前に出された料理を見ながら健太は礼を言う。

「あのさ……俺、こんな高そうなもん食ったことないし、マナーなんて分かんないよ」

「マナーなんて別に関係ないさ、別に公式の場じゃないんだし、楽しく食べればそれでいいの。」

「そんなもんなの?」

「そそ」

 本来ならそんなもんではないが、ここでマナー云々言っても食事がまずくなるだけだしね。

それでもびくびくしながら健太は料理を口に運ぶ。そんなんじゃ、味わからんだろうにな。ま、仕方ないか。

食事の後、僕たちはホテル併設の温泉施設に行って今日の疲れを洗い流す。

 健太に背中を流してもらいながら、優がこういうところに着たら絶対はしゃぎまわるんだろうなとか考えていた。

「もういいよ、優……じゃないや、健太」

「あ、うん……あのさ、俺、のぼせそうだから先上がる」

「なんだ、じゃ、一緒に上がるか」

「いいよ、明兄ちゃんはゆっくりしてきなよ。今日は疲れただろ」

「ん、まーね。じゃ、もう少しのんびりしてから戻るよ」





 僕が風呂から戻ると、部屋は暗く遊園地のライトアップの光が差し込むのみだった。その光の中ベッドが一つ盛り上がっている。

「健太?もう寝たのか?」

 ま、今日は疲れたよな、僕も寝るとするか。

 僕がベッドにもぐりこんで暫くすると隣のベッドでもそもそ動く気配がする。

「明兄ちゃん、そっち行ってもいいか?」

「ん?いいよ。あそこのおかげで怖くて寝られなくなったか?」

「ちがっ……!」

 健太はそう言いかけたまま、僕のベッドに入ってきた。そして僕に、きゅっと抱きつく。

「おいおい、どうしたんだよ。まさか本当に怖かったのか?」

 健太は僕の胸に顔を埋めてフルフルと首を振る。

「違うよ……明兄ちゃん。俺の事抱いてほしいんだ。もう我慢の限界なんだよ……」

「ちょ、おま……意味わかってんのか?お前まで優達に影響されることないだろ」

「わかってるよ、でもダメなんだ。明兄ちゃんの事考えると胸が苦しくなって……さっき俺と先輩の事間違えただろ。あの時、胸が張り裂けそうな位辛かったんだ。旅行の間だけでいいよ、先輩のこと忘れて俺の事だけ見てくれよ」

 最後の言葉を紡ぎ終える頃には、半分嗚咽しているような状態だった。まいったな……

「なぁ健太、お前さ、僕に断られたらどうするつもりだったんだ?」

 僕は子供をあやす様に軽く頭を撫でながら聞いてみる。

「そんなの考えてなかった……でも、本当に辛いんだ。明兄ちゃんが先輩の彼氏なのはわかってる。わかってるんだけど、もうどうしようもないくらい辛いんだ……」

「そっか……」

 まったくもう……僕は健太の頭を少しだけ力をこめて掻き抱いてやる。

「言っとくけど、あとで後悔したって知らないぞ?」

「うん……そんなのしない」

 その返事を聞いて、僕は健太の顔を両手で優しく挟み、じっくりと見つめる。その目尻からは、はっきりと涙の流れた跡が残っている。

「じゃ、約束。家に帰るまでは健太の恋人でいてやるよ」

 僕は、そう言って健太の唇に自身の唇を合わせる。軽くついばむつもりだったが、健太がすぐに舌を絡めてくる。

「んっ……」

 まるで、僕から離れるのが嫌だと言うように健太は僕の事を抱きしめてくる。それに応えて僕が足を絡めると、健太の中心が既に熱を帯びて硬くなっていた。

「あ、ダメっ」

その部分に手を伸ばし、軽く包んでやっただけで健太は僕の手の中に射精してしまった。

「ありゃ、もうイっちゃったのか」

「ゴ、ゴメン」

 健太はすごく悪いことをしたみたいになって縮こまりながら謝る。

「別に謝らなくていいさ」

 僕はそのまま健太の白濁を、まだ萎えきっていない部分に塗りつけ愛撫する。

「や……まだ出たばかりなのにっ」

 射精したすぐ後の為に敏感になっているのか、僕が手を動かす度にビクビクと全身が跳ねる。

「可愛いよ、健太」

「かっ……わいいなん……てっ」

 僕は空いている手で、健太の乳首を弄りながら、首筋や耳朶に舌を這わせる。

「っ……やだっ……身体……ヘンになるっ」

 健太がはふはふと喘ぎながら言っている。その反応がなんか新鮮で本当に可愛く思えてくる。

「健太、ほら。健太が可愛いから僕のも……な……」

 充分に熱を帯びた僕のそこに、健太の手を導いた。

「明兄ちゃんのでかい……」

 そう言って、健太はぎこちなく僕の物を擦り始める。

 僕はベッドに潜りこんで健太の体に舌先のターゲットを変更する。下の方からは先ほど健太が放った白濁の青臭い匂いが流れてくる。

僕の物に手が届かなくなった健太は、僕の頭を両腕で抱き、必死に快楽の声を抑えている。

「ひぁっ」

 胸から、腹へ、そして健太の硬くなった部分に舌先が到着した。濃密な白濁の匂いと味が僕の鼻腔と口内を刺激する。舌先で、硬くなった部分や付け根を攻める度に、健太の短い喘ぎ声が漏れる。

 しかし、熱い!僕は布団をはぎとり、横に放り投げる、ひんやりした空気が心地よい。

健太の腰を少し持ち上げ、足を開かせ、露わになった蕾に優しく舌を這わせる。

「は、恥ずかしいよぅ」

 健太は腕で顔を覆う、その仕草がまた新鮮な感じで、僕も思わず興奮してしまう。

「んっ……でも、健太のここ、すごく綺麗だよ」

 健太の蕾へ殊更執拗に舌を這わせ、少し力を込めて健太の中に侵入を試みる。

「あっ……あう……明兄ちゃ……は、入ってくる……」

 侵入を感じた健太の蕾に力がこもり、僕の舌はなかなか侵入できない。

「健太、少し力抜いて……」

「で、でも恥ずかしい」

 僕は舌による侵入を諦め、中指をたっぷりと唾液で濡らしてから蕾に押し当て、健太に寄り添うように身体を移動する。

「健太、よくほぐしておかないと後で痛いからさ」

「またキスして……」

「いいよ」

 キスをすることで健太の身体から余分な力が抜け、僕の中指を結構簡単に飲み込んでくれた。

「大丈夫?痛くないか?」

「うん、これ位なら平気……」

「そか、ならいいけど」

 僕はまた身体を動かし、今度は健太の昂りを口に含む。

「は……んっ」

 その刺激に健太の太股がきゅっと締まり、僕の顔を挟みこむ。

「健太……苦し……」

「あっ、ゴメン。凄く気持ちよくって思わず……」

 健太の蕾は案外早く僕の指を二本飲み込んだ。苦痛を与えないように健太の昂りを刺激しつつ、細心の注意を与えながら健太の蕾をほぐす。

「あっ……きらに……また出ちゃ……いそ」

「いいよ、出しちゃえ」

 僕は少しきつめに健太の物を刺激する。

「だ、ダメだっ……て……あっ、あっダメ……も……出……」

 健太が最後まで言い終わらないうちに、健太の先端から熱い液体が僕の口腔に勢いよく流れこむ。

 くたっと身体の力が抜ける健太。ちょうどいいかな……

「健太、そろそろ挿れるよ」

 僕は健太の出した白濁をローション代わりに自分の物と健太の蕾に塗りつけ、健太の蕾に押し当てる。

 最初はボーっとしていた健太だったが、僕の物が押し当てられた瞬間に僕の顔を不安そうに見つめる。

「健太、出来るだけ力抜いて、痛かったらすぐに言うんだよ」

 健太が頷いたのを確認してから、僕は軽く押し当てていた部分にゆっくりと力を込め、健太の中に侵入して行った。

 優や美里の時の事を思い返しながら、慎重に挿入するようにしたのだが、健太の窄まりは思っていた以上にすんなりと僕の事を迎え入れた。

「健太、大丈夫?痛くない?」

「うん……いつものよりでかいから、痛いのかなって思ったけどそんなんでもない」

「いつものって、お前経験あったの?」

 優達ならあり得そうで怖いな……

「違うよぉ!俺、明兄ちゃんが初めての人なんだぞ!」

 ほっ……少し安心した。

「俺、いつも明兄ちゃんの事考えながらしてたから……この頃はお尻弄ってると、なんか変になって声が出ちゃうんだ」

 なるほど……道理で優の初めての時よりすんなりいくと思った。

「じゃ、動くよ、痛かったらちゃんと言うんだぞ?」

「うん……でも、多分平気。でも、本物ってすごく熱いんだね。それになんか、それが気持ちいい」

 僕はゆっくりと健太の中を味わい始める。

「明兄ちゃん、またキスして」

 健太は殊の外キスがお気に入りのようで、事あるごとにキスを求めてくる。僕はリクエストに応えて、健太の唇を塞ぎ、激しく舌を絡める。

「んっ……ふぅ……ん……」

 健太は僕の首に手を回し、抱きついている。僕が健太の事を突く度に健太の吐息が僕の口内に入ってくる。

「ん……ぁん……」

ある程度健太の中を突いていると、今までとは明らかに違った、明らかに艶っぽい声が健太から漏れる。

「ここがイイの?」

「う……ん……そこ、電気走っ……ひんっ!ヤ……ヤダッ」

 僕は、健太の感じるというあたりを重点的に攻めてやると、健太はイヤイヤと首を振りながら、僕の物をきゅうきゅう締め付けてくる。

「や……やぁ……も……きも……」

 何か言いたいのだろうが、言葉が意味をなしていない。それに、先程から健太の足が僕を抱え込むようにして放してくれない。密着している腹部では健太の先端から溢れ出る液体でぬるぬるとしている。その刺激が更に健太を追いつめているようだ。

「あっ……あっ……も……ぃくっ」

その言葉とほぼ同時に、健太は全身の力を込め、僕の身体に思い切り抱きつく。腹部では熱い液体が放たれたのがはっきりとわかった。

「健太、出すよ」

 僕の方もさすがに限界に来ていて、健太の絶頂の痙攣に強い刺激を受け、勢いよく健太の中に放ち果てた。

 健太は強烈な快感に翻弄され、今度はベッドの上で放心している。

「大丈夫か?」

 僕は健太の窄まりから漏れてきた自分の白濁と、自分と健太の間に漏れ出た健太の白濁を、ティッシュで拭いとりながら話しかける。

「あ……うん……」

 ティッシュをごみ箱に捨てた後、僕はまた健太の横に寝そべり、健太の頭を撫でてやる。その頃になってやっと健太は放心の呪縛から抜け出ることができたようだ。

「なんか、凄く気持ちよかった……自分でしてる時と違って怖い位だった」

「そか、痛くなかった?」

「うん……全然平気だった。ね……暫くこのままでいい?」

 そういうと健太は僕に軽く抱きつき、胸に顔を埋める。

「いいよ、少し休んだらシャワー浴びような」

「うん……」

 だが、健太は疲れたのか、そのまま寝息を立てて眠ってしまった。しょうがないな、明日朝一番に風呂でも入るか。僕は健太を起こさないように布団をかけ、優とは違う体臭を感じながら眠りについた。





 翌朝、目を覚ますと、健太はまだ僕に抱きついたまま規則的な寝息を立てていた。僕は健太の頬を突きながら起こすことにする。

「健太ー、もう朝だぞ、起きろー」

「んー」

 寝ぼけ眼で健太は返事をするが、またすーすーと寝息を立て始めてしまう。

「健太ー、シャワー浴びて支度しないと開園に間に合わなくなっちゃうぞー?」

 ぷにぷにと健太の頬を突きながら起こそうとするが、健太はなかなか目を覚まさない。

「おーい、健太ー、遊園地がまた込んじゃうぞー?」

「別にいい……」

 別にいいって……全部の乗り物乗りたいとか言ってたんじゃなかったか?

「だって、全部の乗り物乗るんだろ?」

「んー……もういい……こうしてる方がいい……」

 少しは目が覚めたのか、先程よりははっきりした口調で応えながら、さっきまで力の抜けていた腕に力が入り、しっかりと僕に抱きついてきた。

「わかったわかった。じゃぁチェックアウトまでのんびりしよう」

 急がなくてもいいとなると、多少の余裕がある。僕は昨日フロントで貸切風呂が借りることができるのを思い出し、電話でフロントに聞いてみた。

朝という事もあり、時間になったらすぐに借りることができるとの返事をもらい、予約を入れる、しかし、貸切風呂の時間には少し間が空くので、健太を諭して朝食に行った。

晴天の下、風呂に入るというのは何か気持ちが開放的になる。それほど広い風呂と言う訳ではないので、男二人が一緒に湯船に入ると密着する形となり、健太がそこでまたキスをせがんでくる。

結局、健太に押し切られる形でキスをする。キスをするという行為だけで、健太はイきそうになる位にその部分を膨らませ、先端から期待の滴を漏らす。

健太を湯船の縁に座らせ、軽く口に含んでやっただけで、昨日あれだけ放ったというのに大量の白濁を僕の口内に放った。

昨日は、ローション代わりにしたが、今日は少し健太の味を確かめた後、そのまま健太と口付けをし、健太にも味あわせてみた。

嫌がるかなと思ったが、健太は素直にそれを受け入れ嚥下する。

さすがに一戦するには時間が無いので、そこで風呂を上がり、また部屋でのんびりすることにした。

「明兄ちゃん、俺も兄ちゃんの舐める」

 部屋に帰ってきての一言がそれ。

「いいよ、あと一時間もしないでチェックアウトなんだしさ」

「でも……」

「いいの。僕は健太が気持ちよかったらそれでいいんだ」

「でも……」

「いいの。そんなこと言うと、もうキスしてやんないぞ?」

「あっ、ヤダヤダ」

 健太は慌てて僕に抱きつき、唇をねだる。僕たちはチェックアウトぎりぎりまで思う存分舌を絡めあった。

チェックアウト後も、そのまま遊園地に入ることができるという事がわかり、僕達は再び遊園地で遊ぶことにする。

昨日と違うのは、健太が乗り物に先走らず、常に僕の横にぴったりくっついてる事と、健太が決して例の場所に目を向けない事。

のんびりと園内を散策する感覚で遊んでいると、早くも陽が傾き始める。

「健太、そろそろ帰ろうか」

「じゃ、最後にあれ乗って帰ろうよ」

 健太が指差したのは、暗くなり始めた為ライトアップがされた観覧車だった。

「おっけ、それ乗ったら帰ろう」

「うん」

 観覧車に乗って少しの間、健太は向かいに座っていたが、扉が閉まると僕の横にちょこんと座り、頭を僕に預ける。

「ん、どした?」

 健太の肩に手を回し、髪の毛を優しく撫でてやる。

「ん……なんでもない」

 健太はそのまま黙りこんだ。僕も何か健太に語りかけるのが無粋な気がして、黙って景色を見ていた。

遊園地を出る頃には、あたりは真っ暗になっていた。僕は車を運転しながら、健太の様子をちらちらと伺う。

観覧車に乗った後、僕が語りかけると返事はするものの、決して僕の方を見ようとせず、自分から語りかける事もなかったからだ。

 ま……大体の原因はわかるけどね。僕は小さく溜息をついた後、意を決して健太に話しかける。

「健太、さっきからどうしたんだ?随分暗いじゃないか。楽しくなかったか?」

「ううん、楽しかったよ。今迄で一番楽しかった」

「その割にはつまらなさそうな顔してるぞ?」

「だって、もうすぐ魔法が解けちゃうから……」

「魔法?」

「だって、この旅行が終わったら、明兄ちゃんはもう俺の事見てくれなくなっちゃうから……」

 あー、もう!可愛い事言うな、こいつは! 僕は、健太の頭に腕を伸ばし、半ば無理やり僕の膝の上に引き込んだ。少し運転し辛いが、オートマだから何とかなる。

 僕は健太の顔を撫でながら健太の事を諭してやる。

「ばーか、誰がもうお前の事見ないって言ったんだよ。そりゃ、僕には優がいるけど、優が皆の事巻き込んで騒ぎ起してるんだからさ、心配すんなよ。お前に好きな人が出来るまで、ちゃんとお前の事も見ててやるって」

「でも……」

「それ言ったら美里はどうするんだよ。あいつだって似たようなもんだぞ?な?だから暗い顔すんなって、お前はさ、生意気な口きいてるのが一番お前らしいんだからさ」

「……うん」

 健太は顔を撫でている僕の手を取り、静かに僕の手を口元に持って行った。そしてそのまま、大事なものを持っているかのように僕の手を静かに掴んでいた。

うちの近くに来る頃には健太はそのまますうすうと寝息を立てていた。

「健太、もうすぐ家だぞ」

「え、もうそんなとこなの……?」

「そだよ」

「俺、腹減った……このままどっかで食べてから帰ろうよ」

 確かに少し渋滞にハマったこともあり、結構遅めの時間になっていた。

「よし、じゃぁどっかで食べてくか。健太何が食べたい?」

「明兄ちゃんの食べたいもんでいい」

「それじゃ、ラーメンでも食うか」

「賛成!」

 少しは元気になったのかな?

家の近くのラーメン屋でラーメンを食べた後、健太はそのまま家に帰ると言い出した。

「いいよ、遅いんだし送って行くぞ」

「ううん、これで車に乗ったらまた帰るのが嫌になっちゃうから……」

「本当にいいのか?」

「うん」

 健太は車から荷物を取り出した後、ドア越しに運転席の中に身を入れてくる。

「明兄ちゃん、ありがと。わがまま一杯言ってゴメンよ」

 そう言って、僕の唇に自身の唇を合わせる。

「味噌ラーメン味いただきっ。じゃ、おやすみ師匠!」

 暫く僕と舌を絡めあった後、健太はそう言うと、自分の家の方に走り出した。

「気をつけろよー」

 僕の声に応えるように手を振るが、僕の方を見ることはなかった。

「まったく……」

 僕は、健太の残した坦々麺の辛さを感じながら家へと向かった。



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