僕の中のあいつ 第二部 第二章
 二日後の朝、僕は大量のレポートを持って東雲に移転したIZUMIC新社屋の前に立った。

(でっけ〜!)

 僕が最初に思ったのはただそれだけであった。地上何メートルになるのだろう、海風対策の為か軽くカーブをえがいた高層ビルがそびえ立っている。その威風堂々とした外観を見あげて、思わず僕は足がすくんでしまう。

(こ……こんな所で本当に働いて良いんだろうか?)

 しかし、いつまでもここに立っていても仕方無い、僕は意を決してビルの中へと入っていった。

 ビルの中に入ると適度に効いた空調と、心地よい環境音楽が僕を迎えてくれた。僕は正面にある受付に進み、自分の名前を告げる。

「はい、お伺いしております。少々お待ち下さいませ、只今御案内致しますので」

 そう言って、受付嬢は、どこかに連絡を入れる。しばしの間まっていると別の女性が声をかけて来た。

「えーと、日野さん……かな?」

「はい、そうです」

 僕は、多少緊張しつつ答える。

「そんなにかたくならなくたっていいですよ。さ、会長がお待ちですから行きましょう。こっちよ」

 その女性は、クスリと笑った後、エレベーターホールの方へ歩き始める。僕は遅れないように後をついて行った。

 ホールの奥にある他のエレベーターとは少し感じの違う物の前に行き、彼女はポケットからカードを取り出す。それをスリットに入れるとボタンを操作した。

「さ、どうぞ、これで会長室に直行するわ」

 そうか。これは会長室専用エレベーターだったんだ……豪華って言うか何て言うか……凄いなぁ。

 結構なスピードで上昇するエレベーターのおかげで会長室に着く頃には耳鳴りがしていた。スッと軽い衝撃があり、静かにドアが開くとそこには数人が忙しそうに働いていた、彼女と僕はその横を会釈しながら通過し、会長室のドアの前にたどり着く。

「会長。日野さんがいらっしゃいました」

 彼女はドアをノックしながら、奥に居るであろう重吉翁に話しかける。すると会長室のドアがスゥッと開き、一人の男性が僕を迎え入れてくれた。

「どうぞ、お入りなさい」

「しっ……失礼します!」

 完全に場の雰囲気に呑まれてしまった僕は、ガチガチに固くなっていた。僕はギクシャクと彼の導かれるままに皮張りの豪奢なソファに座った。その位置からは、仕切りがあって会長の姿は見る事が出来ない。僕はドキドキしながら会長が現れるのを待っていた。

「待たせたの、明君」

 そう言いながら、会長が目の前に来る。僕は慌てて立ち上がろうとしたのだが、それを手で制され僕は再びその柔らかいソファに座り込む。会長の後ろには先ほどの男性が何かの書類を持ってそっと控えている。

「どれ、明君。レポートの方は出来たのかね?」

「あ……はい!持ってきました!こちらです!」

 僕は、持っていた鞄から、用意していた日本文、英文両方で書かれたレポートを会長の前に差し出す。

「うむ」

 会長はそのレポートの束を受け取ると後ろの男性に指示を飛ばす。

「これは、儂の机において、英文の方はワシントン支社に送っておいてくれたまえ、原本は儂の方へ返却しておくように」

 男性は、持っていた書類を、会長の前に置くのと引き替えに、僕のレポートを持って行ってしまう。

「あれは後でゆっくりと読ませて貰おう」

 そういって会長は、懐から老眼鏡を取り出し、目の前に広げられた書類に目を通す。

「これはな、君があちらに居た期間の成績表みたいな物でな……」

 そのまま、沈黙してしまう。僕はとてもじゃないけど気が気ではなかった。もう心臓が口から出てしまうんじゃないかって言う位、緊張している。

「日野 明君」

「はい!」

「あっちでは相当頑張った様だな……。あちらでの評判は上々じゃ。よろしい、一応仮ではあるが、来月からここに来て貰おうか……。取りあえず、学校もあるだろうから、研修期間と言う事でな」

 僕はその言葉が信じられなかった。だって……こんなにすんなり決まるなんて……ねぇ……

「あの……いいんですか?」

「……ん?嫌なのかね?」

「いえ、そんなに簡単に決まってしまってと言う事です」

「儂は人を見る目はまだ衰えちゃおらんよ。その儂が良いと言うんじゃよ、文句あるかね?」

「いえ!とんでもありません!どうも有難うございます!」

 僕は会長に深々と頭を下げる。

「うむ、では、来月の1日に、もう一回ここに来なさい。今日はもう帰っていいぞ」

 そう言って、会長は席をたち、戻る時に一回僕を振り返る。

「そうそう、君のその背広な……吊し物じゃろう」

 確かに……就職活動用にと、紳士服専門店で買った物だ。僕はこくんと頷くと会長はさらに言葉を続ける。

「来月迄にバーバリーでも何でもいい、ブランド物の背広を最低3着は仕立てて来なさい」

 え〜!でも僕はそんなお金持って無いぞ!

「……しかし、そんなお金は……」

 僕は少し小さめの声で呟く。

「馬鹿もんが!何の為にお前にカードを渡しとるんじゃい!こういう時の為じゃろうが。あれは君の物だ。自由に使わんかい!」

 あ、そうだ、そう言えば前にプラチナカード貰ったんだっけ、すっかり忘れてた。僕は去って行く会長にもう一度頭を下げ、そして秘書室にいた人たちにも挨拶をして本社ビルを出て行く。

 少し寒いくらいの風が上気した肌に実に心地よく、僕はにやにやしながら歩を進める。周りの人たちは何だ?こいつはと言う様な顔をして通りすぎて行くが僕はうかれてしまってそんな物は気にもとめない。

(やった!天下のIZUMICに入社だ!母ちゃん達喜ぶだろうなぁ。)



 思ったよりも早く用事が済んでしまった為に僕は一旦家に帰る事にした。優は既に学校に行ってしまっている。僕は早速実家に電話をして、事の次第を報告する。母ちゃんは大いに喜んでいたが、最後に釘を刺すのも忘れなかった。

 曰く、泉寺にはお世話になりっぱなしなんだから変な事しないで真面目に働けよ。……と。んなもんは判ってるわい。

(……さてと、どうしようかな……。)

 もうすぐお昼だ。僕は腹が減って来たので食事をしようと思ったのだが……ありゃ?何にも無いや……。キッチンにも冷蔵庫にも食べられる物が何も無かったのだ。どうやら、昨日と今朝の食事であらかたの物を食べ尽くしてしまったらしい。僕は外食がてら、先刻会長に言われたスーツの仕立てに行く事にした。

 駅の立ち食い蕎麦で軽く腹を満たし、僕は銀座へ向かう。しばらく銀座の高級洋服店を見てみるが、やはり自分には敷居が高く感じる。しかし、いつまでも躊躇してては始まらない、僕は意を決して、目の前にある店に入る。

「いらっしゃいませ」

 物静かな口調で店員が応じる。

「あの……スーツを新調したいんですが……」

「左様でございますか。それではこちら等いかがです?学生さんには手ごろなお値段となっておりますが」

 そう言って、つれて行かれたのは、吊しのスーツ売り場だった、それでも、町中の紳士服店の数倍の値段はする。

「いえ、あのですね……実はスーツを仕立てて欲しいんです。3着程……」

 僕がそう言うと、店員は少し表情を曇らす。

「はぁ……ですが、お仕立てで3着となりますと……こちらの数倍のお値段がかかりますよ」

 暗に、お前そんなに金持っているのか?と言っている様な物である。まぁ、確かに僕も悪い、さっき家に帰った時に楽だからといって普段着に着替えてしまっていたのだ。まぁ吊しのスーツで来たところで結果に変わりは無い気もするが……。

「あの、支払いなら大丈夫です」

 僕は、何の気も無しに店員に会長から貰っていたカードを差し出す。そのカードを手に取った店員はカードを持ったまま慌てて店の奥に引っ込んでしまう。僕は一人、店に取り残されてしまう。仕方ないので、店に飾ってある、生地を見て良さそうな物を選んでいた。しばらくして、先ほどの店員と共に店の奥から、ドタバタと随分恰幅の良い男性が現れる。

「あ、私当店のオーナーでございます。今日はスーツの新調と言う事を伺ったのですが。お気に入りの生地は見つかりましたでしょうか?」

 そのオーナーとやらは、卑屈な程の笑みを浮かべている。たかがカード一枚でどうしてこんなに態度が変わるのだろう……。僕は何か気分を害してしまった。

「あ、いいです、カードを返して下さい。別の店を探します」

「何か、この者が失礼な事を致しましたのですか?申し訳ございません。お気分を害さずにぜひとも当店での御注文を宜しくお願い致します」

「いえ、違います、ちょっと気に入った生地が無かったんで。また来ますよ」

 僕は半ばカードを奪い取るような感じで店を出て行く。後ろからはオーナーが店員を怒鳴り付けている声が盛大に聞こえていた。何件か店を廻ってみたのだが……結局、僕は地元にある昔から腕が良いと聞いていた紳士服店で仕立ててもらう事にする。

 寸法を計ってもらっている途中で事の経緯を話していたら、店の主人は笑いながら言った。

「そりゃみんな態度が変わるよ。こんなカードは滅多に見る事が出来ないからね。ましてや3着も頼んだらあの場所じゃ二百万は下らない売上げになるだろう?うちだってお陰さまで丸々一ヶ月一切売上げが無くたって食っていけるからね。その人達を怒っちゃいけないよ」

 そうか、そんなものなのかぁ……

 一週間で作ってみせるよと言う主人に礼を言い、僕は店を出る。もう、日はとっぷりと暮れている。

 家に帰るとまだ優は帰って来ていなかった、それとも実家に帰っちゃったかな?僕は電気をつけ留守電に何かメッセージが無いかをチェックする。あ、二件入っている。

 留守電は二件とも優からの伝言だった。今度の日曜日が大会なので部活で遅くなるって言うものと、今日は実家に帰るからって言う伝言だった。最後にちゃんと好きだよ、お兄ちゃんって入れている所が優らしい。そうか、今日は優は帰って来ないのか。しょうがない、どこかに食べに行こう。でも、一人で食べるのも虚しいんだよなぁ……。

 僕が部屋を出てカギを閉めていると後ろから突然僕の物を握りしめて来た奴がいた。

「なっ!」

 僕が驚いて振り向くと、そこには美幸がにやにやしながら立っている。その後ろには美里が何をしてるんだこいつはって言う様な顔つきで美幸を見ている。

「へへへ〜。なんかさ、顔つきが暗いぜ明兄ぃ」

「もう、いきなり何するのかと思ったら、美幸ってば……ごめんなさい明さん」

 そんなに顔に出てたか?

「いや、今日は優が帰って来ないって言うからさ、これからどこかに飯でも食いに行こうかなって思ってたんだよ。それと美幸、いい加減に手を離せよな」

 そう、美幸は未だに僕の後ろに引っ付いたまま僕のそこを掴んだままだった。

「あぁ、そうですよね。優様は今大会に向けて猛練習してますものね。それでお一人でお食事に行かれるんですか」

「うん、でもやっぱり一人で食事ってのは味気ないなって思うね……。だから離せってーの!」

 僕は、全く手を離す気配の無い美幸から逃げる様に移動する。

「何でよ、別にいいじゃん。誰にも迷惑かけて無いよ」

 僕が迷惑だっつーの。

「じゃ、私達と一緒に御飯食べに行きませんか?私達も今から蘭夢音に食事に行こうって話していたんですよ」

「え?蘭夢音って……もうそろそろ閉まるんじゃ無いのかい?」

 蘭夢音(らむね)ってのは前に僕がバイトしていた喫茶店だ。喫茶店のくせに結構料理の種類があるし美味しいって言う評判で、ISSの御用達になっているらしい。

「ええ、もうそろそろ閉店ですね。でも閉店した後に、マスターがいつも晩御飯食べさせてくれるんですよ。どっちかって言うと、チーフと一緒にお酒を飲むのがマスターの狙いらしいですけどね」

 そう言って、クスクスと笑っている美里。

「へぇ、そうなのかぁ、じゃ、僕も一緒に行くかな、久し振りにマスターの顔も見たいしな」

「よっし!、じゃ、決まりね!そうとなったら早速行こー!明兄ぃ!おいらは腹が減って死にそうなんだよ〜」

 そう言って、スッタカと先に行ってしまう。僕と美里はその後をゆっくりと歩いて行く。



 カロン……

 『CLOSE』の札が下がっている店のドアを開け、僕達三人は蘭夢音の店内へと入って行く。

「おっちゃーん、腹減ったよー。早く飯くれぇ」

 美幸が、入り様に店の奥に向かって喚く。

「やかましっ!全く……それしか脳が無いんか……」

 そう言って、エプロンで手を拭きながら、キッチンの方からマスターが出て来る。あはは、全然変わって無いなぁ、マスター。

 いつもと違う顔ぶれがいるのに気が付いたのか、彼はこちらを見て、破顔する。

「明君じゃ無いか!久し振りだなぁ!そうか、かえって来たんだな?」

「えぇ、お陰さまで無事帰って来れましたよ」

「そうかぁ、やっと帰って来たのかぁ……ま、立ち話もなんだ。座りなさいよ。今、こいつの餌運んで来ちゃうからさ」

「おっちゃん、餌は無いでしょ餌は……」

 美幸が抗議の声をあげる。

「うるせっ、お前みたいな礼儀知らずは餌で十分だ。少しは美里君を見習いなさいよ。第一俺はおっちゃんじゃない、まだお兄さんで通る年だぞ」

「嘘だー。もう40のくせしておっちゃんで十分だー」

「判った、もうお前には飯はやらん、美里君。君にはちゃんと美味しい晩御飯があるからね、安心していいよ」

「あ、ごめん、ごめんなさい。かっこいいお兄様。だから、おいらにも御飯頂戴よー」

 みんなの笑い声が店に響く。



「そうそう、明兄ぃ。今日面接だったんだろ?どうだったのさ?」

 僕は右手の親指を立て前に出す。

「まだ学校を卒業する迄はアルバイト扱いだけどね」

「へぇ、おめでとうございます、明さん」

「そうか、明君も就職が決まっちゃったのか……落ちてたら、こき使ってあげようと思ったのになぁ」

 そう言ってマスターは奥に引っ込んでしまう。酷いな……前にもあの人、僕の落第にかけてたよな……。

 マスターは一本のボトルを奥から持って来て目の前に置く。

「明君の就職祝だよ。とっておいたんだ」

 それは、ドンペリのゴールドだった。一本五、六万円はする奴だと思ったぞ。嬉しいなぁ。僕は早速ドンペリを開け、みんなで乾杯をする。暫くの後、蘭夢音はただの宴会場と化していた。



「じゃぁねぇ、マスター。また来るからねぇ。よし、美里、美幸!もう一軒行こ〜」

「ちょっと、ちょっと!明兄ぃ。大丈夫かよ〜」

「大丈夫だよ〜。ほら、行くぞ〜」

「大丈夫じゃ無いですよ。明さん。ほら一緒に帰りましょうよ」

 僕はすこぶる酔ってしまっていた。僕は二人に引きずられるような感じで自室へ戻る。

「美幸、僕は、明さんを寝かしてくるから、先に部屋へ行って、寝てていいよ」

「……うん、悪いけど、先に寝てるよ。飲み過ぎて眠いや」

 大欠伸をしながら部屋へ引っ込んで行く美幸。

「うんしょっと……明さーん少しは自分で歩いて下さいよぉ」

「あー、ごめんねぇ、美里ぉ。あははは、足にキちゃってさぁ、歩けないよ。いいよぉそこにおいといてぇ。おやすみぃ」

「おやすみぃ。じゃ無いですよ、明さん。……もう、ほらお布団に行きますよ」

 そう言って、美里は僕の事をずーるずーると引っぱって行く。僕は朦朧とした意識の中、何かが足りないなと思う。……そうだ優が出て来ないな。いつもなら飛んで来るのにな……。

「あれぇ?優はどこ行ったんだぁ。おーい優。今帰ったよぉ」

「何言っているんですか、明さん。優様は実家に帰っているんでしょ。もう……忘れちゃったんですか?ほら、ばんざいして下さい」

 美里は器用に僕の服を脱がせながら呆れた口調で話す。僕は両手をあげた格好のままTシャツを脱がせてもらう。

「へぐしっ!」

 少し冷えてしまったのか、僕は盛大なくしゃみをしてしまう。

「あぁ、ほら……。早く着替えないと風邪をひいてしまいますよ」

「うー、優は居ないのかぁ、あいつがいるとあったかいんだよねぇ……。……そーだ、美里。お前今日僕と一緒に寝ろー」

 そう言って、僕は美里を抱え込んで横になる。

「わわっ、ちょっと……明さんてば。離して下さいよー」

「やだー。離したら逃げちゃうつもりだろー。

だから離さないよー」

 僕は、足を絡めて美里の事をがんじがらめにしてしまう。

「判りました!逃げませんてば、逃げませんから、洋服を脱がせて下さい!」

「本当か〜、逃げないな〜、逃げたら嫌いになっちゃうぞ〜」

「本当ですって。だからその足を退かして下さいよー」

 僕が、足を解いてやると、美里は着ていた洋服を脱ぎ、シャツとパンツのみになって、僕の布団に入ってくる。

「これでいいですか、明さん」

「うー、いいよぉ。じゃ、寝ようか」

 僕は寝室の電気を消して、布団に潜り込む。そして、つい……本当についなのだが、いつも優と寝る時にやっている事をしてしまった。美里におやすみのキス(それも結構濃いやつ)をして、抱き締めてしまったのである。

「ちょ……明さん……ン……」

 美里は、ちょっとびっくりしたのか一瞬躊躇した後に、僕の足に自分の足を絡めて来た。

「明さん……。久し振りに、私の事を……」

 そう言って、美里は自分からキスをして来る。美里のそこは、既に大きくなっていて、僕の太股にあたっている。

 しまった……美里に火をつけちゃったなぁ……。しょうがない、元はと言えば僕が悪いんだしなぁ。

 僕は美里のシャツを脱がしてやり(酔っぱらっているので美里が自分で脱いでいる様なものだが……)乳首を転がすようにいじってやる。

「ん……明さん……」

 美里は切なくなったのか、更に僕の太股にあそこを押し付けてくる。僕はそのいきりたった物をパンツの隙間から引き出し、たっぷりと愛撫してやる。

「あっ……い……いいです……あんっ……」

 美里のそこは、既に先走りでヌルヌルしている。僕は布団の中に潜り込み、パンツをずり降ろす。そして、その元気になっている部分を口に含む。

 ちゅぷっ……ちゅっ……

 真っ暗なその空間に淫猥な音がこもる。

「ひっ、明さん……そこ……あぅん……」

 ふと、真っ暗な布団の中に一条の薄明かりが差し込む。

「明さん……、私も明さんの……」

 美里が布団を捲りあげ、僕に向かって手を伸ばす、僕は美里が何を言いたいのかを悟り、体を入れ替え、シックスナインの状態を作ってやる。しかし、派手に酔っていた僕のそこはまだ縮んだままだ。

「……明さんの……ンッ」

 美里は何の躊躇いも無く僕のそれを口に含み、くちゅくちゅと音をたてしゃぶり始める。

 暫くの後、僕のそれはムクムクと元気になってくる。

「あはぁ、やっと元気になってくれましたね……」

 僕もそれを機に、美里のヒクヒクしている窄まりに狙いを変える。自分の中指を少し唾液で濡らし、ゆっくりと美里の窄まりに埋没させて行く。

「あぅ、そこ……いいですぅ……ん……」

 美里のそこはきゅっきゅと、僕の中指を締め付けてくる。僕は、丁寧に美里のそこを揉みほぐしていく。十分に柔らかくなった頃、僕は再び体を入れ替え、そこに、自分の物をあてがう。

「いいかい?いくよ、美里……」

「はい……明さん」

 ぐぬぅ……

 美里のそこはゆっくりと僕の物を飲み込んでいく。

「ん……明さん……また……大きく……なったんじゃ……少し……痛い……」

「大丈夫か?」

「えぇ……大丈夫……明さんのですから」

 いじらしいなぁ……僕は、美里に気を使いながらゆっくりと腰を動かす。

「はぁっ……ん……んっ……」

 少し苦しそうな美里の息遣いに、僕は一度動くのを止める。

「止めないで下さい……私はいいんです。ただ明さんが私を抱いてくれているって言うのが嬉しいんですから……。だから……ね?」

 そう言って、美里はにっこりと笑う。僕は、その苦痛を和らげるべく、最大限の努力をする。ピンと立っている乳首を愛撫してやり、首筋を舐めてやり、執拗な迄の快感を与えてやる。

 そのうち、苦痛が快感の波に押され始め、再び美里の切なげなあえぎ声が洩れ始める。

「ふぅ……ん……いい、いいのぉ……もっと……もっとぉ……」

 僕は美里の柔らかい唇を塞ぎ、その間から、口内に舌を侵入させる。そして、舌を絡めあい、思う存分にお互いの唾液を啜りあう。

「明さん……好き……大好きなんです。だから……もっといっぱい抱き締めて……」

 僕は希望通りに美里の事を思う存分抱き締めてやる。

「うれしい……」

「もう、そろそろ、いきそうだ……」

「わたしも……もう……」

 そして僕は美里の中に大量の精を注ぎ込んだ、それと同時に美里も絶頂に達する。

 至福の表情を浮かべている美里と共に僕は風呂場で汗を流し、再び一緒の布団に潜り込む。美里は、僕の身体に抱きつき、疲れていたのだろう……話をしている間も無くスヤスヤと軽い寝息をたて始める。自分にも墜落する様な猛烈な睡魔が遅いかかり、意識は闇の中に落ちていく。



 目が覚めたのは、一本の電話だった。僕は美里を起こさない様に起き上がり、腕枕をしていた為に思いっきり痺れている腕をさすりながら寝惚けまなこで電話に出る。

「ふぁい、日野ですが……」

『もしもし?明兄ぃ?おいらだよ。あのさぁ、うちの兄ちゃん知らない?おいらが起きたら兄ちゃんいなくてさ。』

「いるよ。うちに泊まってる……まだ寝てるけど起こそうか?」

『て言うか、起こして!学校に遅れちゃうよ!はりあっぷ!』

 やば!そうだ、あいつは学生だったっけ。

「判った!今すぐ起こして、学校行かせるよ!」

 僕は、電話を切ると急いで美里をゆり起こす。

「美里、起きろ!遅刻するぞっ!」

 その言葉に反応した美里は、がばっと跳ね起きる。

 ごきんっ!

 盛大な音をたてて、僕と美里のおでこがぶつかりあう。痛みの為に、もんどりうって転がる僕と美里。涙を流しながら、おはようの挨拶をする。

「……つつ……、おはよう、美里。もう起きないと遅刻するぞ。美幸から、早くしろって電話があったよ」

「……すいませんでした、明さん。もうそんな時間でしたか……。でも、……結構、石頭なんですねぇ……明さん」

 おでこをさすりながら、片手で器用に服を身に着けていく美里。表からは、美幸の元気な声が聞こえてくる。

「おーい兄ちゃん!早くしないとマジに遅刻しちゃうよ!急げ急げ〜」

「はーい、今出るよー。もう少し待っててよー」

 美幸に答えながら、美里は僕の方に向く。

「あの……夕べはありがとうございました……私はこれで失礼します……それで……あの……その……大変あつかましいんですけれど……えーっと……いって……を……」

 美里は、耳まで真っ赤になって俯きながらぼそぼそと喋っている。僕は大体の察しがついたので、少し意地悪する。

「行ってらっしゃい、気をつけてね」

 ただそう言って、美里を送りだそうとする。彼は少ししょんぼりしながら玄関に移動していく。ちょっと冗談がきつかったかな?

「冗談だよ美里」

 そういって僕は、彼の頬を両手で固定して、唇を重ねる。ほわーんとなっている彼を見て、僕はもう少し意地悪をする。最初は軽く唇を重ねていただけだったのだが、美里の唇を舌でこじ開けて、思いっきりハードなディープキスをしてしまう。

「ぅむぅ……」

 ぴちゃ、くちゅと湿った音が玄関に響く。後ろからは美幸がイライラした声で「早くしてよ!」と喚いている。たっぷりとお互いの唾液を啜りあった後、僕は美里をはじめて解放してやる。彼はその途端ヘタッと玄関に座り込んでしまった。

「明さん……。あんまり意地悪しないで下さいよ……学校に行きたくなくなっちゃうじゃ無いですか……」

 美里の目はうるうると潤んでいる、しかし、これで欠席された日には、清水さんになんて言われるか判ったもんじゃない……。

「今日は我慢して、学校に行くの。また、優と一緒に愛してあげるから……。ね?」

「はい、判りました、明さん。じゃ、行って来ます!」

 そう言うと、今度は美里から、軽く唇を合わせて、さっそうと表に出ていく。

「おまたせ!美幸。さぁ、学校に行こう!急がないと遅刻しちゃう!」

 美幸は、ぶーぶー言いながら、走っていく美里の後を追い掛ける。

「気をつけろよ〜」

 僕が声をかけると、二人は一旦振り返り、手を振って答え再び猛ダッシュで駆けていく、だんだん小さくなっていく二人の姿を見ながら僕は暫くの間、朝の清清しい空気を目一杯味わっていた。







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