五感
「ヒカル、あなた随分強くなりましたよ。」

 碁盤の前に座っている佐為がヒカルの目を見ながら真剣に褒める。

「え?そ・そうか?そんなに強くなった?オレ。」

 褒められたのが嬉しいのかヒカルはしきりに照れている。

「えぇ、いつも私と打っているんです。強くならない方がおかしいと言う物ですよ、ヒカル。」

「そっか。オレも早く塔矢に追い付きたいもんな。よし、もう一局やろーぜ。」

「いいですよ、ヒカル。でも、もっと本気を出せばヒカルは絶対強くなれるんです。本気を出させてあげましょうか?」

 佐為が広げた扇子で口元を隠し笑っている。その様子にヒカルはカチンと来る。

「オレはいつだって本気だぜ。」

「本気でも、死にものぐるいにはなって無いでしょう?少し私と賭けをしませんか?」

「賭けってなんだよ。変な事考えんなよ。」

 痛い所を突かれたヒカルは少しふくれながらも佐為の申し出を聞いてみる。

「別に、変な事じゃ有りませんよ。ただ自分で千年ぶりに思いっきり碁が打ちたいだけです。いいでしょ?一日だけだから、ねっヒカル。」

「何だそんな事か、いいぜ。やってやるよ。一日付き合うだけなんだろ?」

 佐為は涙を流しながら喜んでいる。

「じゃ、ヒカル。好きなだけ石を置きなさい。せめてもの情けです。」



「だーっ!投了だよっ、投了!少しは手加減しろよな〜!」

 ヒカルは圧倒的実力差で中押し負けになった碁盤をぐしゃぐしゃにしながら喚く。ちなみにこれで5回連続の中押し負けだしかも、勝負の度に石を置く数を増やしているのにも関わらずだ……。

「もういいでしょう、ヒカル。賭けはあなたの負けです。約束は果たして貰いますよ。」

 佐為の美麗な顔がふっと真面目に引き締まる。その一瞬に垣間見せた妖艶な雰囲気にヒカルはゾクッとする物を感じた。

 いつの間にか背後に廻っていた佐為に少しビビりながらも強がりを見せるヒカル。

「で、どこ行けばいいんだよ。インターネットか?碁会所か?好きな所連れていってやるよ。」

「えぇ、思う存分打たせてもらいますよ、あなたの身体でね。」

「!」

 ヒカルがその言葉に吃驚する暇もなく佐為の身体がヒカルに重なる。ビクッと身体を引き攣らせたヒカルは床に崩れ落ちる。



 数瞬後……

 ぎこちない動きでヒカルは起き上がった。しかし身体の主導権はもうヒカルの物ではなく、佐為に移っていた。

「あぁ……千年振りの身体だ……。なんて素晴しいのでしょう。……懐かしい……この石の重さ……。」

 佐為は感慨深い涙を流しながらそこら中を触っている。

(テメー!なんて事すんだよっ!俺の身体返せよっ!)

 身体を乗っ取られたヒカルが識域下で喚く。

「私はちゃんと言いましたよ。思う存分自分で碁が打ちたいって……ヒカルもちゃんと了承したじゃないですか。」

(こんな事になるなんて思わなかったよっ!)

「まぁいいじゃないですか、ヒカル。ちゃんと明日の夜には返してあげますから……ね?」

(絶対だぞ!絶対返せよ!)

「解ってますよ。ちゃんと返しますから安心して下さい。さ、今日はもう遅いですからもう寝ましょう。」

 そう言って佐為はとっとと電気を消して布団に潜り込む。相変わらずヒカルはブチブチと何か言っているのだが佐為は全く取り合わずに寝てしまう。



 翌朝、すっきりと目覚める事の出来た佐為は、ヒカルの身体に起きた生理現象を感じて、クスクス笑っている。

「ヒカルもやっぱり健康な男の子なんですねぇ。」

(何だよ!何が可笑しいんだよ!)

 ヒカルの下半身はブリーフとパジャマのズボンを持ち上げ、窮屈そうにしている。佐為はその大きくなった部分をブリーフごとずり下げてしげしげと眺める。

(見るなぁ〜!)

「でもやっぱりまだまだ可愛いですねぇヒカルのここは。」

(うるさいっ!)

 もしヒカルの身体が乗っ取られていなければ顔を真っ赤にしていただろう。

「冗談ですよ、ヒカル。本当に可愛いですねぇ、ヒカルは。」

 クスクスと笑いながら、身支度を整え始める佐為。そこに、階下から「朝御飯よぉ」と言う母親からの声が聞こえてくる。

 佐為はとてとてとリビングに行き、これ又千年振りの食事をする、それは佐為にとって感激以外の何者でもない。

 美味しい美味しいと連呼しながらおかわりをしている佐為に向かって事情を何も知らない母は嬉しそうにしている。

「この頃こんなに喜んで食べる事無かったわよね。それに言葉遣いなんかも丁寧になっちゃって……やっぱり囲碁をやると言葉遣いなんかも教えられるの?」

(おい、せめて母さんにはばれない様にしてくれよな。)

(解りましたよ、ヒカル。努力しましょう。)

 御飯をもぐついている佐為はヒカルの口調を真似する。

「そんな訳じゃねーけどさぁ。」

(こんな感じでいいですか?ヒカル。)

(まぁそんなもんだろ。)

「そう……」

「うん、ごちそうさまでした。じゃ、行って来ます。」

 佐為は席を立ち玄関の方に向かう。

「どこ行くの?」

「ん……碁会所。行って来まーす。」

 佐為は足取りも軽く外に出ていく。



「ねぇ、ヒカル。身体があるっていい物ですよねぇ。美味しい物を食べられるし、綺麗な花の香りを楽しむ事も出来る。」

 そう言いながら佐為は、手近に咲いていた薔薇の花に鼻を近付けうっとりとその香りを堪能する。

(別にそんな事考えもしなかったな……)

「それは、その事が当たり前になっているからですよ。」

 そんな事を話ながら佐為はてくてくと歩を進める。そして、ヒカルがよく足を運んでいた囲碁教室の前を通り過ぎてしまう。

(佐為、ここじゃ無いのかよ。)

「ヒカル、私は言ったでしょう?思いきり碁が打ちたいって……ここでは、思いきり打てませんよ。」

(そりゃさ、ここの連中じゃ、話にならないけどさ。一体どこで打つんだよ?)

「本当はね、あの『神の一手に一番近い人』塔矢名人と打ちたかったんです。」

(無理に決まってんだろ!)

「えぇ、それくらいは解っていますよ。だからね、私は塔矢アキラと勝負したいんですよ。だから、あの子がいる碁会所へ行きましょう。」

(あいつが俺と打ってくれるもんか。あいつは俺の事なんかもう頭の中に無いぜ。)

「でも、確実にヒカルは塔矢に近付いていますよ。あの子はそれを見ようとしていないだけ……」

(だったら余計に俺なんかと打たないんじゃ無いのか?)

「確かに、今の塔矢はあなたを見てはいないでしょう……でも、私……佐為の面影は未だに追っている筈です。そこをつけば絶対に相手してくれますよ。」

(そんなに簡単に行くかなぁ……)

「伊達に千年もこの世に居ませんよ。」

(勝手にしてくれよ……)

 そんなやり取りをしているうちに、いつの間にか塔矢の出入りしている碁会所があるビルの正面に到着する。

「さぁ、いよいよですね。」

 佐為は、そのわくわく感を押さえ切れないでいる。一歩……又一歩と階段を上がっていき、碁会所の扉を開ける。

「いらっしゃ……あら?この間の……」

 受付に居た女性がヒカルの姿をみて驚く。

「こんにちは、あの……塔矢君は居ますか?」

「アキラ君?いるわよ。でも、今ちょっと指導している最中だからそこに座って少し待っててね。」

 そう言ってすぐ近くにある椅子に案内してくれる。そして、奥の方から塔矢アキラ本人の声が聞こえてくる。

「市河さん、お客って誰なんですか?教えて下さいよ。」

「見れば解るわよ。お待たせ、連れて来たわ。」

 ヒカルの姿をみた塔矢は少し呆れた表情を出す。

「何だ、進藤か……どうしたんだよ、こんな所にまで来て……。」

「塔矢、わた……俺と一局勝負してくれないか?」

 佐為の申し出を塔矢は全く取り合わない。

「今さら何を言っているんだ?僕とはもう打たないっていったのは君の方だろう?第一もう、君とは打つ気がしないよ。」

 そう言って、ふっと元居た場所へ戻ろうとする。その腕を佐為は咄嗟につかみ塔矢を引き戻そうとする。

(ほら〜やっぱりダメじゃん。あきらめろよ。)

「待って、塔矢。saiの事知りたくないの?」

 言いつのる佐為に、塔矢は一瞬こちらを振り向く、その表情は真剣な眼差しをしていた。

「ちょっと待って、君はsaiの事を知っているのか?」

 今度は塔矢の方がつかみ掛かるような格好になる。

「一局打ってくれたら教える……。」

「解った。打とうじゃないか、その代わりちゃんと教えてくれよ。」

 佐為が頷くと、塔矢は佐為の手を取り奥の方へ連れていく、そして佐為の前に座って石を握る。

「さぁ、始めよう。石は何個置く?」

「互い先でいきましょう。」

 佐為がそう言うと塔矢はマジマジとヒカルの顔を見る。

「進藤、それは……。」

(おいっ塔矢のやつ怪んでるってば!)

(それが狙いだからいいんですよ、ヒカル。)

「さあ、打ちましょう。」



 静寂の中に、ぱちぱちと石を置く音だけが響く。いつの間にか周りにギャラリーが出来ている、しかし、二人はそれさえも、全く気になっていない。

(この……手の進め方……僕には手の届かない所にいる。まさか……やっぱり進藤がsaiなのか……?いや……そんな……まさか……でも……)

 塔矢は自分の考えを無限回廊のようにぐるぐると巡らしている。

(しまった!今の手は……)

 余りにその考えに気を取られていた塔矢は取り返しのつかない簡単なミスをしてしまった。またそれを見のがす程、佐為も甘くない。

「ありません……。」

 結局、その後塔矢の反撃も空しく大差の中押し負けとなってしまった。

「進藤……やっぱり君がsaiなのか?」

「ここではちょっと……どこか二人になれる静かな所はない?」

 佐為は小声で塔矢に耳打ちする。

「それなら、家に来るといい。父さんは昨日から居ないから家でなら邪魔が入らずにゆっくり話が出来るから。」

「じゃ、そこで話すよ。」



「すご……い。」

 佐為は目の前にある純和風の家屋に心底吃驚していた。

「さぁ、ここが僕の家だ、遠慮しないで上がってよ。」

「お邪魔します……。」

(すげーな!こんなでっかい家に住んでたんだ。)

(そうですね、こんなに立派な家に住んでいるなんて…….)

 塔矢の自室に案内された佐為はきょろきょろと辺りを見回す。そして、その部屋の隅にはパソコンが置いてあった。

(ヒカルッ、ぱそこんって言うやつですよね、あれ……!)

(前に対局した時は、あれでやったんだろうな〜)

「おまたせ。」

 塔矢がよく冷えたジュースを持って入って来た。そして佐為の目の前に置くなり詰め寄ってくる。

「進藤、君は本当にsaiなのか?早く教えてくれ!」

「待って、待って下さいよ。ちゃんと話します。」

「それだ、その言葉遣い、進藤はそんな言葉遣いはしない!君は一体誰なんだ!」

「信じてくれるかどうかは、解りませんけれどね。私の名前は藤原佐為……ヒカルの中にいます。本因坊秀策の名を名乗っていた事もあります。」

(おい、そんな事言っちゃっていいのかよ!)

「……」

 塔矢は余りに現実離れしている、その告白をどう受け止めていいのか解らない。

「まぁ、普通はそうでしょうね……」

「……本因坊って……あの本因坊秀策ですか?江戸時代の?」

 自然と言葉遣いが丁寧になっている。

「そうです、彼も私が手ほどきをしたんですよ。今のヒカルにしている様にね。」

「なぜ……なぜ進藤なんですか?何故僕じゃないんですか?」

 塔矢はそれを事実として受け止めているが、納得が行かず佐為にさらに詰め寄る。

「簡単です。ヒカルは私を認め、受け入れてくれた。」

(受け入れたつもりねーよ!)

(そんな事言わないで下さいよ〜ヒカル〜。)

 ヒカルの突っ込みに思わず泣き声になる佐為。

「私はあなたと何度も会っています、でも私の事は見えていなかったでしょう?」

 その事実を認め、俯きながら眼をそらす塔矢。

「でもね、塔矢。私は今日一日だけ、ヒカルに身体を借りました。あなたにもヒカルにも、もっと強くなって欲しいから。そしていつか、神の一手を見せて欲しいから。ヒカルも、塔矢、あなたに近付く為に、努力しています。」

「進藤が……」

「えぇ、私と出会った時には囲碁のいの字も知らなかった子がですよ。あの子には素質があります。私はそれを伸ばしてあげたい。」

「あの……藤原……さんでいいんですよね……。」

「佐為でいいですよ、塔矢。」

「あの……僕ともう一度対局してくれませんか。」

「いいですよ。ちゃんと手ほどきしてあげましょう。」

「ありがとうございます。」

 塔矢は佐為に向かって頭を下げる。しかし、いまいち決まっていないのは、やはりヒカルの身体を借りている所為なのだろうか。



「いいですか、塔矢。あなたは、先程私が打った手に対して、こう打ちましたよね。確かにいい手ですが、こう打った方が後の展開が楽になるんですよ。」

 佐為は、塔矢の後ろから指導をしている。そして、佐為が碁盤に指をさす毎に塔矢の髪の毛からふわっといい匂いが香る。

(ヒカル。塔矢は可愛いですね。)

(可愛いかぁ?俺はそんなふうに思った事無いぞ?)

(そうですか?充分魅力的ですよ、塔矢は。)

(魅力的って……)

 ヒカルは佐為のその言い方に少し違和感を感じた。

(そう、思わず抱き締めたくなる程に魅力的です。平安の頃にもこれほどの子は居なかった。)

 佐為の口調が何故かうっとりとしている。

(佐為!抱き締めるってなんだよ!お前、俺の身体使って変な事すんなよな!)

(変な事なんかしませんよ、私の時代衆道はごく一般的な事でしたから。)

(……あの、衆道って何?)

 ヒカルは、その聞き慣れない言葉を佐為に問う。

(知りたいですか?)

 含み笑いをしている佐為にいやな予感を覚えるヒカル。

(あまり知りたくないような気も…….)

(それなら黙って見ている事ですね。)



「塔矢、あなたの髪の毛はいい香りがしますね。それにこの漆黒の艶のある綺麗な髪……羨ましい。」

 佐為は塔矢の耳許で囁きながら塔矢の髪をすきながら、ふぅっと塔矢の耳に息を吹きかける。

「な、なにをするんですか。」

 塔矢は身を捩り逃げようとするが、軽いとは言え、ヒカルの上体がのしかかっている為にうまく逃げられない。

「ゾクッとしたでしょう……。」

 今度は耳朶に軽く歯を当てる。

「……や、やめて……。」

「いいえ、止めません。塔矢、これは貴方の為でもあるのです。」

 佐為のその言葉が塔矢には今一良く理解出来ない。

「私の為?あっ……」

 佐為は塔矢の服の上から乳首を探り当て中指で刺激している。

「そうですよ、貴方は多少頭が堅すぎます。真面目すぎるんですよ。少し発想を柔軟にしないとこれからヒカルに追い付かれてしまいますよ。」

 佐為は言葉巧みに塔矢の事を追い詰めていく。

「私に全て任せて身を委ねなさい。決して悪い様にはしませんから。」

 佐為は塔矢の耳やうなじを舐めあげながら塔矢の服の中に手を滑り込ませ乳首を直に刺激し始める。塔矢のその部分は既につんとたっていた。



(おい!佐為ってば!もしかして衆道って……)

(えぇ、男色の事ですよ。それがどうかしました?)

(俺はホモじゃねー!)

(あれ、結構ヒカルも頭堅いんですねぇ。仕方がありません。少し貴方にも感覚をお返ししますよ。その身を持って、この素晴しさを感じなさい。)

 その瞬間、微かだがヒカルにも塔矢の髪の香りや乳首の感触が、そして自分のまだ幼い部分がはっきりと大きくなっているのが感じられる。しかし、身体の主導権は相変わらず佐為が握っている。



「本当に、こんな事をして強くなれるんですか?」

 塔矢の不安ももっともな話だが、佐為は刺激を続けながら応える。

「それは貴方次第ですよ、塔矢。私はただきっかけを作るだけ……後は貴方次第ですからね。さぁ、服をお脱ぎなさい。さらなる快感を教えてあげましょう。」

 その言葉に、塔矢は身を硬くして黙っている。確かに、今迄つちかって来た常識が崩れつつある今、それが一番の対処法なのだろう。

「どうしました?こういう事は初めてなのですか?」

「!」

 そう言いながら、佐為は塔矢の胸元をはだけさせ、そして塔矢の股間に手を伸ばす。その感触に塔矢は更に身を硬くする。

(おい!そんな所触るなよ!きたねーな!)

(おや、ヒカルはここを弄った事無いんですか?気持ち良いんですよ。)

(そんなの知らねーよ!)

 確かにヒカルにも自慰の経験は無かった。中学に入り、保健の授業で自慰行為の話は出ていたが、その頃既に佐為が常に傍らに居た為、恥ずかしさと罪悪感の為にそう言う行為をする事が出来無かったのだ。

 また、塔矢にもその経験が殆どない。囲碁の修行の邪魔になりそうな物は極力排除し、常に禁欲的に生活して来た。それがより一層囲碁の腕をあげる為だと思ってきたからだ。それが今、saiなる人物に否定されている。

 そして……佐為の手による微妙な刺激によって、塔矢の若いモノが徐々に大きくなって来た。

「感じて来たんですね、塔矢。さぁ、もう一度言いますよ。全て服を脱ぎなさい。その状態では股間が窮屈で痛いでしょう。」

 確かに塔矢の股間は充分すぎる程に大きくなりズボンを膨らませている。塔矢はズキズキと脈打つそれを気にしながらノロノロと衣服を脱ぎ始める。

 立ち上がり、上体だけ裸になった塔矢の身体は、非常に美しかった。あまり外に出て遊ばない為に真っ白な肌、それなのに張りのある均整のとれた引き締まった胸元……。

 それを見て思わず佐為は溜息を漏らす。

「綺麗ですよ、塔矢。」

 佐為は塔矢の胸の敏感な突起を一つ口に含むと舌でコロコロと転がし始める。塔矢は初めて他人に乳首を吸われ、思わず声をあげてしまった。その甘美な刺激に塔矢は次第にとろんとした目つきをしてくる。そして佐為は窮屈そうになっているズボンに手をかけ脱がしてしまう。

 塔矢がはいている純白のブリーフはテントの様に盛り上がり、その先端は透明な粘りによって少し透け始めている。

「こんなになってしまって……。もうベトベトですね、ほら。」

 そう言って佐為は、ブリーフの中に手を差し込み塔矢の大きくなっている物の先端からしみ出しているその液体を掬い取り、塔矢の目の前に差し出す。塔矢は恥ずかしさで耳迄真っ赤になっている。

「美味しいですよ、塔矢。」

 佐為は、指について糸を引いているその先走りを舐め取る。そして再びブリーフの中に手を差し込みゆっくりと塔矢の物をしごき始める。

「あっ、そんな……。」

 乳首と陰茎、それに耳朶と、佐為は生きていた時の手管をフルに使って塔矢を快楽の坩堝へ引き込んでいく。



(なんかさ、塔矢がすっげー色っぽい声出してんだけど……。)

(それはそうでしょう。この私が攻めているんですからね。塔矢は凄い快感を味わっている筈ですよ、ヒカル。)

(そんなに気持ちいいのかよ、ちんちん弄られるのって。)

(ヒカルにもすぐに解りますよ。)



「あぁっ、でちゃうっ。」

 それほど時を待たず、塔矢は佐為の手によって精を放ってしまう。

 ヒカルの手と下着をべっとりと汚してしまった塔矢はハァハァと荒い息をついている。

 佐為は、ヒカルの手にねっとりと絡み付く塔矢が放った物を口元に持って行き、その舌で嘗め取る。

「ふふふ、塔矢は大分溜まっていたのですね。これほど濃いとは思いませんでしたよ。」

 塔矢は恥ずかしさと他人の手による初めての快楽に何も言えずに俯いている。



(どうです?美味しいでしょう)

(まずい……なんか……タンを飲んでるみたいだ……。)

(そんな不粋な……)

(不粋だろーが、下水だろーがマズイもんはマズイッ!)

(慣れれば美味しいんですよ。)

(慣れたくねぇっ!)

(ま、この後の快楽を知ってしまえば、ヒカルにも判りますよ。)



「塔矢の下着も汚れてしまいましたね。冷たいでしょう、さぁお脱ぎなさい。綺麗にしてあげますから。」

 佐為はそう言いつつ前に回り込むとスルンとブリーフを下にずり下げてしまう。塔矢のそこはまだ完全に先端が露出しておらず、ほんの一部のピンクの部分のみが顔を出している。

「大人びているけれどここはまだ子供ですね。」

 佐為は塔矢の先端を軽く摘み、先端からたれている雫を使って最も敏感な部分を指で擦り付ける。まだ精を放ったばかりで過剰な迄に敏感になっている所へそんな事をされた塔矢は思わず腰を引いてしまう。

「やだっ、やめてください。」

 佐為は片手を腰にまわし、それ以上腰を引けない様にする。そして塔矢自身が放った精によってまだ濡れている部分を何の躊躇いもなく口に含んだ。

「あっ、やめ……そんな所舐めないでっ。」

 佐為はわざと大きな音を出す様に塔矢のそこを吸いながら両手を背後にまわし、塔矢の双丘を柔らかく揉み始めた。

 塔矢の若いその部分は佐為の舌戲によって再び頭をもたげ始めている。

「塔矢、少し足を広げて。」

 既に頭の中がぼぉっとしている塔矢は、佐為が一旦口を離して放ったその言葉に従順に従う。

 佐為は双丘の狭間にある窄まりを探り当てその周りを丹念に愛撫しながら、再び塔矢の屹立を口に含む。

「ん……はぁ……」

 塔矢が荒い息遣いを初めて間もなく、ヒカルの肩に塔矢の両手が重くのしかかる。見ると塔矢の膝はガクガクと揺れている。どうやら余りの快感故に膝に力が入らない様だ。

「立っていられないのですね。いいでしょう、この場にお座りなさい。」

 崩れる様にへたり込む塔矢を尻目に、佐為は塔矢の唇を塞ぐ。



(あーっ!男とキスしたー!テメー佐為っ!オレのファーストキスをどうしてくれんだよっ!)

(別にいいじゃないですか、減る物じゃないんだから。)

 どうやらヒカルは男のモノを含んだ事よりもキスした事の方が重大だったらしい。ワイワイと文句を言っているヒカルを無視して佐為は塔矢の愛撫に専念する。



 塔矢は既に佐為の言いなりになって足を大きく開き、窄まりへの刺激を黙って受けている。

「塔矢、少し濡らして。」

 そう言ってヒカルの指をしゃぶらせる。唾液で充分に濡れた指を佐為は塔矢の窄まりにあてがい、ゆっくりと侵入させる。

「あ……や……くぅ……ん……」

 塔矢のそこは少しの抵抗をした後にヒカルの指を根元迄飲み込む。佐為はゆっくりと指を出し入れしながら時折塔矢の屹立を裏から攻める。それが丁度前立腺を攻める事になり塔矢は新たな快感に身を震わせる。

「そこっ……あ……ひっ、やだっ……変になるっ。」

 髪を振り乱しながら悶える塔矢。

「いいでしょう?もっと気持ち良くなりたいですか?」

 息も絶え絶えになりながら、必死で頷く塔矢。佐為は身体を巧みに入れ替えながらヒカルの屹立を塔矢の眼前に持って行く。

「それならば、ヒカルのを舐めて充分に濡らして下さい。」

 塔矢はまだ完全に包皮に包まれている、ヒカルの屹立を舌を伸ばして舐め始める。それを確認した佐為は少しづつ腰を塔矢の顏へ近付けると、塔矢も先程迄自分がされていた様に自らヒカルのそれを口に含んだ。



(わっわっ、なにこれ。こんなの初めてだよ、佐為っ。)

(気持ち良いでしょう、ヒカル。塔矢はまだまだですけれどね、それでも貴方には充分すぎる程気持ち良いんじゃないですか?)

(うん、すっげー気持ちいい。ぞくぞくするよ。)

(まだこんな物じゃないんですよ。塔矢の中はもっと気持ち良いと思いますよ。)

(へぇっ、なんか楽しみだな。)



 クチュクチュと音をたてながらヒカルのモノをしゃぶっている塔矢の窄まりを攻め立てながら、佐為は塔矢の屹立を口に含む。

「あっ、やだっ……でちゃうっ。」

 塔矢は、前後の刺激によって限界に達してしまい、ヒカルの口の中に勢い良く精を放ってしまう。佐為はそれを飲み込まずに口の中に留めている。そして手の平にヒカルの唾液と混じりあった塔矢の精を吐き出し、充分にいきり立ったヒカルのそれに塗付ける。

「さぁ塔矢いいですか、力を抜いて下さい。」

 佐為は残りを塔矢の窄まりに塗り、ヒカルの先端をそこにあてがう。

 ぐっ……

 佐為が腰を前に突き出すとちょっとした恐怖の為か塔矢は腰を引いてしまう。その為になかなか塔矢の中に挿入出来ない。佐為は塔矢の腰を手で固定し半ば強引にヒカルのそれを挿入する。

 ぐりっ……

「いっ……痛っ」

 指よりは太いヒカルの屹立を挿入された塔矢は痛みに涙を流す。その様子を見た佐為は塔矢の頬をつたう雫を舐めながら優しく言葉をかける。

「痛かったのですね、ヒカルのは少し小さかったので大丈夫だと思ったのですが……」



(ばかやろー!でっかいお世話だっ!)

(あ・あははは、聞こえてしまいましたか。別にヒカルのは小さくないですよ、ただ塔矢を安心させる為の方便ですよ。)

(うそつけっ!どーせオレのは小さいんだ……)

(あぁっ、ごめんなさい、ごめんなさいっ。気を悪くしないでっ。)

(ふん、勝手にしてろよなっ。)



「……なにか?」

 今迄自信満々だった表情が急に狼狽えた様になって、動きを止めてしまった佐為をいぶかしみ塔矢は口を開く。

「いえ、今の言葉でヒカルの機嫌を損ねてしまいました……。」

「今の……」

 塔矢は少し間を置きヒカルの首に手を廻し耳許に口を寄せる。

「進藤、聞こえているんだろう?君のは決して小さくなんかない。元に僕は君のが入って来た時に痛くて涙が出てしまったんだから。だから機嫌を直してくれ。」



(ほら、塔矢もこう言っているんですから、拗ねないで下さいよ。)

(わかったよ!)



「ありがとう、塔矢。少し機嫌が治った様です。さぁ動きますよ、なるべく痛くない様にしますから。」

 佐為は細心の注意を払いゆっくりと腰を動かし始める。そして未だに首に手を廻している塔矢の唇を奪い、舌を塔矢の口内に侵入させる。

「んっ……むぅ……」

 塔矢も自分の口内で動き回るヒカルの温かい舌におずおずと自分の舌を絡める。

 はぁはぁと二人の荒い息遣いのみが空間に響く。

「塔矢……塔矢の中凄く気持ち良いですよ。凄く締まって……痛い位です。」



(どうです?ヒカル。初めての男の子の中は、凄く気持ち良いでしょう。)

(あぁ、すっげーよ。さっき塔矢に舐めてもらったのよりも何倍も気持ちいいよ。なんか、ちんちんに電気が流れてるみたいで……おしっこが洩れちゃいそうだよ。)



「ヒカルも凄く気持ちいいって言ってますよ。」

 佐為は塔矢のモノをやわやわと揉みながら囁く。塔矢のそこは何度も精を放っているのにも関わらずヒクヒクと脈打ち、先端からは歓喜の雫が溢れ出ている。

「塔矢……もう限界です。中に……」

 そう言って佐為は腰の動きを速め、それに伴って塔矢の屹立を激しく攻める。

「あぁっ……僕も、僕もまた出ちゃうっ。」

(すげっ!きもちいいっ)

 三者三様の叫びをあげながら、ほぼ同時に絶頂に達する。



 暫くの間、折り重なる様に畳の上に崩れていた二人はお互いの顔を見つめ、口付けを躱す。

「塔矢……貴方の中……最高でした。」

 佐為は塔矢の髪を梳りながら塔矢の顏を腕にかき抱く。

「本当に?」

 塔矢もそれが満更でもない様でヒカルの身体に身を寄せている。

「えぇ、ヒカルさえ許すなら、また貴方の事を抱きたい位ですよ。でもあまりヒカルの身体に負担をかけるのも……。」

「もう会えないのですか?」

 塔矢は少し寂しそうな表情を作り、佐為の事を見つめる。

「ヒカルさえ許してくれるのであれば、会えますよ。それに、私は常にヒカルの側にいますから。」

 佐為は出来るだけ明るい顔をして塔矢の頬に唇を寄せた。

「進藤、聞こえるか?」

 塔矢の呼び掛けに対して佐為は静かに首を振る。

「今、ヒカルは完全に引っ込んじゃってますよ。かなり負担がかかっているんでしょう。そろそろヒカルに身体を返さないといけないでしょうね。」

「……そう。」

「そんなに悲しそうな顔をしないで、塔矢。またいつか会える日がありますよ。」

「……」

「さぁ、いつまでもこうしている訳にも行かないでしょう。身体を浄めないと、汗とお互いの精で凄い事になっていますよ。」

「そうですね。」

 二人は浴室で身体をお互いの身体を洗い、服を着る。そして少しの間取留めの無い話をする。

「そろそろ、家に帰らないと……ヒカルのお母様に怒られてしまいます。」

 塔矢は玄関で帰り支度をしている佐為に抱きつく。

「僕からも進藤にお願いするから……また一局打って下さい。出来ればその後……。」

 塔矢は佐為と唇をあわせ、暫く濃厚なキスをする。

「私からも、お願いしておきますよ。」

 佐為は塔矢を抱き寄せて囁く。そして、名残惜しそうにしている塔矢を尻目に佐為は家路についた。



「だーっ!投了だっての!」

 ヒカルは碁石を盛大にばらまき寝っ転がる。

(そんな事言われても……ねぇ、ヒカルこの間の事なんですけれど……まだ怒ってます?)

「怒ってるに決まってるだろっ!オレは塔矢とセックスするなんて聞いてなかったんだからな!」

(あぁっ、やっぱり……)

「でも……気持ち良かったから許してやるよ。今度はちゃんと話してからにしろよな。」

 そう言ってヒカルは、顔を赤くしながら、そっぽを向いた。

(はい、はい!やっぱりヒカルは優しいですね。大好きです!)

 佐為はニコニコしながら頷いていた。

inserted by FC2 system