僕の中のあいつ番外編 秘め事

 優は今、一人ぼっちで飼育小屋のウサギを見ていた。周りに人は居ない。優は小学校に入って暫くした時から、ここのウサギ達が唯一の友達となった。

 小学校に入った頃は一杯友達がいた。しかし徐々に一人、又一人と友人と呼べる者が減っていった。別に優の性格が問題だとかではない。すべては周りの環境が問題であった。

 優の家は日本、いや世界を牛耳る事が出来る程の大企業を経営している。その為、幼い頃から直属のボディーガードが優の周りに潜んでいた。本当に小さい頃は、親や、周りの思惑など気にせずに友達が遊びに来ていた。しかし、成長して行動半径が大きくなっていく度に、ボディーガード達が鼻につく様になった。そして、相手の親や教師達の気遣いがさらに拍車をかけていった。

 泉寺の子に怪我をさせたら大変だ、優君にあまり変な事を教えてはダメ……。

 そんな大人達の説教が、純真な子供達には耐えられなかった。そして友達が居なくなる。それまでは実にいい笑顔で笑っていた優は滅多に笑わない子供になっていった。そして、そんな大人の都合に振り回されない動物達が唯一無二の親友達に変わっていった。

 優は休み時間の度に飼育小屋に入り浸る様になっていく。そんな優をクラスメイト達は更に敬遠していく。

 あいつは愛想が悪い、皆と一緒に遊ばない、口を聞かない、等々……元はと言えば自分達から敬遠していった筈なのに……優は皆と一緒に遊びたいのに……それが悪循環となって余計に状況を悪くする。

 そして優は一見皆と仲が良い様にしている。しかし実際は皆、優の家、泉寺家の力を恐れている親達からの強要だ。優はそれが痛い程に理解している。だから優は自分から距離を置く事を選んだ。そうすれば、皆は自分に気を使わなくてもいい。傷付くのは自分だけで十分だ。そんな諦めで優の心の中は一杯だった。

 今もウサギ達に、自分で用意した人参を金網越しに与えながら、答えの帰ってくる筈の無い問いかけをウサギ相手にしていた。

「何かさ、もう何もかも嫌になって来ちゃった……又昔みたいに誰かボクと遊んでくれる人いないのかなぁ……」

 ウサギはポリポリと人参を齧るのに夢中だ。しかしそれでも優は構わない、彼等は自分の事を裏切らないから……。別の一羽が自分にも人参をくれとばかりに優の所へ来て後ろ足で立ち上がる。その仕種に微笑みながら優は人参を与える。

「あーあ、ボクも君達みたいになりたいな……。そうすれば、何にも考えなくっていいんだろうなぁ……」

 優はいつの間にか涙を零していた。

「……もぉ……友達がいないなんて嫌だよ……寂しいよぉ……」

 優は膝を抱え込み、ヒックヒックと泣いている。ウサギ達はその様子を首を傾げて眺めている。

 どの位泣いたのであろう……。優は人の気配を感じて思わず隠れてしまう。自分でも何故隠れてしまったのか判らない、おそらく泣いていた所を見られたくなかったのだろう。

 飼育小屋の金網越しに様子を伺っていると二人の人陰が確認できた。

「ここ、ここ。ここだったら誰も来ないよ。祐介、早く早く!」

 一人が手を挙げてもう一人を手招きしている。祐介と呼ばれた子は辺りの様子を伺いながらもう一人の方へ寄っていく。

「でもさ、光ちゃん。ここってカギがかかってるよ。入れないじゃん。どうすんの?」

「大丈夫だよ、この間この横の壁に穴があったの見つけたんだ。板で隠してあるからまだ見つかってない筈だよ。……ほら、まだ修理されてないよ、ここから入れるんだ」

「あ、本当だ。でも学校でするなんて初めてだからどきどきしちゃうな」

「俺も、俺も!」

 ガサゴソと音がして、話声は聞こえなくなっていった。それを確認した後、優は飼育小屋の影からでてくる。どうやら二人は、飼育小屋の隣に建っている屋外用の体育倉庫に入っていったらしい。

(いったい何をするんだろう……)

 優は好奇心旺盛な本来の性格で、その二人の様子が凄く気になってきていた。

 優は注意深く、二人が入っていった倉庫の横穴に近付く。そして、意を決してその穴から中の様子を見ようと少しだけ覗き込んでみた。

 そこには、緑色の壁が立ち塞がっている。どうやら、高飛び用のマットが立て掛けてあるらしい。そこから中の様子は見えないが、二人の会話は聞こえてくる。

「祐介……俺、もう我慢出来ないよ……」

「本当だ……光ちゃんのすっごく硬くなってる……」

(何しているんだろ? )

 優は、その会話の内容が理解出来ず、何をしているのか見てみたいと言う衝動に駆られる。そして、横穴から細心の注意を払い倉庫への侵入を試みる。

 幸いな事にマットの他にも色々と積み重なっているので見つかる心配は無い様だ。そして、優は遂に二人の姿を覗き見る事ができる絶好の位置を見つけた。あちらからはベニヤ板が邪魔をして見つかる心配は無い。優はその二人が何をしているのかを観察する。そしてその始めて見る光景にひどく困惑した。

(え? え? 何やってるの? 二人とも裸だよ? )

 二人は床に立て膝をつき、お互いを見つめあってキスをしてしている最中だった。そのキスシーンは暫くの間続く。優は凍り付いたように動かない……いや動けなくなっていた。二人の長い口付けが終わると一人がもう一人の股間に手を伸ばす。

「んっ……光ちゃんてば、せっかちなんだから……」

 光ちゃんと呼ばれた、股間に手を伸ばしている方の生徒に優は見覚えがあった。確か、運動会になると必ずと言っていい程良い成績を残している、ヒーロー的な存在の生徒だ。ミルクコーヒーの様に日焼けした身体に、まるっきり日焼けしていないお尻の白さが非常によく目立つ。

 祐介と呼ばれた方の生徒には見覚えが無いが、光ちゃんの腕白っぽい顔つきとは全く違う、線の細い身体つきとお坊っちゃん然とした顔をしている。彼は全く日焼けしていなく、それが薄暗い室内にぼぉっと浮き上がっている。

「だってさ……俺……祐介とキスしてたらたまんなくなっちゃってさ……な? いいだろ?」

「うん……いいよ……光ちゃんのも、おっきくなってるんだね」

 二人はお互いの股間に手を伸ばし、小さいながらも立派に天をむいている、その屹立を刺激し始める。

 んっ……はぁ……んんっ……きもっ……いい……

 二人のあえぎ声が倉庫の中に静かに響く。

(あの人たちおちんちんなんていじっちゃっているけど……気持ちいいのかな? )

 優はその行為をつぶさに観察している。

 二人はお互いの屹立を刺激しながら、再び唇をあわせる。しかし、二人もまだ子供だ。キス自体は軽く唇をあわせているだけに過ぎない。それでも十分に刺激的な事なのだろう。徐々に二人の息遣いが荒くなってくる。

 不意に、祐介がしゃがみ込み、光の股間に顔を埋める。

「光ちゃん……この間お父さんの部屋でHな本を見つけたんだ。その本にね、女の人がねちんちんをなめてる写真がのってたんだ。

気持ちいいのかな? 光ちゃんにやってあげるよ」

「ええっ? ちんちんなめるの? 汚いよやめろよ」

「平気、光ちゃんのだったら汚く無いよ」

 そう言って、祐介は光の屹立を口に含む。

「うわ……祐介ぇ……なんか、すっごくあったかくって……ぬるぬるしてて,気持ちいい!」

「ふぉんふぉ?」

 祐介が光のものを口に含んだまま聞く。

「うん、すっげえきもちいい……ダメだ、もう白いの出ちゃうよ」

「ええ、もう出ちゃうの?」

 祐介が驚いて口を離した瞬間、祐介の顔にぴゅるっと光の精液が放たれる。

(何だろう、あれ? おしっこじゃないみたいだ、なんかネバネバしてる……。それにどうしちゃったんだろ……ボクのちんちんまで大きくなってきちゃった……)

 優のその部分は確かに大きくなっていた。しかし、優はその諌め方を全く知らない。ひくひくと脈打つその部分を持て余しながらも目の前で繰り広げられているその痴態から目を離せないでいた。

「もう、ひどいや……、光ちゃん……」

 顔面にべっとりついた精液を拭いながら光に文句を言う祐介、しかしその表情は笑っている。

「ごめんよ、祐介……」

「ううん、いいよ。光ちゃん白いのいっぱいだしたね。気持ちよかったんだ」

「うん、すっごく気持ちよかった、なんかびりびりって電気が走ったみたいだったよ」

「そう、よかった……。じゃ、いつものしようよ、ちょうど光ちゃんが出したヌルヌルもあるし……。まだ光ちゃんのもおっきいままみたいだし」

「うん、そうしようぜ」

 二人はお互いに向き合って床に腰を降ろす。そして、足を絡ませて、屹立同士を密着するように座る位置を調整する。光が大きく足を開き、その間に祐介が光の身体を足で挟み込む様になった。そして祐介が手の平に集めていた精液を二人の屹立に垂らし、二人の手で密着した二本の屹立を包み込む。

「あは、光ちゃんのちんちん温かい……」

「祐介のだって……」

 二人は、ゆっくりと手を上下させる。

「うふん……光ちゃんのヌルヌルが気持ちいいよぉ」

 優はその様子に思わず自分のはいていた半ズボンを脱ぎ始める。立て膝の為に、その半ズボンは膝の辺りで止まる。そしておもむろに白いブリーフも下にずらす。そこには生まれて初めて見た他人の痴態に興奮して勃起してしまった可愛い屹立があった。

(多分こうやってるんだよね……)

 優は目の前の二人がやっているように手で股間を包み込み前後に動かし始める。その初めての刺激に思わず優は身じろぎをする。

 カタッ……

 その時どうやらどこかに身体が触れてしまったらしい。優はびっくりして身体が硬直してしまう。

「……誰かいるの?」

 祐介が不安げな声を出して優が隠れている方を見つめる。

(神様どうか見つかりませんように……! )

 優はぎゅっと目を閉じ、身体を縮こませた。

「どうしたんだよ、祐介……」

 祐介の突然の発言に戸惑っている光。

「……うん……今何かそこら辺で物音がしたような気がしたんだ」

「そんなのお前の気のせいだよ。誰かいたらカギが開いてる筈だし、あそこの穴は、今の所、俺しか知らないんだから……」

「そっか、そうだよね。ボクが気にし過ぎちゃったんだね」

「そうそう、とっとと出しちゃって帰ろうぜ。昨日新しいゲーム買ったんだ。祐介、一緒にやろうぜ」

「うん」

 そういって二人は再びお互いのモノを擦り付け始める。

(早くここから逃げなくちゃ……)

 下半身を露にしていた優は、細心の注意を払い、下着とズボンを身につける。

 その間に二人は高まりつつあった。

「……うん……光ちゃん……好き……」

「俺も祐介の事……」

 優はもうその二人の会話は耳に入って来ていない、ここから見つからずに逃げる事。それが今の優の最重要事項だった。

『ああああっ』

 どうやら二人は絶頂を迎えたらしい。二人は身体を仰け反らせ精液を吹き出す。そして、祐介が光の身体に自分の身体を預けて余韻に浸っている頃、優はなんとか倉庫の外に抜け出す事に成功した。

「あぁ、びっくりした……。早く帰ろう」

 既に外は、日が傾いている。優は表玄関の前で待機しているであろう迎えの車に向かって歩いていく。

「でも……気持ちよさそうだったな……」

「あぶないっ!」

 どんっ……

 うつむいて歩いていた優は思いっきり何かにぶつかり、尻餅をついてしまう。

「あっ、ごめんねぇ」

 驚いて、前を見ると一人の少年がいた。

「もうっ! 美幸ってば……よそ見して走り出すからそうやって人に迷惑をかけるんだよっ。ごめんね、怪我はない? 大丈夫だった?」

 髪の長い少年が、優の手を取って立たせ、お尻についた土をパンパンと払ってくれる。

「うん……大丈夫……」

「そう……よかった。ほら! 美幸も、もう一回あやまんなよ!」

「ごめんね。いたくなかった? 明日からここの学校に通うもんだから兄ちゃんはしゃいじゃってさ。本当にごめんね」

「美幸っ! はしゃいでたのはどっちだよっ!」

 兄と呼ばれた方が顔を真っ赤にして美幸を追い掛けていく。美幸はへらへらと笑いながら軽やかに逃げている。

「じゃぁねぇ、また顔があったら遊ぼうねぇ」

「うん、さよなら」

 優はその二人の滑稽さに軽く笑みを浮かべて、別れを告げる。

「あんな人が友達だったらいいのになぁ」

 優は、表に待機していた車に乗り込み、家路についた。

 次の日、登校した優は、玄関を入り下駄箱に靴をしまった途端、視界を塞がれる。

「だ〜れだっ」

 その声には聞き覚えがあった。昨日帰りにあった転校生の兄弟の片割れだ。

「昨日の人ですか?」

「ぷぃんぷぉ〜ん」

 視界がクリアになり後ろを振り向いた優の視界には……下駄箱があった。

(あれ???)

「馬鹿やってるんじゃないよ、美幸」

 横から現れた兄の方が優の下に隠れていた美幸を蹴飛ばす。

「痛いじゃんか、兄ちゃん!」

 頭を思いきり蹴飛ばされた美幸が立ち上がり、優に朝の挨拶をする。

「おっはよぉ」

「あ、おはようございます」

 ぺこりと頭を下げる優に美幸が声を出す。

「堅いっ、堅いなぁ。もうちょっと砕けていこうよ」

 そう言う美幸に、兄の突っ込みが入る。

「美幸は砕け過ぎてるんだって、何回言ったら解るんだよ、もう……。おはよう、ボクは美鏡美里、5年2組になったんだ。この馬鹿は美鏡美幸、やっぱり5年2組だよ。今日からここの学校に通う事になったんだ、よろしくね」

 美幸のほっぺたに右パンチをくり出しながら美里は優に挨拶をする。その夫婦漫才に微笑みながら、優も自己紹介をする。

「おはようございます。ボクは泉寺優、4年3組です。これからよろしく」

 名乗りをあげた優に、美里は少し驚く。

「へぇ、君が優君なんだ……」

 その反応に優も驚く。

「知ってるの?」

 美幸が言葉を継ぐ。

「知ってるよぉ。IZUMICの社長の子でしょ、ISSの清水って知ってる?」

 優がこくんと頷く。

「オイラ達ね、清水のおっちゃんの甥っこなんだ。この間両親が事故で死んじゃってさ、おっちゃんとこに引き取られたんだよ。まんざら知らない仲じゃないって事だね。優ちゃん、これからは友達って事でよろしくね!」

 美幸が、右手を差し出す。優は、その右手を握りながら首を何度も上下させる。

(この人たちならきっとボクから離れていかないでくれるよね……)

 優のその瞳からは嬉しさのあまり溢れた涙が一筋流れていった。

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