僕の中のあいつ番外編 一人遊び

 松岡健太はその日生まれて初めて盗みと言う物をした。生来曲がった事が大嫌いで犯罪なんて物は一度もした事はない。

 魔が差した……。そうとしか言えない……。気が付いたらそれを自分の鞄の中に入れてしまっていた。

 話は数時間前に遡る。

「師匠、先輩、今日も稽古につきあってくれてありがとうございます」

「別に構わないよ。それにお兄ちゃんもいい運動になるもん。ね?」

「うん、そうだな。少しづつ感が戻って来てるから助かるのはこっちも同じだな」

 明は額から流れる汗を拭いながら公園のベンチに座り込む。

「しかし健太はどんどん強くなってくるなぁ、今の僕じゃかなりきついよ」

「そんな、俺はまだ師匠には叶わないよ」

 健太は心底から明の言葉を否定する。

「そろそろ戻ってどっかに飯でも食いに行くか? っとその前に風呂入って汗流そう。ベタベタしちゃってかなわない」

「そうだね、ボクも胴着が汗で凄いや」

「んじゃ、風呂入ってから五十番のラーメンでも食べに行くか!」

「やった〜! あそこの味噌ラーメン旨いんだっ!」

「健太、優のサイズで大丈夫かな? 下着は新品だから安心していいよ」

 明が一足先に風呂に入っている健太に向かって言う。

「ありがとう師匠、洗濯して返すね」

「別にいいよ優には少し小さい奴だから。健太なら丁度いいだろ? あげるよ」

「いいの?」

「あぁ、いいよ。風呂からあがったらちょっと着てみな」

「うん」

 健太が風呂からあがるのと入れ代わりに優と明が一緒に風呂に入る。

 脱衣所にきちんと置かれていた下着や服を手に取り、着替え始める。それは健太の体格にあつらえた様にぴったりと納まる。

「師匠、ぴったりだよ。先輩本当に貰っていいの?」

「いいよー、ボクにはもうそれきついもん」

「よかったね」

「うん、スゲー嬉しい。ありがとう」

 お古ではあるが、自分としては嬉しい。健太が脱衣所を出ようとしてふと自分が先程迄着ていた物がそこにないのに気が付く。

「あれ? さっき迄俺が着ていたのが無い」

「あ、それなら洗濯籠の中」

 健太が思わず漏らした一言に、風呂場から優が応える。

「そんな悪いよ、これ位自分ちでやるって」

「別にいいのに。ま、籠の中にあるから持って行きなよ」

 健太は近くの洗濯籠の中にあった自分の下着と服を手早く取り始める。そこで一瞬健太の手が停まる。

(師匠の下着だ……)

 少し汗で湿っているそれを手に取った途端、健太ははとんど反射的に自分の衣服と共にバッグの中に突っ込んでしまっていた。

 それとほぼ同時にがらっと優が風呂場から出てくる。優はバスタオルで身体を拭きながら素っ裸で脱衣所から出てくる。健太は部活後のシャワー室で見なれているから別に平気なのだが。

「あ、ぴったりだね、似合う似合う」

 優は頭を拭きながら健太の格好を見て言う。

「どれ? あぁ本当だ、ぴったりだね」

 続いて風呂から出て来た明が、健太を見て良かったとにっこり笑っている。その二人の反応を見て健太に激しい自己嫌悪が生まれる。

「あの……、師匠……」

「ん、別にそんなに恐縮しなくてもいいよ。どうせ捨てるか、フリマにでも出すしか無いんだからさ」

(そうじゃ無いんだ、師匠)

「そうだよ、どこの誰か判らない人に着られるよりは健太に着てもらった方がいいもん」

 健太はその二人の言葉で謝る切っ掛けを失ってしまった様に感じた。

(どうしよう……)

「何だよ、ずいぶんそわそわしてるな。そんなに腹減ったのか? 待っててくれな、今着替えちゃうからさ」

「あ、あの……」

 健太はその先を続けようとするがどうしてもその先を言い出す事が出来なかった。

「どうしたの? 食べないの?」

 ラーメン屋に行ってからも健太は何度も己のしでかした事を言い出そうとした。しかし、普段あれだけ勘の鋭い二人がいつに無く鈍い事。そして、二人に嫌われたく無いと言う健太自身の想いがそれを言う事を躊躇わせていた。

 結局何も言い出す事が出来ないまま、健太は二人と別れる事になった。

「何か変だったね、健太」

「そうだね、どうしたんだろうね?」

「ただいま」

「お帰り、あら? どうしたの? その服」

 健太の母は行き掛けと違った服を着ている事を見咎める。

「師匠がくれたんだ、優先輩のお古がもういらないからって」

「でもそんな高いもの……。お礼はしたの?」

「したよ。でも、高いの? これ」

 健太は裾を引っ張りながら、確かに良い生地使ってるのかも知れないと思う。

「高いわよ。ブランド物なんだから。あんたの事だからどうせありがとう位しか言って無いでしょ。今度会った時にちゃんとお礼言いなさいよ?」

「うん、わかった」

「洗濯物はちゃんと出しておきなさいね」

「わかったよ」

 そう言って健太は二階にある自室に行く。自室でバッグの中から洗濯物を取り出すと問題の物が床に落ちる。

「どうしよう……」

 こんな事親にばれる訳には行かない。健太は自分のベッドの枕の下に取りあえずそれを隠し他の洗濯物を階下に持って行った。

「健ちゃん、ご飯はどうするの?」

 階下に行った所で母親がキッチンから出て健太に聞く。

「うん、今師匠にラーメン御馳走になったからいいや」

「あんまり迷惑ばかりかけちゃ駄目よ?」

「うん……」

 健太は取りあえず洗濯物を置いて自室に戻る。そして散々駄々を捏ねてようやく付けてもらった部屋の鍵をかけ、ベッドに寝転んだ。

「あーあ、俺なんて事しちゃったんだろう……」

 そう呟くと枕の下から明のトランクスを引っ張り出す。

「明日にでも師匠の家行ってそっと返して来よう」

(師匠の汗の匂いだ……)

 湿ったままのそれから明自身の体臭が漂う。

(俺、変態かなぁ……)

 明の下着を自分の顔に近付け明の匂いを吸い込む。

(師匠の匂い……)

 濃密な明の体臭が健太を包み込む。健太は無意識の内に自分の股間へ手を伸ばす。既に健太のそこは堅くなっていて、新しい下着に薄らと染みを作っていた。

「いけね……。汚しちゃう……」

 健太は身に付けている物を全て脱ぎ、生まれたままの姿になる。そして改めてベッドに横になると吹っ切れたのか、自分が押さえ切れなくなったのか、明の下着を更に顔に密着させる。

「師匠……」

 健太は明の匂いを嗅ぎながら明にキスしてもらった時の事を思い出し、明の下着を口に含む。

(ししょ……ん……)

 明の匂いと味が口内に広がると健太は自分の乳首に手を這わし、ツンと堅くなったそれをクリクリと弄りだす。

(師匠……ダメだよ、そんなところ弄らないでよ)

 健太の中では明が優しく健太を抱き寄せながら健太のピンク色の突起を愛撫している。

 空いた手を猛った股間に導くとそこからは既に透明な液体が溢れ、腹の上に糸を引いている。

(師匠……俺のここ、こんなになっちゃったよ……)

 まだ幼い健太のそこは鈴口の部分だけが露出している、そこからは絶えず透明な物が分泌され、とろとろと下に垂れている。

 それを先端に満遍なく塗り付けながらゆっくりと刺激するだけで、鳥肌が起つような快感を感じる。

(き、気持ちいいっ! こんなに気持ちいいの初めてだ……)

 その原因が明の下着と己のしでかした事への後ろめたさから来ている事にはまだ気がついていない。

(師匠……俺……俺……師匠の事……。師匠……俺……師匠になら……いいよ)

「んっ……」

 健太は乳首を弄っていた方の手を双丘の間に滑り込ませ中指を窄まりにあてがうとゆっくりと挿入させようとする。しかし、指が濡れていない為になかなかうまく挿入する事が出来ない。

 口に含んでいた下着を一旦取りだし、指をしゃぶり始める。自分の指を舐めている筈なのだが健太にはなぜかそれが明の物の様な気がした。

 ぴちゅぴちゅと指を舐めているだけなのに舌を中心に快感が広がる。健太は丹念に唾液を指にまぶすと再び窄まりに指をあてがう。

 ぬっ……

 今度はすんなりと指を受け入れる。

「はぁ……んっ……ししょ……う……」

 健太は横に転がっている明の下着を手に取ると顔に強く押し付け、息を深く吸い込む。

「師匠……明兄ちゃん……」

 にゅっにゅっと健太の指は窄まりに出入りを繰り返し、再び下着を口にくわえ空いた手を自身の猛った物に這わす。

 ふぅふぅと健太の荒い息遣いが部屋に満ちる。

(気持ちいいよぅ……明兄ちゃん……。俺……もう……出ちゃう……)

「んんーっ……」

 窄まりがキュキュっと指を締め付けるのとほぼ同時に健太の先端から勢いよく白濁が迸る。

 脱力した健太は自分の中に入ってる指を引き抜きじっと見つめる。

(師匠のってこんな指より太いよな……)

 視線を部屋の片隅に移すとそこに粘着ローラーが映る。それは柄の部分が組み立て式で分解すれば丁度持ち易い大きさだった。把手の部分も先端が丸く加工してある。健太はそれを手に取りった。

「これなら入るかな……?」

 そう呟いてその先端部分に粘性を失い垂れ始めた自分が放った物を塗り付け窄まりにあてがう。ゆっくりと力を込めていくと、徐々に自分の中に埋没して行くのが判る。それに伴い激しい異物感が生まれる。

「んっ……いた……」

 いかに先ほど迄指で馴らしていたといっても、今迄に挿入した事の無い太さに痛みすら伴う。だが、健太はそのまま奥へとそれを押し込んで行く。

 一番太い部分が過ぎると左程痛みを感じなくなり、健太はゆっくりと把手を動かし始める。指の時とは打って替わり、引き出す時に排泄感がともなう。そのまま動かしていくうちに全く触っていないのに健太自身がムクムクと大きくなって来て、それと同時にそこに痺れるような快感が生まれる。

 それは前立腺が刺激されて生まれる快感だという事は健太はまだ知らない。

「な……に? お尻が痺れて……すご……気持ちいい……」

 さっき放ったばかりだというのに、健太のそこははち切れんばかりに大きくなっいてる。

「ひぁっ……ひっ……」

 先ほど放った為に敏感になっている先端に手を触れた途端電気が流れたかのような快感を感じ、思わず目を見開き、あられもない声を漏らす。

「ひぎっ……くぅ……ん……」

 把手が動いて前立腺を刺激する度に激しい快感が健太を襲う。涎が口の端を伝いベッドに垂れるのも気が付かずに快感を貪る健太。

「あっ……あっ……」

 己が求めるままに激しく自分の猛った物を擦り始めると、更に頭の中が真っ白になっていって何も考えられなくなる。

「あう……ん……そっ……はぁ……」

 既に健太の目は焦点が合わなくなって意味不明の喘ぎ声しか発していない。

「くぅ……ん、い……イくっ……ああぁっっっ!」

 そして健太は先程とは比べ物にならない快感の奔流の中、二度目の絶頂を迎えた。

「はあっ……はあっ……」

 荒い息をつき、ぐったりとする健太。

「俺、やっぱり変態なのかなぁ……」

 ふと冷静になって健太は自分の涎でグチョグチョになっている明の下着に目を移す。

「やっぱり明日師匠に謝ろう」

 その後、明の下着を風呂に入った時に一緒に洗い、乾燥機で乾かすとバッグの中にしまい込む。

 次の日、健太は親から渡された服のお礼を持って明の家に向かう。

「あれ、どうしたんだい?」

「あ、あの……これ母さんが師匠にって。洋服のお礼です」

「そんなのいいのに。まぁ、玄関先じゃ何だからあがりなよ」

 明に促され、健太は部屋の中に入る。

「あの……先輩は……」

「ん? 優なら美幸と買い物に行ってるよ」

 明がジュースをついで戻って来た。その明の人の良い顔を見ているうちに健太は自分が情けなくなって、涙が溢れてくる。

「どうしたんだよ。急に泣き出して……何かあったのか?」

 明は狼狽えている。

「違……うんだ……俺、師匠に謝らないといけないんだ……」

 なんとかそれを言い出すと、バッグの中から明の下着を取り出し、明の方へ押し出す。

「あ、これ……健太の下着とかと一緒になってたんだ。わざわざ洗濯してくれたの? ありがとう」

「違……俺……知ってて持っていったんだ……」

「は?」

「師匠が履いていたのだって思ったらバッグの中に突っ込んでいたんだ。俺……変態なんだ……」

 そこ迄言った健太は完全に泣き出してしまった。

「あ、あぁ……健太……泣くなよ……」

 明は困ったなぁと言う顔をして、えぐえぐと泣いている健太の頭を撫でる。

「まあ、何の為かは聞かないけどさ……自分で反省して正直に謝りに来たんだろ? ならいいよ、僕は何も言わないから。泣くなよ男なんだろ?」

「だって……だって……」

 明は健太が泣き止む迄何も言わずに頭を撫で続けていた。

「落ち着いたかい?」

「うん……本当にごめんなさい」

「いいって、僕にもそんな思い出がない訳じゃないからね。それより顔洗っておいで、そんな顔優に見られたら僕がいじめたって怒られる」

「師匠は悪くない。俺が説明するよ」

「そんなのわざわざ言う事無いって。早く顔洗ってこい」

「うん」

 洗面所で泣き腫らして真っ赤になっている目を見ながら健太は明への想いを確たる物にするのだった。

inserted by FC2 system