僕の中のあいつ番外編 二人の気持ち

「破っ!」

 その気合いと共に分厚い杉の板が二つにはぜ割れる。その途端、おーっと言う声と、キャーッと言う黄色い声があがる。

 ここは、美里達が通っている学校の合気道部の道場である。今日は、ここの顧問に呼ばれたデモンストレーションの為に珍しく美里は胴着をきていた。

「よーし、御苦労。相変わらず凄いな、美鏡。どうだ? ここの部に来てはくれんか?」

「折角ですが……。私にお勤めがあるのは判ってらっしゃいますでしょう?」

「むぅ、それは判っているんだが……何とか名前だけでも入ってくれんかな?」

「それをしたら、他の部の方が怒りますよ、先生」

「そりゃそうなんだが……」

「呼ばれれば私はいつでも来ますから、それじゃいけませんか?」

 なおも食い下がろうとする、いかつい顔をした顧問に美里はにっこりと笑いかけ道場を後にする。その後を美里の追っかけとも言える様な女生徒の一団が後をついて行く。

「兄ちゃん、お疲れ」

 前方から、厚手のタオルを弟の美幸が投げてよこした。それを器用に受け止めて、額に少し光る汗を拭う。ちなみに彼の後ろにも大勢の女生徒がくっ付いて来ている。美鏡兄弟はマスクがいい上にスポーツ万能なだけに、お互いにファンクラブなる物が出来ているらしい。作者としては非常に羨ましい事である。

「ありがと、美幸。そっちも終わったのかい?」

「うん、参っちゃったよ。いつもの事だけど、うちの部に入ってくれって、うるさくってさぁ。やっぱり主将は投げ飛ばすもんじゃないね」

 そう言って、彼はケタケタと笑う。

「美幸〜、そんな事したのか?」

「だってさぁ、坪井センセがやっていいって言うんだもん。オイラはやれって言われりゃ、やっちゃうよ」

 彼は、さっき迄柔道部の顧問に呼ばれて美里と同じ様な事をしていたのだ。

「あんまり目立つなよ。ただでさえ、皆に恨まれる様な事になってるんだから……」

 そう言って、周りに視線を向ける。二人の取り巻きは優に50人を超えている。その目線にいた子達は全員うっとりした様な目つきをしている。しかし、抜け駆けをしてくる様な子はいない、どうやら協定が出来ているらしく、抜け駆けしよう物なら、周りの子達から村八分にされるらしい。

 これは男子生徒達に恨まれても仕方ないかも知れない。しかし美里が心配している様な事にはなっていないのが現状だ。彼らも馬鹿ではない、お礼参りなんかしても返り打ちに合うだけだし、第一女子生徒の報復が恐い。 それに、彼らのキャラクターがそれを打ち消していた。美里はその礼儀正しさと頭脳で、美幸はそのノリのよさで、皆に一目を置かれていたのだから。

「兄ちゃん、軽くシャワーでも浴びて帰ろうよ。これじゃ臭くってさ〜」

 美幸は、胴着に鼻を近付けてクンクンと臭いを嗅ぎうえっと顔をしかめる。

「いいよ、そうしよう」

「じゃ、シャワー室の鍵借りてくるね。皆、今日はこれでバイバイだよっ! またねっ」

 エーッとブーイングの声があがる。

「皆さんすいません。わたしたちもこれからやらないきゃならない事がある物ですから、学校には来ているんですからいつでも会えますよ、それでは失礼します」

 美里がペコリと頭を下げ、美幸の後をおっかける。

「センセー、シャワー室の鍵かしてー!」

 美幸は職員室に入りざま、近くに居た担任に言う。後から入って来た美里は、その無礼な態度に彼の頭を小突いてその行為をたしなめる。

「美幸、先生に対してその言葉遣いはないだろっ」

「痛いな、兄ちゃん」

 彼は頭を押さえてしゃがみ込んでしまう、結構痛かったらしい。そのやりとりを見ていた担任がいつもの事の様に笑っている。

「ハハハ、相変わらずお前達のやりとりは漫才みたいだな。シャワー室の鍵だな、ちょっと待ってろよ」

 そう言って、まだ若い担任はキーボックスから鍵を持って来た。

「ほら、使ったらちゃんと鍵を締めて来いよ」

「はーい。行こう、兄ちゃん」

 そういうが早いか、彼はさっさと職員室をでていってしまう。後に残された美里は担任に頭を下げる。

「すいません、失礼いたします」

「大変だな、美里も」

「はぁ、本当ですよ……」

 彼は苦笑して、職員室を後にする。

 シャワー室では既に美幸が胴着を脱ぎ捨てて、シャワーを浴びているらしい水音が聞こえる。入り口の鍵を閉めた美里は溜息をつき、そこら中に脱ぎ散らかしている胴着を手早くまとめる。そして、自身も胴着を脱ぎ、中に入る。二人で入ると少し狭い位だ。

「美幸、もうちょっときちんと出来ないのか?」

「えー? なーに?」

 頭を洗っている美幸には美里がなんて言っているのかが解らないらしい。

「いいよ、もう……」

 美里も頭を洗い始める。彼の髪は長いので結構時間がかかるのだ、先に頭を洗い終わった美幸はボディーソープをつけて身体を洗い始めている。その横で、美里が髪をすすいでいる、美幸は悪戯心を刺激されたようで、シャンプーのボトルを持ってにやついている。

 美里がシャンプーを流し始めるが、なかなか泡が取れない。いくら洗っても落ちないのだ。当然である、美里がすすいでいる側から美幸がシャンプーを補充しているのだから……。美里がそれに気付くのは暫く後の事だった。結構天然な子である。

「美幸っ! 何やってるんだよっ! やめろよっ!」

「へへー、やっと気がついたんだー鈍いなー兄ちゃん」

 美里が、彼の事を叩こうとしたその途端。

 つるん!

「ひゃっ!」

 タイル張りの床に溜っていたシャンプーの泡に脚を取られてまともにバランスを崩す。

「わわっ!」

 美里は咄嗟に何かに捕まろうとして、美幸の腕を引っぱった。しかし美幸もそれを予測していた訳ではなかったので、一緒にバランスを崩して、倒れてしまう。

 むぎゅっ……

「痛たたた……」

 お尻を強打してしまった美里は目の前に広がっている光景を見て思わず脚を閉じてしまった。ちょうど、美幸が股間に顔を埋める様な感じでこけていたのだ。

 しかし、脚で蹴飛ばすならともかく、挟み込んでしまっては、いかに美幸と言えども容易に顔を抜く事が出来ない。美里の股間でモガモガともがいているのが関の山だ。

「兄ちゃん、離してったら……離せってば」

 美幸が、苦し紛れに美里の太股をピタピタと叩いている。

「あ、ご……ごめん!」

 あわてて脚を広げる美里。美幸は頭を振りながら文句をいう。

「もぉ……いきなりはさむなよなぁ……それにおっきくしちゃってさぁ、どうすんだよ、もう……」

「だって……それは美幸が変なふうに動くのがいけないんだよ……」

 美里の股間は美幸の息遣いや動きに刺激されて元気になっていた。美幸の責めるような口調に、美里は少し涙ぐんでしまっている。

「はいはい、おいらが悪いんだよ……もうしょうがないなぁ、兄ちゃんてば……どぉ? すぐに小さくなりそう?」

「そんなのわかんないよ! すぐに小さくできんのかよ美幸は!」

「……いや、やろうと思えば出来るけど……」

「……出来るの?」

「出しちゃえばいいんだよ……」

 そう言って美幸は、右手に何かを握るような形を作り、上下に動かす。その仕種を見た美里は顔を真っ赤にしてしまう。

「こ……ここで?」

「そりゃここしかないでしょ。それとも教室でする? 兄ちゃん」

 ブンブンと、思いっきり首を振り否定をする美里。

「何か恥ずかしいよ。美幸、あっちに行っててよ」

「えー、あっち行くの? 別にいいじゃん、兄弟なんだしさ。それにこの間もっと恥ずかしいことしてるんだから、そんな恥ずかしがること無いってば」

 美幸の言う、この間とは優達と3人で酒を飲んでしまい、そのまま明も巻き込んでの乱れっぱなしの一夜の事だ。

「でも……そんなこと言ったって、恥ずかしい物は恥ずかしいってば」

「じゃぁ、おいら外で待ってるから一人でやってなよ」

 そう言って、美幸はとっとと出ていってしまう。後に残された美里は仕方無しに自分の物をしごき始める。だが、あまりそう言う経験がない物だから少しぎこちない。しかし、段々と息遣いが荒くなってはきている。

 ふっ……う……ん

 美里は自分の物をしごきながら、無意識のうちに空いている手を自分の窄まりにあてがい指をそろそろと自分の中に埋めていく。そして、美里の喘ぎ声は一層高まっていく。

「はぁ……ん……明さん……そこ……もっと……んっ……あぁっ……」

 どうやら美里は想像上で、明に抱かれているらしい。至福の表情を浮かべ、自分の物を強く握りしめている美里の声はどんどんと大きくなっていく。そこに、美幸が呆れた顔をして入ってくる。

「兄ちゃん、もっと静かにやってよ、外に聞こえちゃうだろ?」

 そう言って止まっていたシャワーを出し、水音で美里の喘ぎ声を消し去る。

 温かいお湯が美里の頬を打ち始めるが、自分の世界に浸ってしまっている彼はまったく気になっていない様だ。少し冷えてきていた空間に湯気が再び立ち篭め始める。

 靄がかかった視界に、美里は何を見たのか、いきなり美幸の事を抱き締め彼の局部を愛おしそうに口に含む。

「明さん……明さん……」

 美里は壊れたレコードの様に明の名を呼び続けている。戸惑っているのは美幸だ、いきなり兄に大事な所を口に含まれてしまったのだから。しかも、自分ではない名前を呼ばれながら……。

「ちょっと! 兄ちゃん! 兄ちゃんてば! なに自分の世界に浸っちゃってるんだよ!」

 美幸は一旦美里を引き離すとピタピタと美里の頬を軽く叩く。そこでようやく美里の瞳から正常な光が戻ってきた。

「……なんだ、美幸か……あれ? 明さんはどこ行ったの?」

「なに言ってるんだよ、もう……明兄ぃなんか最初から居ないよ! 兄ちゃんが見たのはオイラ! 大丈夫?」

 美幸のその言葉を聞いて美里は目に見えてがっくりと肩を落とす。

「そっか……そうだよね、明さんがこんな所に来る筈が無いよね……そうだよね……ゴメン、美幸」

 その、余りの落ち込み様に美幸は少し兄の事が可哀想になってしまう。美幸はへたっと座り込んでいる兄の隣に寄り添う様に座り込む。

「なぁ……兄ちゃん……そんなに明兄ぃの事が好きなの?」

 力無く頷く美里。

「でもさぁ、明兄ぃが好きなのは優ちゃんなんだよ」

 優の言葉に過敏に反応する美里。

「そんなの解ってる! 解っているけど……どうしようもないんだ。明さんの事思うだけで、仕事も勉強も全然手につかないんだよ……」

 美里はその場で膝を抱え込み嗚咽をあげる。

 2年前に両親を事故で亡くして以来、二人は叔父であり、上司である清水家に引き取られ暮らして来た。しかし、やはり肉親と言うものはこの兄しか居ない。それが二人の絆を一層堅固な物にしていたのだ。その兄が苦悩している姿を美幸は見たくなかった。

 双児の弟として兄のその気持ちが痛い程よく解る。そして、美幸には今迄全くと言っていい程弱い所を見せる事の無かった兄に対して、初めて愛しいと言う感情が生まれて来ていた。

 美幸はそっと兄の肩を抱き寄せる。美里は涙かシャワーのお湯か解らないずぶ濡れの顔を美幸に向ける。

「兄ちゃん……」

 温かいシャワーが相変わらず二人の事を包み込むように降り注いでいる。しかしそれを全く気にする事無く美幸は美里の唇を奪っていた。

「オイラじゃ……オイラじゃ明兄ぃの代わりにはならないかもしれないけれど……でも、兄ちゃんが寂しい時はオイラがいるよ、絶対に。たった二人の……たった二人だけの兄弟だもん」

 そして、美里も手はかかるがたった一人の大切な肉親に頼もしさを感じた。

「……ありがとう、美幸」

 二人は、互いを見つめあうと、どちらともなく自然に唇を合わせていく。

 その口付けは徐々にハードな物になっていく。お互いは世間の禁忌など遥か彼方に追いやり夢中になって舌を絡めている。そして充分に大きくなっているその部分を互いに刺激しあう。

「んっ、兄ちゃん……そこ感じるっ」

「あぁ……美幸ぃ……ダメ……そんなにしちゃ……あ……」

 美里は自分の窄まりに指を埋めている。それを見た美幸は半ば強引に兄の指を引き抜き替りに自分の指を埋め兄の窄まりを愛撫する。しかし、狭いシャワー室なので思うように兄を愛してやる事が出来ない。

「兄ちゃん、そこに立ってさ壁に手を突いてよ」

「うん」

 美里は弟の言う通りに壁に手を突きしゃがんだままの美幸の顔の前に自分のお尻が来る様に位置を調整する。

「ひゃあっ、美幸……そんな……」

 美幸は兄の臀部を手で広げると、そこに自分の舌を這わせていた。

「兄ちゃんのここ、石鹸のいい匂いがする。それに凄く綺麗」

 美幸は片手で美里の物を刺激しながら舌を尖らせ、窄まりに挿入する。

 その初めての感覚に美里は思わず声をあげる。

「あっ……あっ……ヌルヌルした熱いのが、入って来た……。やぁっ……そんな……出し入れしないでよ……」

 美幸は一旦舌を引き抜くと美里の身体を後ろから抱き締め耳許に舌を這わしながら囁く。

「兄ちゃん、女の子みたい……。兄ちゃんの中に入れてもいい? オイラもう我慢出来ないよ」

 そう言いながら、美幸はいきり立った自分自身を美里の秘所に擦り付けている。

 美里は返事の代わりに両手を後ろに廻し、白桃の様な尻たぶを割り開く。露になった窄まりに美幸は手近にあったボディーソープをローション替わりに塗り付け、そこにすっかり堅くなっている自身の先端をそっとあてがう。

「兄ちゃん……入れるよ……」

「……うん、いいよ。来て……美幸」

 クッ……

 ゆっくりと先端を捩じ込んでいく美幸。美里のそこは最初かなりの抵抗をしたが徐々に……徐々に、美幸の物をゆっくりと飲み込んでいく。

 はぁっ……はぁっ……

 まだ経験が極端に少ない美里は体内に入って来た異物感に荒い息をついている。

「兄ちゃん……兄ちゃんの中、熱くって、きつくって……ヌルヌルしてて……凄くいい」

「はぁっ……美幸のも……熱くって……堅くって……んっ……」

 一体となった二人はお互いの手を絡め、肌と肌を密着させる。

 降り注ぐシャワーの音の他にピタッピチャッと明らかに違う音が混ざりあう。

「兄ちゃん……兄ちゃん」

 美幸は腰を動かしながら美里のうなじに舌を這わせる。

「あぁっ……美幸ぃ……」

 美里は美幸の手をとって、自分の大きくなっている部分に導く。そして二人の手で美里のモノをしごきだした。

 暫くの間、二人の喘ぎ声がシャワー室にこだまする。そして二人の顔が段々と上気して絶頂が近くなる。

「兄ちゃん……オイラ……も……出ちゃうよ」

「まって……僕も出そう……イクなら一緒にイこうよ……。美幸……キスして……」

 二人は少し身体を動かし、お互いの唇を貪りあう。そして、ほぼ……ほぼ同時に二人は絶頂を迎え……果てたのだった。

 美里のまだ閉じきっていない窄まりから美幸が放った白濁がつつーっと滴り落ちる。

 二人が抱き合いながらその余韻に浸っていると、ドンドンドンと更衣室のドアが叩かれる。

『美鏡ーどうしたんだー? 何かあったのかー?』

 どうやらかなりの時間が経っていたらしい。先生があまりに遅い二人を心配して様子を見に来たらしい。二人はここが学校である事を思い出し、慌てる。パニックしている美幸を尻目に落ち着きを取り戻したのは、やはり美里だった。

「先生すいません。少しふざけ過ぎてしまいました。すぐに出ますから心配しなくても大丈夫です。ごめんなさい」

『そうか、ならいいんだ。先生心配したぞ、早くあがってカギ持って来いよ。先生も、もう帰るからな』

「はーい、すぐあがりまーす」

 やっといつもの調子を取り戻した美幸が良い子ぶって応える。

 二人は軽く身体を洗い流し、用意していた学生服に着替えると汗臭い胴着を抱えて職員室にカギを返す。

 そして、既に人気の無くなった学校を二人歩いてゆく。

「なぁ、兄ちゃん……」

「ん? 何?」

 美幸は黙って美里の手を握る。たったそれだけで、この仲の良い兄弟は伝えたい事が解った。美里は、美幸の腕に寄り添い、自分の腕を絡める。

「うん、もう、何も言わないでいいよ。ありがとう美幸」

「そうだね、さ、家に帰ろ。優ちゃんと明兄ぃが御飯作ってると思うから襲いに行こっ」

 二人は守るべき、そして愛する人のいる部屋目指して走っていった。

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